スローペースを読み切った武豊騎手のファインプレー ~安田記念

メンバーが確定した時点で、スローペースになるだろうということは、だいたい想像がついていました。先行脚質の馬が少なく、逃げると思われたワールズエンドは前走の京王杯SCをスローで逃げ切っており、ペースがあがる要素がなかったのです。
また過去10年の成績を見ても、逃げ馬が3回連にからんでいるように、必ずしも先行不利とはいえないのです。

しかし長い東京の直線を考えると、どうしても差し馬に目が行ってしまうのは仕方ないでしょう。また過去10年の連対馬を見ても、逃げ先行6連対に対して、差し追込み14連対と、数の上では後ろから来る馬が圧倒的に強いのです。

しかし今年の安田記念は思いがけない結果となりました。

逃げたのは予想通りワールズエンド。スタートは今一つでしたが、津村騎手は押してハナを取りに行きます。それに続いたのが、おなじキャロットの勝負服を着た武豊騎手のシックスペンス。さらにセイウンハーデス、レーベンスティール、パンジャタワーなどが続きます。それに対して1番人気のガイアフォースの横山武騎手は中団につけ、さらに2番人気のルメール騎手のトロヴァトーレは後方から2,3番手。
最初の600m通過は34.5と、昨年よりは速いもののやや遅めのペース。ワールズエンドは離し気味に逃げて、かなり縦長のまま4コーナーを回って直線に入ります。

直線は各馬大きく内をあけて、馬場の中央から外目に進路を取ります。逃げるワールズエンドをマークしていたシックスペンスは、直線は外に出して前を追いますが、スローだったこともあり、なかなか差がつまりません。
残り200mの時点でも逃げるワールズエンドに1 1/2馬身差でシックスペンスが続き、さらに1/2馬身差でセイウンハーデスが3番手。しかしその2頭がじりじりと差を詰めると、残り50mでシックスペンスがワールズエンドに並び、さらにクビ差でセイウンハーデスが続く状況。
最後はゴール直前でシックスペンスがクビ差ワールズエンドの前に出て1着でゴール。最後に外から差してきたガイアフォースがワールズエンドに並び、長い写真判定になるも、結局2着は2頭の同着となりました。

前を追うシックスペンス(黒帽) 2026年6月7日 東京競馬場

シックスペンスは昨年の中山記念を中団から差して勝つと、そこまで6戦してダービー以外は勝って5勝。しかもスプリングS、毎日王冠、中山記念と芝1800mのG2を3勝と、中距離では負けなしで一躍スターダムに。
当然のように大阪杯では1番人気に推されたものの先行退で7着。さらに3番人気の安田記念でも12着と大敗してしまいます。そこからダートに活路を求め、南部杯で2着に好走したことからしばらくダートを使うも、チャンピオンズC11着、フェブラリーS9着と結果を出せず、迷走状態が続いたのです。
その後、今年の春は芝に戻してマイラーズCを使うも7着に敗退。そんな状況なので、安田記念で21.6倍の8番人気となってしまったのは仕方ないでしょう。

シックスペンス 2026年6月7日 東京競馬場

しかしそんなシックスペンスに幸運が訪れます。アドマイヤズームで安田記念に参戦予定だった武豊騎手が、アドマイヤズームの回避(爪を痛めたことによる)によって空いたため、急遽コンビを組むことになったのです。
最近では以前ほど勝ち鞍をあげられないとはいえ、その技術や展開を読む力は衰えていません。

レース後のインタビューでも、前に行くことは最初から決めていたと言っていましたが、メンバーを見てスローが濃厚なことや、馬場状態からそれほど切れる上りが使えないことなども当然読んでいたのでしょう。
昨年の宝塚記念や今年の大阪杯を見ても、武豊騎手が逃げると、その的確なペース判断や一種のオーラのようなものによって、他の騎手が競りかけていかないこともあり、残る場面がかなり多くあるように思います。それは2番手から進めても同様なのでしょう。今日のレースでも、きっちり前を差し切るとともに後ろからの馬は抑えて、人気の落ちた実力馬を、見事に返り咲かせました。
こういう場面を見ると、あらためて武豊騎手は日本競馬界の至宝だと感じさせられます。

ちなみに8番人気でのG1制覇は、昨年の宝塚記念での7番人気を下回り、武豊史上最低人気での勝利とのこと。最近は人気馬への騎乗機会が少なくなったとはいえ、それに腐ることなく地道に努力していることが報われたといえるのかもしれません。

武豊騎手とシックスペンス 2026年6月7日 東京競馬場

そして今日の安田記念で、もう1頭の主役だったのは1番人気に推されたガイアフォースでした。
昨年は安田記念とマイルCSでともにジャンタルマンタルの2着。昨年の富士Sでジャンタルマンタルにようやく勝ち、その宿敵不在の今回は、G1制覇の大きなチャンスだったのです。

ガイアフォース 2026年6月7日 東京競馬場

横山武騎手に導かれたガイアフォースは、中団外から直線は懸命に脚を伸ばし、最後は一気に先頭に迫るも、またもやクビ差およばず2着(同着)。これで2年前のフェブラリーSとあわせて、G1では4度目の2着となってしまいました。
しかし1,2,4着の3頭がすべて3番手以内で進めた先行馬だったにもかかわらず、唯一中団から最速の上り33.0で差してきており、もっとも強い競馬をしたともいえるでしょう。それでも2着に終わったということは、運がないとしか言いようがありません。
すでに7歳ということでG1制覇のチャンスは残り少ないですが、なんとかマイルCSあたりでの戴冠を願いたいと思います。

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