性別 | 牡 | 毛色 | 鹿毛 |
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生年月日 | 2019年5月7日 | 所属 | 栗東・友道康夫厩舎 |
父 | ハーツクライ | 母 | ダストアンドダイヤモンズ(母父:ヴィンディケイション) |
戦績 | 16戦8勝 (8・1・1・6) |
生産者 | 北海道安平 ノーザンファーム |
馬主 | キーファーズ | 騎手 | 武豊,戸崎圭太 |
おもな 勝ち鞍 |
朝日杯FS(2021),日本ダービー(2022),有馬記念(2023),天皇賞(秋)(2024), ジャパンC(2024),京都記念(2022) |
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強い馬と同じ年に生まれると、生まれた年が悪かったと言われることがある。古くはテイエムオペラオーに対するメイショウドトウやオルフェーヴルに対するウインバリアシオン。最近ではコントレイルに対するサリオスなどもあてはまるかもしれない。
多くは引き立て役になってしまうのだが、稀に一矢報いる馬もいる。ドウデュースは日本ダービーでイクイノックスを破っているので、決して引き立て役ではないが、4歳までは苦汁を飲まされることが多かった。しかしイクイノックスが引退した5歳時には、現役最強馬に上り詰めたのである。
2歳(2021年)
ドウデュースのデビュー戦は、2021年9月5日 小倉芝1800m新馬戦。武豊騎手鞍上で凱旋門賞を勝つのが夢と公言する松島正昭氏が代表を務めるキーファーズの持ち馬ということもあり、武豊騎手が乗って1.7倍の1番人気に支持された。父ハーツクライ、母はシアトルスルー系ということで、距離も合うと判断されたのだろう。のちにセントライト記念を勝って菊花賞では1番人気となったガイアフォースや、ラジオNIKKEI賞を勝つフェーングロッテンも出走したレベルの高い新馬戦だったが、中団から早めに進出したドウデュースは、ガイアフォースとの競り合いをクビ差で制して勝利する。
2戦目は東京芝1800mOPのアイビーS。のちに菊花賞馬となるアスクビクターモアに続く3.8倍の2番人気となるが、先行してまたもクビ差で1着。あっさりと連勝を決めた。
芝1800mで連勝したことから、クラシックを目指して次走はホープフルSを目指すと思っていたのだが、陣営が選択したのはマイル戦の朝日杯FSだった。友道調教師いわく、広いコースの方が合いそうだし、そつなくセンスが良くて、長くいい脚が使えるので選んだとのことだったが、武豊騎手が朝日杯FSを勝っていないということもあったのかもしれない。
それまで朝日杯FSには21回騎乗していたが、2着が5回ありながらも未勝利。いつしか朝日杯FSのレース前インタビューでは、不安は鞍上だけですという自虐的なコメントが武豊騎手から出るのが恒例になっていた。
距離に加えて重賞未経験もあったのか、ドウデュースはやや離れた3番人気という評価だった。しかし中団外目を追走すると、直線に入って外から差を詰め、最後は先に抜け出した1番人気のセリフォスをかわして1/2馬身差で1着。武豊騎手は22回目の騎乗でようやく朝日杯FSを制し、平地G1完全制覇にはホープフルSを残すだけとなった。
そしてこの勝利により、ドウデュースはJRA賞の最優秀2歳牡馬の栄冠を手にする。
3歳(2022年)
3歳初戦はG2 弥生賞ディープインパクト記念。初の芝2000mだが血統的に距離不安もなく、2.2倍の抜けた1番人気に支持される。ところがスローペースをうまく先行したアスクビクターモアをクビ差捉えられず、2着と初の敗戦を喫してしまう。武豊騎手も悔しそうではあったが、トライアルとしてはいい内容だったと前を向いていた。
そしてクラシック初戦の皐月賞に出走する。イクイノックス、ダノンベルーガ、キラーアビリティなど有力馬の多くがトライアルを使わなかったこともあり、唯一トライアルを使ったドウデュースがその安定感も買われて3.9倍の1番人気となった。
スタートは5分に出たドウデュースだが、武豊騎手は後方に下げて15番手で1コーナーを回っていく。その後も後方をキープし、3コーナーから進出するも4コーナーは大きく外を回らされてしまう。
最後は外から1番の上りで追いこんできたが、脚を余した形で2 1/4馬身差3着に終わった。
ドウデュース 2022年4月17日 皐月賞出走時 中山競馬場
東京実績があり、皐月賞では1番の上りで3着まで追いこんだことやハーツクライ産駒ということから、直線の長い東京で行われるダービーではドウデュースは当然有力となる。しかし気になったのは朝日杯FSの勝ち馬ということだった。朝日杯FSを勝ってダービー馬になったのは、1994年のナリタブライアンまでさかのぼる。その後は距離体系が整ってきたこともあり、クラシックを狙う馬はラジオたんぱ杯(現在のホープフルS)を使うことが圧倒的に多くなる。そのため朝日杯FS勝ち馬は、皐月賞を勝つ馬はいたが、ダービーには縁がなかった。
そのあたりも影響したのか、ドウデュースは4.2倍の3番人気となった。
個人的にも共同通信杯の末脚が忘れられずダノンベルーガを本命にしたのだが、パドックで見たドウデュースは、落ち着いていながら適度な気合乗りで、その気配と出来の良さに、やはりこっちだったかと思ったのだった。
ドウデュース 2022年5月29日 日本ダービー出走時 東京競馬場
イクイノックスとは生涯4度対戦して1勝3敗だったが、唯一勝ったのがダービーのビッグタイトルで、運の良い馬が勝つを地でいった形となった。
ドウデュース 2022年5月29日 日本ダービー出走時 東京競馬場
前哨戦として凱旋門賞と同じロンシャン競馬場芝2400mで行われるニエル賞に出走。最後方から進めて、直線ではいったん先頭に立つ勢いだったが、ゴール前で失速して4着に終わる。
そして本番の凱旋門賞。この年は日本からドウデュースのほかに、タイトルホルダー、ディープボンド、ステイフーリッシュと4頭が出走。個人的にはスタミナ豊富なタイトルホルダーがもっともチャンスがあるのではと感じており、ドウデュースは後方から鋭い末脚を活かすタイプで、ヨーロッパの重馬場では良さが生かせないのではと危惧していた。
当日レース前に土砂降りの雨となったことで、馬場はさらに悪化。果敢に逃げたタイトルホルダーも直線に入ると失速。ドウデュースは終始後方で、直線に入ると大きく後方に置いていかれて、結局20頭立ての19着に終わった。
4歳(2023年)
4歳初戦は、阪神競馬場で行われた京都記念。前年の凱旋門賞で大敗して以来のレースということで状態面が心配されたが、2.5倍の1番人気に支持される。ちなみに2番人気は2年前の年度代表馬ながら前年は不振に苦しんだ1歳上のエフフォーリア(3.3倍)だった。
いつものように後方から進めたドウデュースは、3コーナーからポジションを上げて行くと、直線は中団外から一気に抜け出して3 1/2馬身差で快勝。上りも最速で、強いドウデュースが戻ってきたことを印象付ける勝ち方だった。
ちなみにエフフォーリアは心房細動により競争中止。これがラストランとなり、明暗が分かれる結果となった。
次走は海外G1制覇を目指してドバイターフ出走のためにドバイまで渡航したものの、レース前日の調教後に跛行で取り消しとなってしまう。一難去ってまた一難という感じで、なかなか波に乗り切れないもどかしさを感じさせた。
秋初戦は天皇賞(秋)。東京競馬場は2戦2勝と得意な舞台であり、休み明けも京都記念快勝の実績があって、さらに調教の様子も抜群だったことから、イクイノックス(1.3倍)に次ぐ2番人気(4.3倍)に推され、2強対決の様相を呈することになった。
ただしドウデュースは日本ダービーでイクイノックスを下しているとはいえ、イクイノックスは前年の天皇賞(秋)からG1を4連勝中。それに対してドウデュースはG2を1勝したのみで実質8か月半の休み明け。順調さの違いがオッズに現れたのだろう。
さらに当日の5レース終了後に武豊騎手が騎乗馬に蹴られるというアクシデントがあり、急遽戸崎騎手に乗り替わりになるという不運も続いた。
レースでは初騎乗も影響したのか、ドウデュースはいつもより前目の4,5番手でイクイノックスをマークするように進む。直線に入ると前を行くイクイノックスを捉えようとするが、逆に突き放されて差を広げられていく。結局1.4秒離される7着と惨敗。国内では初となる着外に敗れてしまった。
ドウデュース 2023年10月29日 天皇賞(秋)出走時 東京競馬場
レースでは人気のイクイノックス、リバティアイランドを見る6,7番手の内を追走。直線は外に出して必死に前を追うも、イクイノックスには大きく差をつけられ、さらに前にいたリバティアイランドとスターズオンアースも捉えられず4着に終わった。
しかし天皇賞(秋)よりは見せ場を作ったので、次走への期待は膨らんだ。
ドウデュース 2023年11月26日 ジャパンC出走時 東京競馬場
ようやく武豊騎手とのコンビも復活し、その期待もあったのだろう。2戦連続着外にもかかわらず、有馬記念でドウデュースは5.2倍の2番人気に支持された。パドックでは落ち着いてクビを使って素軽い歩様で良く見せたが、最終追いきりでは並走馬に遅れてぱっとしなかったこともあり、個人的には中心にすることはできなかった。
ドウデュース 2023年12月24日 有馬記念出走時 中山競馬場
タイトルホルダーが逃げ、大外が懸念されたスターズオンアースが2番手につける展開の中、ドウデュースは1周目の直線で後方から3,4番手につけると、2周目3コーナーすぎから外を通って馬なりで一気にポジションをあげていく。そして4コーナーを3番手で回ると、直線は内のスターズオンアースと並んで前のタイトルホルダーを追う。
残り50m手前で2頭でタイトルホルダーをかわすと、ドウデュースがクビ差前に出たまま馬体を合わせてゴールを目指す。しかしその差は最後まで変わらず、ドウデュースが1/2馬身差の1着でゴールインした。
G1は朝日杯FS、日本ダービーに続く3勝目だが、古馬となって初めてのG1勝ちとなり、2歳から4歳まで毎年G1を勝つという快挙を達成。インタビューで武豊騎手は開口一番「ドウデュースも私も帰ってきました」と話して大歓声を受けていたが、劇的な復活劇となり、さすが絵になるコンビだと思わせた。
ドウデュース 2023年12月24日 有馬記念出走時 中山競馬場
有馬記念表彰式 2023年12月24日 中山競馬場
5歳(2024年)
5歳になっても現役を続けたドウデュースは、前年の雪辱をかけて、ドバイターフに再チャレンジする。海外のブックメーカーでも1番人気になるなど、実績的に有力視された。しかしスタートでやや出遅れると、終始内ラチ沿いの中団後方を追走。直線も内から伸びようとするが、前が空かずにスピードに乗れない。結局2 1/4馬身差5着に終わった。
帰国初戦は宝塚記念に出走。阪神競馬場が改装のため京都で行われたが、意外にも初めての京都競馬場でのレースだった。前年は凱旋門賞からの帰国初戦を快勝したように休み明けの不安はなく、2.3倍の1番人気となった。調教もパドックも良く、個人的にも期待して見守った。
いつものように後方から進めたドウデュースは、4コーナーで大きく空いた内を突くが、重馬場ということもあり伸びない。最後は外の馬たちの競り合いとなり、ドウデュースは大きく失速。勝ったブローザホーンから0.9秒差の6着に終わった。
その後松島オーナーから、秋は海外遠征を行わずに国内に専念し、天皇賞(秋)から順調ならジャパンC、有馬記念と使って、年内で引退という発表があった。
秋初戦の天皇賞(秋)は、前年7着と大敗したリベンジの1戦となったが、前半戦でいずれも着外に敗れていることもあり、前年の3冠牝馬でその年のドバイシーマクラシックでも3着と好走したリバティアイランドに次ぐ2番人気という評価だった。
個人的にも同じ見解だったが、パドックで見たドウデュースの状態が、落ち着いていながら覇気が感じられ、クビを使ってきびきびと歩きとても素晴らしかったので、勝つのはこちらではという考えもよぎった。
ドウデュース 2024年10月27日 天皇賞(秋)出走時 東京競馬場
残り400mで逃げたホウオウビスケッツが後続を突き放して差を広げていき、前を追っていたリバティアイランドは残り200m手前で失速。ホウオウビスケッツが逃げきったかと思われたが、残り200mを切って大外から猛然と追いこんできたのがドウデュース。内のタスティエーラと併せ馬になって伸びると、残り50mでホウオウビスケッツを捉えて一気に抜き去り、タスティエーラを従えて先頭でゴール。
前年の無念を晴らして、見事にG1 4勝目を鮮やかに勝ちとった。上りはただ1頭33秒を切る32.5。逃げたホウオウビスケッツが3着に粘る決して速くない流れの中、ほぼ最後方から追いこんで差し切るという派手な勝ち方は、力がないとできない芸当であり、あらためてその力を示した。
次走は予定通りジャパンCに駒を進める。
この年のジャパンCは、前年に愛・英両ダービーを制覇し、さらにチャンピオンS、BCターフと世界的なG1を制したアイルランドのオーギュストロダンを筆頭に、キングジョージ6世&クイーンエリザベスSを勝ったフランスのゴリアット、バーデン大賞を勝ったドイツのファンタスティックムーンと海外のビッグネームが参戦。それを迎え撃つ国内の大将格がドウデュースだった。
その1週前追い切りの動きは素晴らしく、毛ヅヤも良くて体調の良さがうかがえたが、登録メンバーを見ると逃げ馬不在で先行馬も少なく、ペースが落ち着くことが考えられた。前走の天皇賞(秋)はスローにもかかわらず後方から差し切ったが、再度同じパフォーマンスを見せられるかという心配はあった。
武豊騎手もインタビューで、後方から行く馬なので、早めに対応していく必要があるということを話していた。
個人的にはどうしてもそのあたりの懸念がぬぐえず、力があることは認めつつ、かつベテラン武豊騎手の対応力もわかっていながら、事前の予想では本命にはしなかった。
ところがパドックでその姿を見て、考えを変えざるを得なかった。ドウデュースは天皇賞(秋)もすばらしい状態だと思ったが、ジャパンCではさらに上向いているように見えた。クビを使ってリズミカルに歩き、毛ヅヤはぴかぴかで、トモの運びはなめらかで踏み込みも深く、まさに理想的なサラブレッドの姿という感じだった。
同様に感じた人も多かったのか、天皇賞(秋)を上回る2.3倍の1番人気となった。
ドウデュース 2024年11月24日 ジャパンC出走時 東京競馬場
レース後のインタビューで武騎手は、促したら一気に行ってしまったと言っていたが、馬が走りたがっていたということなのだろう。
そのまま追い出すとぐんぐん加速し、残り400mでは3番手の外。そこから先に抜け出した内のドゥレッツァと、内外離れての追い比べになる。残り200mでドゥレッツァを捉えて先頭に立つも、ドゥレッツァも譲らず、さらに内からシンエンペラーも迫ってくる。
しかし競り合いを制したドウデュースがクビ差で1着。2着はシンエンペラーとドゥレッツァの同着となった。
早めに前を捉えに行ったので、並の馬なら最後は失速しただろうと武騎手も言っていたが、そこは馬の力と状態の良さが合わさって、勝ちにつながったのだろう。
ドウデュース 2024年11月24日 ジャパンC出走時 東京競馬場
近年は挑む馬さえ少なくなっており、アーモンドアイ(2020年)も、イクイノックス(2023年)も2冠を勝ったにもかかわらず、有馬記念は出走せずに引退している。中山の適性もあるが、それだけ負担が重いということなのだろう。そういう意味では、挑戦するだけでもすごいことだと言える。
さらに勝てばG1 6勝となりイクイノックスに並ぶだけでなく、秋古馬三冠を達成できれば、ある意味イクイノックスを超える快挙ともいえる。前年勝っているうえに、ここまでの充実ぶりを見れば、その可能性はかなり高いと思われた。
有馬記念のファン投票で史上最高の478,415票を獲得して、最終追い切りの動きも相変わらずすばらしく、圧倒的な1番人気に支持されることが予想された。
ところがその期待は、あっけなくついえることになる。レース2日前の12月20日に、右前脚跛行により出走取消が発表されたのだ。そのニュースは大いなる落胆を競馬ファンにもたらした。指定席のキャンセルが相次いだことがニュースになったが、逆に混戦になったことで売上は前年を5億円上回り、21世紀最高額となったのは皮肉だった。
有馬記念のレース後に中山競馬場で予定されていた引退式もキャンセルとなり、12月25日に栗東トレーニングセンターの友道厩舎を退厩。ノーザンファーム天栄を経由して、種牡馬生活を送る社台スタリオンステーションに向かった。
年が明けて発表されたJRA賞で、ドウデュースは年度代表馬および最優秀4歳以上牡馬を受賞した。G1 2勝は3歳牝馬のチェルヴィニアと並んで1位タイだったが、古馬中長距離G1を2勝。特に国内外の有力馬を相手に勝ちきったジャパンCの走りと、有馬記念のファン投票で過去最高得票を得たことも評価されたのだろう。
競走馬としての総括および種牡馬として
ドウデュースは2歳の朝日杯FSから3歳の日本ダービー、4歳の有馬記念と毎年G1を勝ってはいたが、3,4歳時は連勝がなく、逆に着外になることも多く、安定感がないという印象が強かった。勝つときは強いが負けるときはあっけなく、大敗することも多かったので、生涯連対を外さなかったイクイノックスとは対照的だった。しかし5歳秋の強さと安定感は特筆すべきものだった。スローな展開でも後方を追走し、直線は素晴らしい脚で差し切るレースぶりは強さが際立っており、G1連勝はまさに本格化した証と言えるだろう。それだけに最後の有馬記念に出走できなかったのは、とても残念だった。
ドウデュースはハーツクライの後継として2025年から社台スタリオンステーションで種牡馬入り。初年度の種付け料は1000万円と、初年度としてはイクイノックス、ディープインパクト、コントレイルに次ぐ4位だが、同じ社台SSで繋養されているイクイノックス、キズナ、キタサンブラック(2000万円)やコントレイル(1800万円)、スワーヴリチャード(1500万円)に比べると、比較的リーズナブルな価格設定となった。それもあってか、すぐに満口になったという。
初年度産駒は2028年にデビューする予定。種牡馬の世界も群雄割拠で厳しい競争が予想されるが、ぜひ父を上回るような活躍馬が出ることを期待したい。