スワーヴリチャード

性別 毛色 栗毛
生年月日 2014年3月10日 所属 栗東・庄野靖志厩舎
ハーツクライ ピラミマ (母父:アンブライドルズソング)
戦績 19戦6勝
(6・3・4・6)
生産者 北海道安平 ノーザンファーム
馬主 NICKS 騎手 四位洋文、M.デムーロ、J.モレイラ、横山典弘、
O.マーフィー
おもな
勝ち鞍
大阪杯(2018),ジャパンC(2019),アルゼンチン共和国杯(2017),
金鯱賞(2018),共同通信杯(2017)
    堅実だが勝てない馬はファンには意外と人気があったりするが、競馬界では勝利が至上とされ、2,3着は評価されない。特に種牡馬選定の意味合いが強いG1では、たとえハナ差であっても1着と2着は天と地ほども違う。
    馬券検討においても、勝ちきれない馬の存在は悩ましい。中心にはできないが、切り捨てるわけにもいかない。個人的にはそういう馬が結構苦手だったりする。

    スワーヴリチャードは成績を見てみれば決して弱い馬ではなく、実際にG1も勝っているが、勝ちきれない印象が強い。そのため苦手なタイプのはずなのだが、雄大な馬体と落ち着いて動じない雰囲気。どこにいても目立つ大きな流星など、同時にとても好きなタイプの馬でもあり、出てくれば応援したし、G1を勝った時は本当にうれしかった。

    3歳(2017年)

    そんなスワーヴリチャードを本格的に意識したのは、2017年の共同通信杯だった。
    それまでのスワーヴリチャードの成績は1・2・0・0。前年9月の新馬戦を1番人気ながらハナ差2着と取りこぼし、次の未勝利は勝つものの、東スポ杯2歳Sは最速の上りながら差し返されてクビ差2着。それ以来の3か月ぶりの実戦だった。

    東スポ杯の結果は物足りなかったが、ほかにそれほど魅力的な馬もおらず、結局パドックで1番良く見えたスワーヴリチャード(2番人気 3.1倍)中心に買った。
    スワーヴリチャードは、中団内を折り合って進むと、直線で内からうまく抜け出し、1番の上りで、最後は2着争いをする4頭に2 1/2馬身差をつける完勝。前走の詰めの甘い印象を覆す見事な勝ち方だった。勝ちタイムも前年のディーマジェスティとほぼ同じでゴールドシップやイスラボニータよりも早く、その意味ではクラシックで活躍できる可能性は十分にあると思った。

    ゴールドシップのころから、イスラボニータ、ドゥラメンテ、ディーマジェスティと共同通信杯から直行で皐月賞を制する馬が続出していることもあり、当然皐月賞の予想ではスワーヴリチャードを意識せざるを得ない。実際に共同通信杯での勝ち方もすばらしく、予想において中心とするのに躊躇はなかった。

    この年の皐月賞は、フラワーCを5馬身差で完勝した牝馬のファンディーナが1番人気になっており、逆に言うと牡馬のレベルは疑問で、かなりの混戦模様だった。そんな中、スワーヴリチャードは7.0倍の2番人気。
    中団につけたスワーヴリチャードは、直線外から差してくるも差し脚は今一つで、勝ったアルアインからは0.4秒差の6着に終わった。初の多頭数の競馬で、中団でもまれ、力を出せなかったのも大きな敗因だと思われた。

    続く日本ダービーで1番人気になったのは、青葉賞を2 1/2馬身差で制したアドミラブル。ダービーを勝ったことがない青葉賞馬が1番人気になる段階で、この年の牡馬クラシックがいかに混戦だったかがわかる。中心となる馬が存在しなかったのだ。
    そんな中でスワーヴリチャードは5.9倍の3番人気。またもまれる不安はあったが、同じ東京の共同通信杯を勝っていることもあり、再び期待を込めてスワーヴリチャードから買った。

    6戦すべてに騎乗してきた主戦の四位騎手は、スワーヴリチャードを中団やや前につける。皐月賞で差し脚が届かなかったことも考えたのだろう。しかし1000mが1.03.2と極端にスローな流れとなる。それを感じた2番人気レイデオロのルメール騎手は、向こう正面で後方から2番手までポジションをあげていく。そしてこの判断が明暗を分けた。
    4コーナーを回って馬場中央に持ち出したレイデオロと、最内で逃げるマイスタイルが先頭争いをする中、スローもあって後続の馬たちはなかなか差を詰められない。スワーヴリチャードは4コーナー5番手から外に出してレイデオロを追い、残り100mでは2頭で抜け出す形となったが、3/4馬身差は最後まで縮められず2着に終わった。
    早めに動いたレイデオロと直線に賭けたスワーヴリチャード。3/4馬身差という結果を見ると、レイデオロのルメール騎手の勇気ある決断がいかに大きかったかがわかる。

    スワーヴリチャード
    スワーヴリチャード 2017年5月28日 日本ダービー出走時 東京競馬場

    夏が過ぎ秋になったが、スワーヴリチャードの姿は菊花賞トライアルにも菊花賞にも表れない。心配していると、ようやくアルゼンチン共和国杯で復帰。ここで四位騎手から、新たにM.デムーロ騎手とのコンビ結成となる。
    ここを1番人気に応えて2 1/2馬身差で制し、重賞2勝目をあげると、グランプリ有馬記念に駒を進める。

    3歳代表として出走した有馬記念で、日本ダービー2着とアルゼンチン共和国杯の実績を買われて4.5倍の2番人気に支持される。スタートが決まらず後方からレースを進めるが、3コーナー過ぎから早めに押して上がっていき、逃げる1番人気キタサンブラックを必死に追う。しかし残り150mほどで内によれて他馬の進路を妨害、そこから懸命に立て直すが、1 3/4馬身差4着まで。馬は平地調教注意、M.デムーロ騎手は2日間の騎乗停止処分となってしまった。
    結局G1では好走するが勝ちきれないまま、3歳のシーズンは終わった。

    スワーヴリチャード
    スワーヴリチャード 2017年12月24日 有馬記念出走時 中山競馬場

    4歳(2018年)

    4歳初戦の金鯱賞は、9頭立ての少頭数もあり1.6倍の圧倒的1番人気。スローを先行すると、直線で逃げ馬を交わして1/2馬身差で重賞3勝目を獲得。その勢いのまま前年にG1に昇格した大阪杯に出走する。

    G1馬は、有馬記念を勝っているゴールドアクター、サトノダイヤモンドをはじめ、ジャパンCを勝ったシュヴァルグラン、同期の皐月賞馬アルアイン、マイルCS勝ちペルシアンナイトと数は揃っていたが、他の古馬陣は最盛期を過ぎている印象もあった。1番人気は目まぐるしく変わったが、結局スワーヴリチャードがG1未勝利ながら3.5倍の1番人気に支持される。
    しかし重賞3勝と堅実な左回りに対して、右回りは有馬記念でもたれるなど結果が出せておらず、個人的にも中心としながらも半信半疑なところがあった。

    ゲート内で横を向いたときにスタートを切られ、スワーヴリチャードは伸びあがるように出て、いきなり1~2馬身出遅れて後方2番手から進める。しかも逃げたヤマカツライデンのペースは1000m61.1のスロー。まずいと思ったのかスワーヴリチャードのM.デムーロ騎手は向こう正面で外から一気にポジションをあげていき、3コーナー手前でヤマカツライデンも交わして先頭に立つ。
    そのまま絶好の手応えで4コーナーを先頭で回ると、直線も脚色衰えず後続を寄せ付けない。内ラチ沿いを追ってきたアルアインをゴール直前で突き放すと、外から一気に差してきたペルシアンナイトを3/4馬身抑えて、ついに悲願のG1制覇を達成した。

    前年の日本ダービーでのレイデオロを彷彿とさせる大胆な戦法で勝ったことで、M.デムーロ騎手をたたえる声が強かったが、その指示に忠実にこたえ、ペースの上げ下げにも動じず最後まで力強く駆け抜けたスワーヴリチャードの体力と精神力も、称賛されるべきだろう。それほど強い勝ち方だった。

    G1勝ちの勢いに乗って、次走は初のマイル戦となる安田記念に向かう。庄野調教師は、「スワーヴリチャードの持っている能力や可能性など、いろいろなものを開花させてあげたい」と出走の狙いを語っている。種牡馬としての価値を考えた時に、マイルのスピードへの対応を見てみたいということもあっただろうし、得意の東京ならという希望もあったのだろう。
    好位につけたスワーヴリチャードは、直線外からじりじりと伸びるが、後方からモズアスコットに一気に交わされ、先行したアエロリットは交わせず、1馬身差3着に終わった。
    レースを見る限り、スピードへの対応はともかく、やはり本質的にマイルは短いと思われ、その後スワーヴリチャードがマイル戦に出ることはなかった。

    スワーヴリチャード
    スワーヴリチャード 2018年6月3日 安田記念出走時 東京競馬場

    夏を挟んでスワーヴリチャードは天皇賞(秋)にぶっつけで出走する。G1馬が7頭とメンバーがそろったが、東京が得意ということもありスワーヴリチャードは2.5倍の1番人気。特に同期のクラシックホースであるアルアイン、レイデオロ、キセキがすべてそろい、その雪辱という意味合いもあった。
    ところがスタートで隣のマカヒキが大きくよれ、そのあおりを受けてスワーヴリチャードは後方2,3番手から進めることになる。後方のまま直線に向くが、いつもの伸びはなく、勝ったレイデオロから1.5秒差の10着と、皐月賞以来の着外となってしまった。

    らしくない大敗後で動向が心配されたが、スワーヴリチャードはそのままジャパンCに出走する。ここでの主役は、牝馬3冠を圧倒的な強さで制した3歳牝馬アーモンドアイ。その期待の高さは、初の古馬相手に1.4倍という圧倒的な単勝倍率に現れていた。
    レイデオロやミッキーロケットというG1馬の姿がない中、スワーヴリチャードは古馬代表として6.5倍の2番人気となった。

    レースではキセキが1000m59.9のペースで逃げて、それを3馬身差で2番手アーモンドアイが追走。スワーヴリチャードは好位の4,5番手を進む。
    直線に入り、突き放そうとする先頭キセキ、差を詰めようとする3番手スワーヴリチャードがともに懸命に追うのに対して、2番手アーモンドアイは持ったまま。残り300mで外に出して追い出したアーモンドアイは見る見るキセキとの差を詰めて、残り200mを切って先頭。対するスワーヴリチャードは手応えが怪しくなり、前の2頭との差が開いていく。
    結局アーモンドアイが2.20.6の驚異的なタイムで優勝し、2着はキセキ。3着は差してきたシュヴァルグランをクビ差抑えてスワーヴリチャードが入った。
    アーモンドアイの引き立て役に回った形だが、スワーヴリチャード自身前走の大敗からは持ち直し、何とかG1馬としての格好をつけることはできた。

    スワーヴリチャード
    スワーヴリチャード 2018年11月25日 ジャパンC出走時 東京競馬場

    5歳(2019年)

    有馬記念は見送り、5歳の初戦は中山記念に出走する。ここを1 1/2馬身差4着に敗れると、遠征したドバイシーマクラシックでモレイラ騎手を鞍上に迎えるも2馬身差3着。
    さらに帰国初戦の宝塚記念でも先行するが、4コーナーで突き放されるとリスグラシューに5馬身差つけられて3着。堅実だが勝ちきれないスワーヴリチャードにすっかり戻ってしまった。そして長くタッグを組んできたM.デムーロ騎手とも、ここでコンビ解消となってしまった。

    秋初戦は、前年に大敗している天皇賞(秋)。新たに横山典騎手とのコンビで臨むが、19.1倍の5番人気と、ファンに見放されつつあることが感じられる評価となった。しかし個人的には、堅実な成績に加えて調教もパドックでの様子もよく見えたため、アーモンドアイ、サートゥルナーリアに次ぐ3番手評価とした。
    ところが中団内を追走したスワーヴリチャードは、直線も伸び一息で、3馬身差で圧勝したアーモンドアイから0.9秒差の7着。2年連続の着外となり、この舞台との相性の悪さだけが印象に残る結果となった。

    スワーヴリチャード
    スワーヴリチャード 2019年10月27日 天皇賞(秋)出走時 東京競馬場

    次走はジャパンCに出走。この年のジャパンCは、数年前から懸念されていたが、39回目にしてついに外国馬の出走がなく、また3歳クラシックホースをはじめ、その年のG1ホースが1頭も参戦せず、唯一の話題は3世代のダービー馬の対決のみという、かなりさみしいメンバー構成となった。

    ここまで7戦連続して連対できていないスワーヴリチャードは、好位を追走するも伸びきれず、前の馬を捉えられなかったり、後ろの馬に差されたりして惜敗を繰り返してきた。もうあの強かったスワーヴリチャードを見ることはないのかもしれないと、ちょっとあきらめの境地にもなってきていた。
    しかし同じように伸び悩んでいたラッキーライラックが、エリザベス女王杯で鞍上にスミヨン騎手を迎えると、それまで見せたことのないような末脚を発揮して、内から一気に突き抜け、約2年ぶりのG1制覇を飾ったのを見て、マーフィー騎手に乗り替わったスワーヴリチャードも同様の結果になってもおかしくないと思い直し、馬券の中心にすることにした。
    前年のジャパンCも離れた3着とはいえ、スワーヴリチャード自身も当時のアルカセットのレコードタイムより速い時計で走っており、前年の上位2頭がいないので、理論上は1着になっても不思議ではない。
    さらにパドックで見たスワーヴリチャードは程よい気合乗りで馬体もすばらしく、トモの踏み込みも力強く、あらためて本命にふさわしい状態と感じた。

    そのスワーヴリチャードの評価は、5.1倍の3番人気。結果が出ていない割には、比較的高い支持を受けることになった。
    大きな集団となった中団の内で、2番人気ワグネリアンを見る位置を進んだスワーヴリチャードは、コーナーワークで徐々にポジションを上げ、4コーナーを回って直線に入ると3番手の内ラチ沿い。
    前のカレンブーケドールが馬場の外に進路をとると、内を突いて一気に進出。逃げたダイワキャグニーを内から交わすと、外から再度伸びてきたカレンブーケドールとの叩き合いに。残り200mで1馬身ほど差をつけると、そのままの差を保って1着でゴール。前年の大阪杯以来のG1 2勝目を飾った。

    前年の2018年に日本で短期免許をとって大ブレイクし、その後イギリスでリーディングジョッキーにまで登りつめたマーフィー騎手は、これが初のJRA G1制覇。この年も大挙して来日した、デットーリ、ムーア、スミヨン、ビュイックというキラ星のような外国人ジョッキーの中で、大きな存在感を示した。

    スワーヴリチャード

    スワーヴリチャード
    スワーヴリチャード 2019年11月24日 ジャパンC出走時 東京競馬場

    古馬中長距離G1を2勝したことで、古馬の中心的な存在になってきたスワーヴリチャードは、2年ぶりとなる有馬記念に出走する。しかしアーモンドアイをはじめ、2019年を代表する馬たちが集結したグランプリでは、この年のG1馬が出走しなかったジャパンCの勝ち馬では、一枚落ちる感じは否めない。そんな評価もあったのだろう。スワーヴリチャードは17.5倍の5番人気と、やや低い評価にとどまった。 実際に個人的にも、中山実績がないこともあり、かなり評価を下げていた。
    そして中団やや前目を追走したスワーヴリチャードは、4コーナー手前で手ごたえが悪くなり、直線は伸びを欠いて後退。勝ったリスグラシューからは3.1秒も離された12着に終わった。 マーフィー騎手は、残り800mぐらいで歩様がおかしくなったとコメントしていたが、その後飛節に腫れと痛みが出たこともあり、関係者が協議の上2020年1月末に引退が決まった。

    種牡馬として

    社台スタリオンステーションで種牡馬入りしたスワーヴリチャードだが、200万円と種付け料が比較的安価なこともあり、初年度から120頭を超える牝馬を集めて順調な滑り出しを見せた。ハーツクライ産駒の種牡馬はジャスタウェイやワンアンドオンリーがいるが、あまり大物産駒を出していないことも、種付け料が抑えられている要因だったのだろう。
    しかし2023年にデビューした初年度産駒は年末までに1/3が勝ち上がり、コラソンビートが京王杯2歳Sで初重賞制覇。さらにホープフルSでは牝馬ながらレガレイラが勝利してG1ホースの父となり、大きくブレイクした。そのため種付け料も、2024年からは一気に1,500万円にアップ。芝中距離で活躍する馬も多いので、今後の活躍が期待されている。