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2010年05月30日

エイシンフラッシュの勝因、ヴィクトワールピサの敗因 ~日本ダービー

今年のダービーは、単勝7番人気の伏兵扱いだったエイシンフラッシュの優勝となりました。1番人気のヴィクトワールピサは意外に伸びずに3着、2番人気のペルーサは出遅れも響いて6着に敗退しました。
最近10年は、すべて3番人気以内の馬が勝っており、人気薄での勝利となると97年のサニーブライアン(6番人気)以来、7番人気ということではその前年のフサイチコンコルド以来となります。
さらに2着は5番人気のローズキングダムで、3番人気以内の馬が連対しなかったのは、なんと87年(1着メリーナイス:4番人気、2着サニースワロー:22番人気)以来23年ぶりのことになります。

戦前は皐月賞馬ヴィクトワールピサと青葉賞勝ち馬のペルーサが2強状態で、特にNHKマイルC勝ち馬のダノンシャンティが取り消してからは、余計その色が濃くなりました。
たしかにヴィクトワールピサは6戦5勝で皐月賞を含む重賞3連勝中、ペルーサは4戦全勝で青葉賞は2.24.3で2着に4馬身差の圧勝と、文句をつけられない戦績でした。

それに対してエイシンフラッシュは、京成杯はハナ差1着で、皐月賞はヴィクトワールピサと同じ上がりで1 1/2馬身差3着まで。皐月賞が休み明けだったとはいえ、かなり地味な印象でした。
またローズキングダムも朝日杯FSを快勝したものの、3歳になってからは伸び一息で3,4着と連対をはずし、しかも馬体減が止まらず、ダービーでは人気急降下となってしまいました。

それではそれぞれの勝敗を分けたのは、何だったのでしょう。
まずエイシンフラッシュは調教がすばらしかったように、休み明けをたたいて、大幅に体調アップしていたことが大きいと思います。パドックでもぴかぴかの毛づやで悠然と歩いていました。
あとは瞬発力勝負に強かったと言うことなのでしょう。レースの上がりが3ハロン33.4と上がりの勝負になったのですが、それをエイシンフラッシュは32.7と究極の末脚で差しきって勝ちました。
もっともこれまでの最速が34.4だったので、成績からそれを読み取ることはできなかったのですが、休み明けの皐月賞で、ヴィクトワールピサと同じ上がりタイムで3着にきたということは、その可能性を秘めていたということなのでしょう。

これは2着のローズキングダムにも言えると思います。新馬戦では33.9の上がりを発揮して、34.1の上がりのヴィクトワールピサを寄せ付けずに快勝。その後は馬場の悪い中山で結果を残せていなかったのです。また今回、デビュー以来初めて馬体増で出走できたように、ようやく身が入ってきたのかもしれません。

それに対してヴィクトワールピサは、直線入り口ではエイシンフラッシュやローズキングダムと同じような位置にいながら、直線は反応がよくなく、なんとかゲシュタルトとの3着争いを制したという感じでした。
上がりも33.1とエイシンフラッシュより0.4秒も遅く、これでは差しきることは不可能です。
ヴィクトワールピサの不安は、持ちタイムと上がりが平凡なことだったのですが、やはり早い上がりのレースには対応できなかったということなのかもしれません。

ペルーサは出遅れが大きいと思いますが、直線に入って行き脚が鈍ってしまったように見えました。最後は再び差してきているので、やはり強い相手と戦ったキャリアの少なさが出てしまったのではないかと思います。
どうしても青葉賞組は、皐月賞組に比べると厳しい競馬の経験が少ないことが多いので、それが本番に出てしまったのではないでしょうか。

エイシンフラッシュの戴冠は、人気薄ということでフロックではないかという危惧を抱く人もいるでしょう。しかし上がり32.7で差しきる芸当は、フロックではできないと思います。
これからのキャリアの中で、ぜひ世代の横綱としてはずかしくない戦績を残していってくれることを、期待したいと思います。
また負けた馬たちにも、実力を磨いてまたぜひすばらしいレースを見せて欲しいものです。

2010年05月23日

なんとG1初の1着同着でした ~オークス

ゴールした瞬間はサンテミリオンが出たように見え、スローで見るとアパパネがほんの少し出ているようにも見えたのですが、2年前の天皇賞(秋)と同じような長い長い写真判定になりました。
それでも、JRAは意地でも決着をつけるだろうと思っていたのですが、なんと掲示板には同着の文字が・・・。その瞬間、東京競馬場は大きな拍手が巻き起こりました。

アパパネは血統面と桜花賞で掛かったことから距離不安がささやかれ、サンテミリオンはフラワーCでの3着完敗とフローラSで抜け出すのに手間取ったことから力的にどうかとする見方もありました。
しかしアパパネは17番という前に壁を作りにくい枠にもかかわらず、掛かるそぶりも見せずに折り合い、すぐ前のサンテミリオンと中団後方を進みます。1000mが1.00.6というやや遅めの流れで、直線は満を持して先行していたアグネスワルツが抜け出しますが、それを外から並んで追い込んできて、残り200mからは2頭のマッチレースになりました。

一旦は外のアパパネがアタマほど出たようにも見えたのですが、すぐに内のサンテミリオンも差し返し、馬体をあわせての壮絶なたたき合いが、びっしり200m続きました。ゴールの瞬間はアタマを上げたサンテミリオンに対して、アパパネはクビを伸ばし、しかしスローで見てもどちらが勝ったかは定かではありません。

過去のG1でも、古くは95年スプリンターズSでのフラワーパークとエイシンワシントンのたたき合いや、最近では08年天皇賞(秋)のウオッカ対ダイワスカーレットなど、際どい勝負はいくつかありましたが、写真判定で常に勝ち負けをつけてきました。だから今回も、なんとか写真を引き伸ばして、決着をつけるだろうと思っていたのですが。だから同着と出たときは、とても驚きました。
重賞では、02年の京成杯でヤマニンセラフィムとローマンエンパイアが同着優勝したのを見たことがありますが、G1では表彰式とか口取りとか2回やるのは大変だし、なんといっても第71回オークス馬が2頭というのは、記録上ちょっとね。(ちなみに賞金は1着分と2着分を足して2で割って分けるそうですが)

蛯名Jと横山典Jを初めとする関係者も、決着をつけたかった気持ちはあると思います。勝負事ですから。ただしたまにはこのように両者をたたえるということもあっていいのではと、個人的には思います。ずっと目指してがんばってきたわけですからね。1,2cmの差だったら、両方を賞賛するべきでしょう。

口取りも表彰式も2回見ることができ、2人のジョッキーの笑顔(横山典Jの満面の笑顔に比べて蛯名Jはややこわばってましたが)を見られたのは、なかなか貴重な経験でした。めったにあることではないですからね。
2頭にはこのまま順調に夏を越してもらって、秋華賞あたりでぜひ決着をつけて欲しいとも思います。ある意味、盛り上がるとも思いますし。

アパパネとサンテミリオン
アパパネ(左)とサンテミリオン(右)

2010年05月16日

前残りの馬場を差しきったブエナビスタ ~ヴィクトリアM

昨日の京王杯SCが先行馬同士のレコードで決まったように、今週からBコースになった東京の芝コースは、極端な前残りの馬場になっていました。今日芝のレースは6レースあったのですが、ヴィクトリアM以外の各レースの1,2着馬の4コーナーの位置取りは下記のとおりでした(かっこ内は人気)。

4R(芝2000m) 1着:1(3) 2着:2(8)
6R(芝1600m) 1着:2(1) 2着:6(4)
8R(芝1600m) 1着:2(2) 2着:1(4)
9R(芝2000m) 1着:4(6) 2着:1(3)
12R(芝1800m) 1着:1(5) 2着:2(9)

すべてのレースで逃げ馬か2番手の馬が連対しており、4,8,12Rはいわゆる行った行ったで決まっています。しかも必ずしも人気同士の決着ではありません。
直線が長い東京コースは差し有利が常識なので、いかに特異な状況だったかがわかるのではないでしょうか。

そんななか、ヴィクトリアMでの1番の関心事は、ブエナビスタがどの位置でレースを運ぶかでした。実際に6,8Rを2番手から制し、9Rは1番人気ながら中団から進めて3着に敗れている横山典Jは、当然先行有利の馬場であることはわかっていたでしょう。

ブエナビスタはスタートは悪くなかったものの、向こう正面の直線ではじりじりと位置取りを下げて、3コーナーは後ろから5番手、4コーナーも後ろから7番手という位置になりました。
そこから外に出して、いつものように猛然と追い込んでくるものの、先行している内の各馬も伸びているので、なかなか差が詰まりません。坂の途中では、もうダメかという感じにも見えましたが、坂を上ってから最後の一伸びで、内から伸びてきたヒカルアマランサスをクビ差で差しきりました。
昨年のオークスもしびれましたが、それに勝るとも劣らない、すごいレースでした。

しかし意外と早い流れになったとはいえ、よくこの馬場で、後方から勝ったなというのが、率直な感想です。戦前は、海外遠征の疲れとか、久々の1600mなどいろいろな不安が上げられましたが、すばらしい走りで、すべて払拭してくれました。

最近の強い牝馬といえばウオッカが上げられますが、ウオッカはドバイ帰りのヴィクトリアMでまさかの2着に破れたり、東京以外では意外なもろさを見せたりと、強さと弱さが同居しているようなところがありました。しかしブエナビスタにはどんな状況でも克服する、どちらかといえばダイワスカーレットのような強さを感じます。
ただ、今日はメンバー的にウオッカのような圧勝まで期待されたものの、500万下と0.5秒しか違わない勝ちタイムでクビ差の辛勝と、遠征帰りの影響がうかがえました。横山典Jもいつもの反応ではなかったと認めています。それでも勝ってしまうのが、底力なのでしょう。

すでに京都記念で、昨年のグランプリホースのドリームジャーニーと、春の天皇賞馬のジャガーメイルを破っており、現役最強馬といっても過言ではないでしょう。今後はそれを証明するような、さらに強い走りを見せてくれることを期待したいと思います。



ブエナビスタ

2010年05月09日

次走が気になるレコード勝ち ~NHKマイルC

NHKマイルCは、ダノンシャンティが1.31.4という驚異的なレコードで優勝するという結果に終わりました。
戦前はダノンシャンティとサンライズプリンスの2頭が人気を分け合う形となっていましたが、マイルでの持ちタイムという面から、適性はサンライズプリンスのほうが上ではないかという声もありました。実際にダノンシャンティは4戦すべてスローペースを好位あるいは中団から差す競馬しか経験しておらず、またすべて芝1800mのレースということで、スピード決着への不安があったのは仕方ないでしょう。

レースは予想通り快速馬のエーシンダックマンがハイペースで逃げ、先行脚質のサンライズプリンスはそれを2,3番手で追走。対するダノンシャンティはそれを予想していたのか、いつもより後ろの後方から3番手でレースを進めます。
直線に入ると、サンライズプリンスは押し出されるように先頭に立ち、ダノンシャンティは外に出して猛然と追い込んできます。サンライズプリンスは懸命に粘るものの、残り100mでまずは先行集団とは差をあけて好位を追走していたダイワバーバリアンに交わされ、さらに外から33.5という鋭い末脚で追い込んできたダノンシャンティにも一気に交わされます。
ダノンシャンティはそのままダイワバーバリアンも交わして先頭に立ち、1着でゴール。サンライズプリンスはゴール直前でリルダヴァルにも交わされて4着に終わりました。

ダノンシャンティの勝因、サンライズプリンスの敗因は展開にあったことは明らかでしょう。エーシンダックマンが作った600m33.4というハイペースを直後で追走したサンライズプリンスは、さすがに余力がなくなりました。対するダノンシャンティは後方から上がり33.5で一気に差しきっています。この2頭の差は0.5秒もありましたが、もっとスローで流れていれば、ここまでの差はつかなかったと思います。

この1.31.4というタイムは、東京の芝1600mのレコード1.32.0はもちろん、2001年の京成杯オータムHで記録されたゼンノエルシドの1.31.5という日本レコードも更新するものです。それを3歳の5月に出すのだから、相当なスピード能力の持ち主であることは疑いないでしょう。
ただしダノンシャンティの最大目標は、3週間後に行われる日本ダービーです。そこへの影響がどうなのかが、とても気になるところではないでしょうか。

従来の日本レコードをもっていたゼンノエルシドの場合、4歳時の2001.9.9に休み明け2戦目で京成杯AHを1.31.5のレコードで勝ち、中2週で臨んだスプリンターズSでは、1番人気で12頭立ての10着(0.5秒差)に大敗しています。
ただしこれはゼンノエルシドにとって初めてのスプリント戦であり、必ずしもレコードの反動とはいえないかもしれません。現に、それから1ヶ月半後のマイルCSではしっかり勝利を収めています。

ただダノンシャンティの場合、3歳春というまだ体ができきっていない時期の激走であり、より負担が大きいのではという心配もあります。
しかし松田国師や安藤勝Jの発言を見る限り、そのあたりの心配はまったくしていないようなので、意外と平気なのかもしれません。もちろん今後の動向を見守る必要があると思いますが、本当に疲れが出た場合はおそらく回避するでしょうから、出走してきた場合は、大丈夫と信頼するしかないでしょう。
なんといっても、身近で見ているプロの判断ですから。

2010年05月02日

ジャガーメイル見事な騎乗でした ~天皇賞(春)

今年の天皇賞(春)は、ウィリアムズ騎手騎乗の2番人気ジャガーメイルが、見事な差し切り勝ちをおさめました。
レースは予想通りミッキーペトラが逃げ、意外にもマイネルキッツが2番手を進んで、フォゲッタブルやジャガーメイルは中団。淡々とした流れから、3コーナー過ぎでメイショウドンタクが動いて先頭に並びかけ、さらにマイネルキッツが4コーナー手前で早めに追い出して先頭に立ち、直線は後続を突き放します。
その後ろで馬なりで4コーナーを回ったジャガーメイルは、少し遅れて追い出し、先行して粘りこみを図るマイネルキッツを懸命に追います。

ジャガーメイルというと、いつも重賞でいい脚を使って上位にはくるのに、なぜか勝ちきれないというレースが多い印象があります。しかし今日はジリジリと差をつめると、ゴール直前で差しきり、差し返そうとするマイネルキッツを抑えて、見事に重賞初勝利をG1で飾りました。
考えてみれば、前走の京都記念ではブエナビスタと競り合いに持ち込み、交わせなかったとはいえ、1/2馬身差の2着に好走。さらにグランプリ2勝のドリームジャーニーには、2kg差あるとはいえ完勝しています。ということは、いつG1を勝ってもおかしくないぐらいの力はつけていたともいえるのです。

しかし勝ったのは馬の力だけではなく、その特徴を冷静に見抜いた、初騎乗のウィリアムズ騎手の腕も大きかったと思います。
マイネルキッツの松岡騎手は、スローを見越して、瞬発力勝負では不利になると思い、先行策をとったのではないでしょうか。スタミナには自信があるので、4コーナー手前から追い出してロングスパートをかけ、逃げ込む作戦に出たのだと思います。
それに対してスタミナ+切れというジャガーメイルの特徴を活かすために、ウィリアムズ騎手は4コーナーでも追い出しを我慢し、直線に入ってから追い出しました。

マイネルキッツも34.2で上がっており、決してバテているわけではありませんが、ジャガーメイルに33.7で上がられては、相手が強かったというしかないと思います。そして脚の使いどころをうまく引き出したウィリアムズ騎手の見事な騎乗も、大きく勝利に貢献したのではないでしょうか。

これでJRAのG1は今年5戦が終わって、なんと関東馬が3勝(うち堀厩舎が2勝)と勝ち越しています。オークス、ダービーにも有力な関東馬がスタンバイしており、東西の争いも目が離せなくなってきました。

ペルーサの強さに唖然としました ~青葉賞

しかし強かったです。青葉賞のペルーサ。
若葉Sの勝ち方がなかなかよかったし、そこで下したヒルノダムールが皐月賞で2着ということもあり、ペルーサが青葉賞で人気になるのは、当然予想されました。そこでダービーに備えて、どんなレースをするのか見に行ったのですが、ペルーサの強さだけが際立つ結果になりました。

パドックで見た瞬間に、他の17頭とは馬体も気配も違って、勝つのはこの馬しかいないだろうと思いました。踏み込みも深く、落ちついていながら気合乗りもよく、G1馬と条件馬ぐらいの違いを感じたのです。
レースでは、ペルーサは好スタートを切りながら中団の内まで下げて、道中は折り合って落ちついた走り。同厩のミッションモードが引っ張る流れは、1000mが1分ちょうどと落ちついた流れです。
4コーナーでやや外目に出し、前があいて追い出すと、あっという間に抜け出して、あとは後続を離す一方。最後は手綱を抑える余裕で、4馬身差の完勝でした。

タイムは過去10年では2004年の2.24.1に次ぐ2.24.3で、上がりもただ1頭34秒を切って33.8。父のゼンノロブロイの勝ちタイムが2.26.3なので、2秒も早いことになります。

横で見ていた人が、ダービーはフェラーリピサを蹴っ飛ばして、この馬から勝負だと興奮して話していましたが、まさにそう言いたくなるような、ある意味ショッキングなレースでした。

青葉賞はダービーと同じ距離でありながら、過去1頭もダービー馬を輩出していないのは有名な話です。シンボリクリスエスもゼンノロブロイも、ダービーでは2着に敗れました。しかしついに今年はそのジンクスが破られるのではないかと期待したくなるような勝ち方でした。

皐月賞上位組とペルーサ、そしてNHKマイルCの結果次第ですが、ダノンシャンティなどがダービーでは人気になるでしょう。青葉賞の結果で、ダービーがますますおもしろくなったのは確かだと思います。