一筋縄ではいかない春のグランプリ ~宝塚記念

宝塚記念は、グランプリレース有馬記念に対して春のグランプリとも呼ばれ、上半期のNo.1を決める締めくくりのレースに位置付けられています。そして有馬記念もそうですが、シーズン終わりということもあり、なかなか一筋縄ではいかない印象があります。
過去10年を見てみると、1番人気は6連対とそこそこですが、勝ったのはわずかに2頭。あまり荒れる印象はなく、実際に馬連万馬券も過去10年で1回だけですが、1,2番人気で決まったのはわずかに1回だけと固いとも言えません。

そんな宝塚記念ですが、昨年の年度代表馬にして今年すでにG1を2勝と、自他ともに認める現役最強馬キタサンブラックの1強という構図になりました。昨年の有馬記念でキタサンブラックを下し、今年の天皇賞(春)で人気を分け合ったサトノダイヤモンドは、凱旋門賞を目指すということで早々に回避を表明。また他にも回避が相次ぎ、最終的にわずか11頭の出走と、1990年、91年の10頭に次ぎ、1985年、1993年、2000年と並ぶ少頭数のレースになってしまいました。
実はこの5回と共通するのは、圧倒的に強い馬が登録してきたということ。1985年は最終的には回避したものの当時G1を5勝していたシンボリルドルフが、1990年には安田記念で復活したオグリキャップが、1991年、1993年には天皇賞(春)を連覇したメジロマックイーンが、2000年には天皇賞(春)を含む3連勝中のテイエムオペラオーが登録したため、あきらめた他の陣営が回避した面もあるでしょう。逆に混戦の年は登録数が多くなるように思えます。

最終的に1.4倍の1番人気になったキタサンブラックは、昨年までにG1を3勝。そして今年は新たにG1になった大阪杯と、天皇賞(春)を連勝してG1を5勝。特に前走の天皇賞(春)は、破るのは難しいと思われていたディープインパクトのレコードを0.9秒更新する3.12.5の驚異的なタイムで優勝し、このまま順調ならJRAの芝G1最多勝記録である7勝を、あっさり更新するのではないかと思われました。
対する10頭でG1を勝っているのは、2年前の有馬記念を勝っているゴールドアクター、牝馬戦ながらオークス、秋華賞と2勝しているミッキークイーン、国内のG1勝ちはないものの昨年末に香港ヴァーズを勝ったサトノクラウンの3頭だけ。しかも3頭とも前走では掲示板を外しており、デビュー以来16戦で4着以下はダービー14着のわずか1回だけというキタサンブラックの安定感とは、比ぶべくもありません。

しかし実際のレースでは、道中内外からからまれながらも、比較的スムーズに先行しているように見えたキタサンブラックは、直線でいったん先頭に立つも、そこから今まで見たことがないような失速ぶりで、みるみる馬群に飲み込まれていきます。そのシーンは、ある意味ショッキングでもありました。
最終的には逃げたシュヴァルグランにも差し返されて9着と大敗。これで秋に予定されていた凱旋門賞参戦も、白紙になるようです。先行してしっかりした末脚を使える脚質は凱旋門賞に合うのではと思っていたので、とても残念です。
そして上位を占めたのは、先ほどあげたG1勝ちのある3頭(1着サトノクラウン 2着ゴールドアクター 3着ミッキークイーン)。終わってみれば、とても簡単な馬券でもありました。

また今年から大阪杯のG1昇格に伴い、上半期の古馬中長距離G1を3勝すると2億円のボーナスが出ることになったのですが、それも夢と散りました。そもそも3戦すべてに参戦したのはキタサンブラックだけと、実は秋の3戦よりもかなりハードルが高いのではないかと思います。その大きな原因は、やはり天皇賞(春)の3200mではないでしょうか。
キタサンブラックの敗因はわかりませんが、個人的にはレコードで勝った天皇賞(春)の反動が一番大きいのではないかと思います。過去10年、天皇賞(春)の勝ち馬の宝塚記念での成績は、0・1・1・4とかなり悪く、連勝したのは2006年のディープインパクトまでさかのぼってしまいます。これは天皇賞(春)好走の影響が大きいことを、示しているのではないでしょうか。

名馬の条件として、大敗しないということがよくあげられます。ディープインパクトやシンボリルドルフ、シンザンなどはまさに大敗しない名馬でしたが、オルフェーヴルのように謎の大敗をする名馬もいます。今回の敗戦には驚きましたが、これでキタサンブラックの今まで見せた強さがすべて否定されるわけではありません。
キタサンブラックの次走がどこになるかはわかりませんが、ぜひ万全の体調で、また見事な勝利を見せてもらいたいと思います。

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