日本人女性騎手による初のJRA G1制覇 ~オークス

正直言って予感はありました。
忘れな草賞におけるジュウリョクピエロの4コーナーから直線にかけて上がっていく脚は、まさに父オルフェーヴルを彷彿とさせるものでしたし、OP特別ということを割り引いても、抜け出す脚は本物だということを感じさせました。
また1週前の調教は素晴らしい走りで、当週の最終追い切りも今村騎手が乗って、うまい具合に仕上げたように見えたのです。

そして今日競馬場で過去のオークスのエピソードを紹介するビデオが流れたのですが、そこで取り上げられていたのは2013年の勝ち馬メイショウマンボでした。
フィリーズRを勝って臨んだ桜花賞では4番人気で10着と大敗したメイショウマンボですが、オークスに行くことを進言したのは、鞍上の武幸四郎騎手(当時)でした。そして9番人気になったメイショウマンボを見事に復活させて勝利に導いたのです。

その調教をしていたのが、武幸四郎騎手と同期で騎手デビューしたものの、引退して調教助手となっていた、今村聖奈騎手の父である今村康成氏だったのです。今村騎手もインタビューで、もっとも印象的な過去のオークス馬としてメイショウマンボをあげており、つながりを感じさせました。

ところがパドックで見たジュウリョクピエロは、かなり汗をかいてテンションが高く、小脚を使って入れ込んでいる様子。寺島調教師もレース前のテンションがカギとコメントしており、正直不安を感じさせる状態でした。
レース後のインタビューで今村騎手も同様の発言をしており、果たしてレースで折り合えるのかが、2400mという距離を考えても一番の不安だったのです。

ジュウリョクピエロ 2026年5月24日 東京競馬場

そしてそれ以前にネットのコメントなどで多く言われていたのが、今村騎手の東京競馬場での経験の少なさでした。
2025年にしばらく美浦を拠点に騎乗していたため、この年は騎乗する機会が年間8日ほどあったものの、レース数は多くなく、成績は2着が最高で未勝利。さらに芝2400mは一度も騎乗経験がなかったのです。
その時の人脈が幸いしたのか、今日は何度か朝から騎乗する機会があり、5Rと9Rでは芝1800mのレースに乗っていました。本人もインタビューで仕掛けどころを考えながら前のレースに乗っていたと言っており、その経験は役に立ったと思います。特に9Rは武幸厩舎の馬に乗っており、ここでも縁を感じました。

レースでは五分のスタートを切ると、下げて後方の外を追走します。トリニティが逃げて作ったペースは1000m1.02.2のスローで、1番人気のスターアニスは掛かるのを懸命に松山騎手が抑えており、リアライズルミナスの津村騎手はこらえきれないように向こう正面で一気に後方から2番手に進出しましたが、ジュウリョクピエロは入れ込み気味だったのがウソのように、後方から4,5番手をきれいに折り合って進みます。
4コーナーでも後方から4番手でしたが、そこから今村騎手は外に出さず、馬群の中に進路を取ります。残り400mから追い出すと、ばらけた馬の間を抜けて一気に前に迫ります。残り200mですぐ前にいたドリームコアの内を突くと、ドリームコアと馬体を合わせて追い比べに。内で先頭に立っていたリアライズルミナスを2頭でかわすと、ゴール前でドリームコアをクビ差かわして、先頭でゴールに飛び込みました。

馬群の中を伸びるジュウリョクピエロ(16番) 2026年5月24日 東京競馬場

今村騎手は2022年に、テイエムスパーダでCBC賞を逃げ切って初重賞制覇を果たしていましたが、重賞2勝目がG1のしかもクラシックとなりました。日本人の女性騎手としてJRA G1勝利は史上初のことで、女性騎手としての平地G1制覇は、昨年のフェブラリーSを勝ったR.キング騎手に次ぐ2人目となります。
ネットでは、騎手が東京の芝で勝ったことがないという理由から、来るはずがないという論調もいくつか見られました。しかし1988年のオークスをコスモドリームで勝った熊沢重文騎手は、当時3年目で東京競馬場は初騎乗で、行き方も知らなかったというエピソードを読んだことがあります。過去を紐解けばそういう前例もあるわけで、根拠のないそういった声を、勝つという事実によって覆してみせました。
また寺島調教師もG1は初勝利。厩舎のチーム力によって、クラシック制覇という快挙を引き寄せました。

ジュウリョクピエロと今村聖奈騎手 2026年5月24日 東京競馬場
インタビューに答える今村聖奈騎手 2026年5月24日 東京競馬場

父オルフェーヴルは、初年度産駒からラッキーライラック、エポカドーロと2頭のJRA平地G1勝ちの産駒を生み出し、さらに2年目の産駒からはBCディスタフを勝ったマルシュロレーヌを出したものの、その後は地方で東京大賞典や川崎記念を勝ったウシュバテソーロが目立つぐらいで、先細り感があったことは否めません。
しかし久々の芝G1馬を生み出しました。しかも毛色や流星も父そっくりで、レースぶりも父を彷彿とさせるもの。ところが普段は穏やかな性格ということで、レース前こそテンションが上がるものの、レース中は鞍上の指示に素直に従うところなど、父とはかなり違う印象もあります。

まだ芝では底を見せていないこともあり、今後に向けて夢が広がります。また目の覚めるような末脚で、大きなレースを今村騎手とともに勝つところを、是非見せてほしいと思います。

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