史上初のJ・G1 4連勝は記録にも記憶にも残る勝利 ~中山大障害

今、障害レースのスターといえば、やはりオジュウチョウサンでしょう。失礼ながら、とてもユーモラスで、あまり強いイメージがわかない馬名ですが、障害レースを10勝し、昨年春の中山GJから7連勝中の絶対王者として君臨しています。
そのオジュウチョウサンが8連勝とJ・G1 4連勝を目指して中山大障害に登場したのです。

そんなオジュウチョウサンですが、もちろん最初は普通の競走馬として2歳の10月に平地でデビューします。東京芝1800m新馬は後方のまま12頭立て11着。続いて1か月後の東京芝2000m未勝利も11頭立て8着に終わると、1年の休養と障害練習を経て、3歳秋に障害デビューします。
ところが初戦は14頭立て14着。しかし2戦目で2着と変わり身を見せると、4戦目で初勝利。続くOPで連勝を飾るもその後は勝ったり負けたり。4歳暮れの中山大障害に挑戦するも、アップトゥデイトに4.3秒差の6着に敗れます。
明けて5歳の2月に中山のOPで1 1/4馬身差の2着に好走すると、続く中山GJで先行して2着に3 1/2馬身差をつけてJ・G1初勝利を飾ります。そしてここから連勝が始まり、J・G1 3勝を含む7連勝を果たします。

障害と言えば落馬はつきもので、下手すると着地時にバランスを崩して転倒することもあります。しかしオジュウチョウサンのすごいところは、障害を18戦して、なんと落馬・競争中止はゼロ。すべて完走しているのです。やはり天性の障害馬としての素質があり、それがトレーニングで磨かれたのでしょう。

今年の中山大障害で、オジュウチョウサンの最大のライバルは、2年前に破れているアップトゥデイトでした。そのアップトゥデイトですが、2年前に中山大障害を制した後、翌年の中山大障害は2着、その翌年の中山GJは3着といずれもオジュウチョウサンに敗れ、さらに重賞でも2着続きでなかなか勝てません。ようやく今年の9月の阪神ジャンプSで1年9か月ぶりの勝利を飾ると、オジュウチョウサンに雪辱を果たすべく、今日のレースに臨んだのです。

アップトゥデイトはだいたい先行するのですが、スタートして最初の直線に入ってすぐに先頭に立つと、あとはどんどん後続を引き離していきます。対してオジュウチョウサンは好位から進めますが、その差はみるみる離れて、最初の大竹柵では3~4秒、さらに半周回って赤レンガを飛ぶころには4~5秒差に。オジュウチョウサンは途中で2番手に上がり、向こう正面から徐々にアップトゥデイトとの差を詰めていきますが、珍しく飛越が乱れ、また場内がどよめきます。そして坂を下って上るころから石神騎手の手が激しく動いて、みるみるアップトゥデイトとオジュウチョウサンの差が詰まっていきます。そして3馬身差で直線へ。
直線は懸命に逃げ込みを図るアップトゥデイトにじりじりとオジュウチョウサンが迫り、障害レースでは珍しい壮絶なたたきあい。3番手以下は大きく離れてマッチレースの様相です。そしてゴール直前で一気にオジュウチョウサンがアップトゥデイトを交わして1/2馬身差でゴール。見事に8連勝でJ・G14連勝を果たしました。

平地競争ではゴール直前で交わす場面はよく見ますが、障害レースでは珍しい光景です。しかも4100m走って1/2馬身差とは。
オジュウチョウサン騎乗の石神騎手の心中は穏やかではなかったと思いますが、慌てず馬を信じて前を追っていき、最後に差し切るという見事な騎乗でした。

これでオジュウチョウサンは障害重賞8勝となり、コウエイトライと並ぶ1位タイ。また重賞8連勝はテイエムオペラオーと並んでこちらも1位タイ。J・G1 4連勝は史上初で、中山大障害2連覇はフジノオー、グランドマーチス、キングジョイという障害の名馬と並んで2位タイ(1位は3連覇のバローネターフ)。
またアップトゥデイトが飛ばしたこともあり、勝ちタイムは1991年のシンボリモントルーの記録を1.1秒も上回る4.36.1のレコード。まさに記録にも記憶にも残る、すばらしいレースとなりました。

オジュウチョウサンは来年も現役を続けるということなので、この記録はまだまだ伸びるかもしれません。さらなる偉業の達成を期待したいと思います。

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