定石通りの結果。いいダービーでした

今年のダービーは4強の争いと言われていました。
それは皐月賞の上位4頭。いずれも皐月賞でも5番人気以内に支持されており、力があることは間違いない顔ぶれ。個人的にも異論はありませんでした。
しかし問題は、どの馬を中心に考えるかということでした。どれも一長一短あり、どの馬が1番人気になるかもわからず、その意味では4強による混戦と言える状況だったと思います。

1番人気になったのは、ダノンベルーガ(3.5倍)でした。たぶんイクイノックスかドウデュースだろうと思っていたので、これはかなり意外でした。とはいえ、最終的には自分でもダノンベルーガを本命にしてしまったのですが・・・。
その要因は、やはり共同通信杯の末脚でしょう。皐月賞を勝ったジオグリフを置き去りにしたレースぶりは、東京競馬場での強さを感じさせるものでしたし、1週前追い切りでの強烈なパフォーマンス(ウッドチップ 5ハロン62.4、1ハロン11.0)も影響したと思います。
皐月賞は伸びない内で粘って2 1/2差4着という結果も、得意の東京なら逆転の目もあると期待できるものでした。

2番人気はイクイノックス(3.8倍)。東スポ杯2歳Sの勝ちっぷりから、2歳時からダービー候補の呼び声が高かったのですが、5か月のぶっつけで皐月賞という異例のローテーション。それが懸念されて皐月賞は3番人気でしたが、先行していったんは抜け出し1差の2着と好走。あらためて力があることを示しました。
しかし大外枠や長期休み明け2戦目などの心配もあり、僅差とはいえ2番人気の評価になったのではないでしょうか。

3番人気はドウデュース(4.2倍)。皐月賞が終わった時には、この馬が1番ダービー馬に近いだろうと思いました。皐月賞は1番人気ながら後方に下げてしまい、1番の上りで直線懸命に追いこむも、明らかに脚を余して2 1/4馬身差3着。
しかしこの10年でもワンアンドオンリー、マカヒキ、レイデオロと3頭が、皐月賞で人気になりながら1,2番の上りを使って負けたあと、巻き返してダービー馬になっているのです。東京の長い直線を考えると十分に逆転の目はありますし、この馬から行くのが定石でしょう。
ただ個人的に引っかかったのは、朝日杯FSを勝っていることと、皐月賞の追い切りがあまりに素晴らしく、あそこがピークだったのではとの懸念を持ったことでした。

朝日杯FS(前身の朝日杯3歳S含む)を勝ってダービー馬になったのは、1994年のナリタブライアンが最後。その後は距離体系が整ってきたこともあり、クラシックを狙う馬はラジオたんぱ杯(現在のホープフルS)を使うことが圧倒的に多くなります。そのため朝日杯FS勝ち馬は、皐月賞を勝つ馬はいましたが、ダービーには縁がなかったのです。
1800mでデビューから連勝したドウデュースをなぜ朝日杯FSに使うのか、当時はとても不思議で、友道調教師はマイラーと見ているのではとも思ったのです。広いコースを走らせたかったとコメントしていましたが、どうしてもそこが引っかかってしまいました。

皐月賞を勝ったジオグリフは4番人気(5.9倍)。共同通信杯での負け方から東京競馬場への懸念と、血統的に距離伸びてどうかというところが、皐月賞馬ながら、やや離れた人気となってしまったのでしょう。
ただ皐月賞でも5番人気ながら鮮やかな差し切り勝ちをおさめており、意外性という意味ではダービーでも上位に来る可能性はあると思いました。

皐月賞でダノンベルーガとクビ差5着だったアスクビクターモアは7番人気(24.7倍)。弥生賞を勝つなど中山では良績も、東京は3着2回と未勝利。また逃げ先行脚質というところも嫌われる要因だったと思いますが、追いきりの動きは素晴らしく、個人的には見限れないと思っていました。

その他の前哨戦では京都新聞杯(1着アスクワイルドモア)、プリンシパルS(1着セイウンハーデス)とも、すでに勝負付けが終わった馬が勝った印象で、あまり引かれません。
唯一別路線からの2頭のディープインパクト産駒(プラダリア、ロードレゼル)が優先出走権を得た青葉賞組が気になりますが、近年青葉賞から上位に来るのは関東馬だけ。関西馬の若駒にとって、短期間に2度の輸送および芝2400mのレースは、やはりかなり負担が重いのでしょう。

結果は、後方から進めたドウデュースが、直線外から脚を伸ばし、先行して粘るアスクワイルドモアを残り100m手前でかわして先頭に立つと、後ろから追いこんできたイクイノックスをクビ差押さえて1着。1番の上りはイクイノックス(33.6)でしたが、遜色のない33.7で長く脚を使いました。
ドウデュースをパドックで見た時に、その気配と出来の良さに、やはりこっちだったかと思ったのですが、そのとおりのすばらしい内容での勝利でした。

【ドウデュース】落ち着いていながら適度な気合乗り。出来の良さが感じられました
【ドウデュース】武豊騎手は6度目の制覇でもうれしそうでした

これで武豊騎手はダービー6勝目。1998年にスペシャルウイークで29歳にして初めてダービーを勝ってから、30代で3勝(1999年アドマイヤベガ、2002年タニノギムレット、2005年ディープインパクト)、40代で1勝(2013年キズナ)、そして53歳でも勝利と、まさに空前絶後ともいえる活躍ぶり。
ダイナガリバーの増沢末男氏の48歳を大きく更新する、史上最高齢のダービージョッキーになりました。

最近は以前のように年間200勝以上をするような活躍は望めないとはいえ、いざというときにはきっちりと結果を残す存在感は、さすがだなと思わせるものがあります。またテレビに出て柔らかい語り口で、過去のエピソードや経験を話す場面をよく見ますが、競馬のすそ野を広げるという意味でも、その貢献は大きいと思います。
本人は体が続く限りジョッキーとして馬に乗り続けたいと言っているので、競馬界のレジェンドとして、今後も無事にさらなる活躍を祈りたいと思います。

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