ヴィクトリアMのイメージといえば、なんといっても荒れるということでしょう。
2年前の14番人気テンハッピーローズの1着も驚かされましたが、極め付きは2015年でしょう。5番人気の6歳馬ストレイトガールが勝ち、2着は12番人気ケイアイエレガントで、3着はしんがり18番人気のミナレット。3連単は2,000万円超えと大爆発しました。
こうなると普段本命党の人でも、なんとか穴馬券を当てたいと躍起になりますし、穴党の人はいかに盲点となるような意外な馬券を推奨するかに懸命になります。
しかし過去の成績をよく見てみると、必ずしも毎年大荒れとなっているわけではないことがわかります。過去10年で見ても、1番人気は半分の5回は連対していますし、5番人気以内の2頭が1,2着となったことも5回あります。
ただし2番人気:0・0・1・9、3番人気:0・2・0・8と上位人気馬の信頼性が低いことが、荒れるイメージを助長しているようにも思えます。
実際に2番人気不振のジンクスはかなり強力で、過去20回の歴史の中で2番人気が連対したのは、第1回の2006年ダンスインザムード(1着)と2011年アパパネ(1着)の2回だけ。ただでさえ荒れるG1で、2番人気を買う必要がなければかなり助かるわけで、個人的にもこのジンクスは利用してきました。
今年2番人気になったのは、昨年フローラSとオークスを連勝したカムニャック。秋はローズSも快勝しますが、1番人気で臨んだ秋華賞は直前にテンションが上がったこともあったのか、16着と謎の大敗を喫してしまいます。
その後、今年初戦の阪神牝Sは4番人気と人気を落とすものの、エンブロイダリーのクビ差2着と好走。復活を印象付けましたが、秋華賞大敗のトラウマはあり、危険な人気馬のイメージは個人的にはぬぐえませんでした。
ただしパドックで見たカムニャックはとても落ち着いており、入れ込む素振りはまったくありません。気性面の不安がない以上、力があることは間違いないので、買い目には入れざるを得ないというのが結論になりました。

そして1番人気は昨年の桜花賞、秋華賞の2冠馬エンブロイダリー。東京マイルはクイーンCで圧勝しており、昨年末の香港こそ11着と大敗したものの、今年初戦の阪神牝Sは危なげなく勝利を飾り、ほぼ死角がない状況。
調教の動きも抜群で、パドックでもはつらつとした歩様で落ち着いて歩いており、鞍上のルメール騎手もあわせて1番人気にふさわしい存在だとあらためて感じさせられました。

こうなると3頭目の馬に荒れることを期待したくなります。伏兵はかなり多く、どの馬が3着内に入ってもおかしくないように思えてきます。
そんな中で3番人気となったのは、昨年の2着馬クイーンズウォークでした。3歳牝馬3冠レースこそオークス4着が最高と、あまり活躍できなかったのですが、前哨戦のクイーンCとローズSは快勝しており、4歳時は牡馬相手に金鯱賞を勝つと、ヴィクトリアMで追い込んでアスコリピチェーノの2着と好走。ヴィクトリアMはリピーターが多いこともあり、必然的に注目せざるを得ない存在でした。
また今年の金鯱賞も牡馬相手に1番人気となり、1/2馬身差3着と好走。調子も良さそうだったのです。

レースは逃げると思われたアイサンサンが出遅れ、武豊騎手鞍上のエリカエクスプレスがマイペースで逃げます。600mは34.6と例年に比べるとやや遅めのペース。それを川田騎手のカムニャックとルメール騎手のエンブロイダリーは中団前方の同じ位置で追走し、西村淳騎手のクイーンズウォークは2頭の直後につけます。
4コーナー手前で先にエンブロイダリーが動いて外に出し、直線はそれをカムニャック、クイーンズウォークが追う形に。マイペースで逃げたエリカエクスプレスはしぶとく粘りますが、外から末脚を伸ばすエンブロイダリーは残り100mでエリカエクスプレスを捉えて先頭。後続を寄せ付けず、追ってきたカムニャックに1 1/4馬身差をつけて1着でゴールしました。
2着はカムニャックで、そこから1 1/2馬身差の3着争いは、エリカエクスプレスにクイーンズウォークが並びかけたところがゴール。長い写真判定の結果、クイーンズウォークがかわしていました。

結果として今年のヴィクトリアMは1~3番人気が人気順に入るという結果になり、固い決着は逆にそれがニュースになるほど驚きをもって受け取られました。
これはレース史上初めてのことで、1~3番人気が3着以内を占めたのも2011年以来2度目のこと。ちなみにこの時は、1着アパパネ(2番人気)、2着ブエナビスタ(1番人気)、3着レディアルバローザ(3番人気)でした。
ただ配当はこの時の方が安く、馬連230円、3連単3,620年は、ヴィクトリアMの最低配当となっています(今年は馬連570円、3連単3,670円)。
ではなぜ今年はこんな固い決着になったのでしょう。それはやはり上位2頭の力が抜けていたということが大きいと思います。
それは着差を見るとわかります。1着エンブロイダリーと2着カムニャックの差は1 1/4馬身(0.2秒)で、カムニャックと3着クイーンズウォークの差は1 1/2馬身(0.3秒)。それに対して4着以下の馬は次位の馬との差が多くても3/4馬身で、4着と18着のタイム差が0.7秒と少ないのです。
おそらく何度やっても1,2着は変わらないでしょうし、もしアイサンサンが逃げてペースが上がっていたら、クイーンズウォークはもっと楽に3着が確保できていたかもしれません。
勝ったエンブロイダリーはこれでG1 3勝目。過去の2勝よりも余裕をもった勝利で、レベルが違う強さを見せつけられた印象です。マイルにおいては牝馬はもちろん、牡馬に混ざってもかなり強い実力の持ち主といえるでしょう。
アーモンドアイやグランアレグリアに勝るとも劣らないような存在になりつつあり、今後の活躍が楽しみです。安田記念で牡馬に挑戦するのか、さらに秋は優先出走権を獲得したBCフィリー&メアターフに行くのか、夢は広がります。