カレンブーケドール

性別 毛色 鹿毛
生年月日 2016年4月23日 所属 美浦・国枝栄厩舎
ディープインパクト ソラリア (母父:スキャットダディ)
戦績 17戦2勝
(2・7・3・5)
生産者 北海道千歳 社台ファーム
馬主 鈴木隆司 騎手 北村宏司、O.マーフィー、戸崎圭太、
津村明秀、池添謙一、松山弘平
おもな
勝ち鞍
スイートピーS(2019)

    G1上位の常連でありながら、なかなか勝ちきれない馬はよくいるが、それでもG3あたりは勝っていることが多い。しかしカレンブーケドールは、ついに重賞を勝てず、ある意味不思議な馬だった。ここまでくるとわざと負けているのではないかとすら思えてくる。とても控えめな性格で、どうしても1番にはなりたくなかったのだろうか。

    2歳(2018年)

    カレンブーケドールは、父ディープインパクトで母はチリのG1馬。良血なので当然陣営はクラシックを意識していただろう。デビューは2018年10月8日、東京芝1600mの新馬戦。北村宏騎手鞍上で3番人気だったが、のちに日本ダービー2着で安田記念を勝つダノンキングリーのアタマ差2着に敗れてしまう。
    次走も3着に敗れ、ようやく3戦目の12月16日中山芝1600m未勝利戦を勝って、なんとか2歳のうちに未勝利は脱出した。

    3歳(2019年)

    クラシックから逆算すると500万下(1勝C)を使うとローテーション的にきびしいという判断もあっただろうし、期待も高かったのだろう。年明け初戦はG3のクイーンCに向かう。4番人気に支持されるが、中団から伸び一息でクロノジェネシスの1馬身差4着。

    ここで陣営は桜花賞をあきらめ、オークスに狙いを定めてトライアルのスイートピーSを使う。このレースからしばらく津村騎手が主戦騎手を任されることになった。
    やや離れた2番人気という評価だったが、スタートで後手を踏んでしまう。向こう正面で徐々に押し上げて、4コーナーは絶好の手応えで外の3番手で直線に向く。しかしいったんは抜け出したものの意外と伸びずに、最後は後続の2頭に迫られたが、なんとかクビ差抑えて2勝目を飾った。あとから考えると、このレースぶりはカレンブーケドールの将来を暗示していたようにも思える。

    優先出走権をとったことで次走はオークスに出走する。
    しかし未勝利勝ちに3戦要してクイーンCで敗れ、スイートピーSは辛勝という成績から、ハナから来ないだろうとカレンブーケドールは馬券の対象から外してしまった。同じように考えた人が多いのだろう。当日の単勝オッズは94.1倍の12番人気。それまでは悪くても4番人気だったが急落した。

    しかし好スタートから好位につけると、直線に入って一気に先頭に立つ。残り100mで1番人気のラヴズオンリーユーに交わされるが、そこから粘って離されずクビ差2着でゴール。勝てはしなかったが、良血馬らしく力があるところは見せた。スイートピーSからは来ないと決めつけたことを後悔するとともに、キャリアの浅い3歳春では決めつけはいけないと、深く反省することになった。

    カレンブーケドール
    カレンブーケドール 2019年5月19日 オークス出走時 東京競馬場

    秋の初戦は秋華賞トライアルの紫苑S。オークス惜敗で力を見せたこともあり2.8倍の1番人気。2番手から直線はいったん先頭に立つも、後続2頭にかわされて1/2馬身差3着に負けてしまう。

    それでも秋華賞は5.6倍の2番人気に支持される。たたいて良化することを期待されたのだろう。この年は春のクラシック勝ち馬がどちらも出走せず、2歳女王でローズSを勝ったダノンファンタジーが3.5倍の1番人気だったが、5番人気までが単勝1桁と混戦模様だった。
    カレンブーケドールは中団を追走し、4コーナーでは馬群に包まれるものの、うまく外に持ち出して、外のクロノジェネシス(4番人気 6.9倍)に馬体を合わせていっしょに伸びてくる。しかし残り100mすぎにクロノジェネシスに突き放されると、2馬身差をつけられて2着に終わった。
    個人的にはカレンブーケドールから買っていて、意外と良い配当でありがたかったが、なんとももどかしい気持ちが残った。

    毎回好走するし勝ち馬も違うのだが、接戦をしていてもなぜか最後に前に出られて負けるという、同じようなレース展開での惜敗続き。陣営にとってはとてもストレスのたまる負け方だっただろう。
    しかしこのつらい惜敗の連続は終わらなかった。

    次走はジャパンCに出走。それまでG1 2着が2回とはいえ同世代の牝馬同士の戦いで、初の古馬牡馬相手で重賞未勝利となると、どうしても見劣りしてしまう。
    それでも外国馬もその年のG1勝ち馬も出走しないという、かなりメンバー的にさみしい状況で、牝馬の活躍が目立つレースということもあり、10.5倍の5番人気と上位の支持を受けた。

    最内1番から好スタートを切ったカレンブーケドールは、重馬場をものともせず好位につける。2番手で4コーナーを回ると、直線は馬場の良い外に持ち出すが、その間に最内を突いたスワーヴリチャードに前に出られてしまう。残り200mで前のダイワキャグニーを交わして2番手に上がるも、前を行くスワーヴリチャードとの1馬身差は詰まらず、そのまままたも2着でゴール。
    牡馬相手でも十分通用する力は見せたが、G1で3度目の2着となり、シルバーコレクターというありがたくない名前で呼ばれるようになっていく。

    ちなみに勝ったスワーヴリチャードに騎乗していたO.マーフィー騎手と国枝師が、検量室で抱き合って喜ぶ姿がターフビジョンに映し出されて不思議に思ったのだが、カレンブーケドールの未勝利勝ちに乗っていたのがマーフィー騎手だったことに気づき、ちょっと不思議な縁を感じた。

    カレンブーケドール
    カレンブーケドール 2019年11月24日 ジャパンC出走時 東京競馬場

    4歳(2020年)

    年明け初戦の京都記念で、先行したクロノジェネシスを捉えられず2着に敗れたカレンブーケドールは、ドバイシーマクラシック出走のために渡航したが、折からの新型コロナウイルスの流行によりレースが中止になり、そのまま帰国する。

    その後休養に入り、復帰したのは9月末のオールカマーだった。
    2番手から進めたカレンブーケドールは、絶好の手応えで4コーナーを回ると、直線で抜け出して後続を突き放す。ようやく勝ったかと思ったが、大外から追いこんできたセンテリュオが並んだところがゴール。写真判定の結果、ハナ差でまたも2着となった。

    そして次走は、前年好走したジャパンCに駒を進める。
    この年のジャパンCは前年と打って変わって豪華なメンバーとなった。天皇賞(秋)で芝G1 8勝の新記録を打ち立てたアーモンドアイの引退レースに、その年の2頭の無敗の牡牝3歳3冠馬コントレイルとデアリングタクトが挑戦してきたのだ。3頭の3冠馬対決は、その3頭のみが単勝1桁のオッズとなり、他馬は引き立て役という印象だった。
    カレンブーケドールも5番人気ながら24.9倍と、オークス以来の高いオッズとなった。

    人数制限がありながらも、ようやく観客を入れての開催が可能となり、高倍率の抽選を潜り抜けた幸運な観客の前で、歴史的なレースのスタートが切られた。
    最内1枠のカレンブーケドールは、アーモンドアイ、デアリングタクトをすぐ前に見る中団の内を進む。3コーナー過ぎにうまく外に出し、直線は馬場中央から前を追う。
    アーモンドアイには大きく離されたものの、外のコントレイル、内のデアリングタクト、さらに最内で先行していたグローリーヴェイズとの追い比べに。ゴール直前でコントレイルには交わされるものの、デアリングタクトとは馬体を合わせたまま、グローリーヴェイズは交わして3番手で並んでゴールした。

    写真判定の結果は、ハナ差4着。人気の3冠馬3頭による絵にかいたような決着となり、大半の人には喜ばれる結果に終わった。
    もしカレンブーケドールが3着に入っていたら、余計なことをしやがって的な心無い批判も少なからずあっただろうから、よかったのかもしれない。そのあたり、絶妙なバランス感覚というか、気遣いをしてしまう馬に思えてしまうのは、穿ちすぎだろうか。

    そして次走は有馬記念に向かう。ここでついに陣営は騎手の乗り替わりを選択し、グランプリ男の異名もある池添騎手とコンビを組む。津村騎手は大きなミスもなかったと思うが、勝ちきれない成績から、新たな面を引き出すことを期待したのだろう。
    ジャパンCの上位3頭が出走しないことや、中山でもオールカマー2着など良績を残していることもあり、7.9倍の3番人気となる。

    カレンブーケドールは中団追走から4コーナーでは先団につくものの、直線は伸び一息で前3頭からはやや離された5着(同着)に終わった。勝ったのは1番人気のクロノジェネシスで、2着は後方から追いこんだサラキアとともに牝馬。また4着もラッキーライラックで、5着以内の6頭中4頭が牝馬という牝馬の時代を象徴する結果に終わった。

    5歳(2021年)

    5歳も現役を続行したカレンブーケドールの年明け初戦は日経賞だった。松山騎手とのコンビで2.3倍の1番人気に支持される。好位から進めるが、先行していたウインマリリンを捉えられず、またもや1/2差2着と惜敗。

    そして次走は天皇賞(春)に挑戦する。
    芝3200mという距離から近年は挑戦する牝馬自体が少ないのだが、歴史を振り返ってみると牝馬で勝ったのは1953年のレダただ1頭。連対したのは1950年代に3頭いただけで、5着以内に入ったのも1965年のパスポートが最後と、50年以上牝馬の上位入線がないという厳しい戦いだった。
    それでも牝馬の時代を象徴するように、この年はカレンブーケドールの他にも、ウインマリリン、メロディーレーンと合計3頭の牝馬が挑戦してきた。

    そんな牝馬にとって鬼門のレースではあったが、カレンブーケドールは7.3倍の4番人気という高い支持を得る。G1上位を繰り返して力があることは間違いない上に、じり脚の分距離が伸びた方がいいのではという思惑もあっただろう。

    クイーンC以来となる戸崎騎手とコンビを組んだカレンブーケドールは、積極的に前に行って3番手の内でレースを進める。2周目3コーナー過ぎに2番手に上がると、4コーナーでは絶好の手応えで逃げたディアスティマに並びかける。そして直線では馬場中央に持ち出して先頭。じりじりと脚を伸ばして先頭をキープしたが、ゴール直前で脚色が鈍り差してきたワールドプレミア、ディープボンドに交わされる。しかしアリストテレスはアタマ差抑えて3着でゴール。
    牝馬が3着以内に入ったのは、実に66年ぶりの快挙だった。ちなみにウインマリリンも5着に入り、あらためて牝馬の強さを実感させられた。
    しかし負けたことには変わりなく、残り200mぐらいまでの強さは称賛されるべきものがあったが、距離が伸びても残念ながらゴール前の詰めの甘さは解消できないのだなということが印象的だった。

    しかしこの敗戦にめげることなく、陣営は次走に宝塚記念を選択する。
    阪神芝2200mは初めてだが、2200mは京都記念、オールカマーでともに2着に入っている得意な距離で、天皇賞(春)よりはあきらかに条件は好転する。それもあって6.7倍の3番人気とさらに高い支持を得ることになった。個人的にもクロノジェネシスに次ぐ2番手の評価だった。

    レースではクロノジェネシスをすぐ前に見る中団外を追走。4コーナーでは外から先団に取り付くも、直線に入って伸びがなく、前の3頭には突き放される。そのまま4着でゴール。いつもの粘りが感じられず、やはり天皇賞(春)で3200mを走った影響があるのではと思われたが、それでも4着に来るところはさすがだと思った。

    秋の初戦は天皇賞(秋)となった。この年は、前年の無敗の3冠馬コントレイルに、3歳馬のエフフォーリアと、マイル以下では敵なしのグランアレグリアが挑むという豪華な対決となり、この3頭が2.5倍から3.4倍の僅差で人気を争う形になった。
    そしてこの3頭からは大きく離れたオッズ(19.6倍)ながらも4番人気になったのがカレンブーケドールだった。

    外の14番から好スタートをきったカレンブーケドールは3,4番手を追走。4コーナーは外目に出して手応え良く直線に向くが、そこからいつもの伸びがなくずるずると後退。エフフォーリアを先頭に3強が抜け出してゴールする中、1.3秒差12着と17戦目にして初めて掲示板をはずす大敗を喫することとなった。
    戸崎騎手は内にササる感じだったとコメントしていたが、何か違和感があったのかもしれない。それまで見たことのないような失速のしかただった。

    カレンブーケドール
    カレンブーケドール 2021年10月31日 天皇賞(秋)出走時 東京競馬場

    その後3度目のジャパンCを目指していたが、軽度の繋靱帯炎ということで回避して放牧に出て、翌2022年も現役を続行する予定だった。しかし放牧先で精密検査を受けたところ症状が重いことが判明し、11月末に引退が発表された。

    競走馬としての総括、繁殖牝馬としてその後

    G1で3回、G2でも3回の2着がありながら、ついに重賞を勝てなかった。しかし生涯17戦(うち重賞は13戦)して掲示板を外した(6着以下に敗れた)のは、最後の天皇賞(秋)のみという安定感は特筆できるだろう。力はありながらわずか2勝で終わったその競走成績は、ある意味稀有なものだった。
    最後の直線で先頭に立ったり、あるいは先頭の馬に迫ったりというシーンは何度もあったが、最後は必ず末脚が甘くなり、他馬の後塵を拝してしまう。おそらく先頭に立つとソラを使ってしまい、走ることに集中できないという傾向があったのだろう。実際に抜かれても、そこから離されずについていく場面も何度もあった。しかし騎手がギリギリまで先頭に立たないなど工夫をしても、それでも勝てなかったわけで、それだけでは説明できない特性もあったのではないだろうか。
    良く言えば控えめで、他者に花を持たせるような性格だったのかもしれないが、それは競走馬としては決して褒められるものではない。しかし2020年のジャパンCの際にも書いたが、人間だったら絶妙なバランス感覚を持ち、常に忖度して敵をつくらないタイプと言えるかもしれない。だから勝ちきれずに批判されることもあったが、あまり嫌われることもなかった。

    引退後は生まれ故郷の社台ファームで繁殖入り。2023年には初仔となる父エピファネイアの牡馬を出産している。
    ディープインパクト産駒の有力牝馬は数が多く、つけられる種牡馬もある程度限られてくるため、ますます競争は厳しくなると思われる。そんな中でG1上位の常連だったという武器を携え、勝ち残っていくことを期待したい。