今年も復活劇となりました ~有馬記念

昨年の有馬記念の際は「やはり復活劇がよく似合う?」と題したのですが、今年も復活劇となりました。
昨年有馬記念での復活として挙げたのは、オグリキャップ(1990年)、トウカイテイオー(1993年)、グラスワンダー(1998年)、ジェンティルドンナ(2014年)、そしてドウデュース(2023年)でしたが、今年の主役となったレガレイラは少し違ったパターンでした。2歳戦以来の復活という意味ではグラスワンダーに似ていますが、グラスワンダーは骨折による離脱と不振からの復活だったのに対して、レガレイラはずっとレースに出続けて期待されながらも、結果が出せなかったのです。

レガレイラの最初のG1勝利となった昨年のホープフルSは、ある意味意外なものでした。
函館芝1800mの新馬戦で、のちに札幌2歳Sを勝つセットアップを差し切って勝ったレガレイラは、2戦目のアイビーSで1番人気に推されながら、超スローペースで前を捉えられず、32.7と究極の末脚で追い上げるものの3着に敗れてしまいます。
それでもホープフルSで11/14という抽選を潜り抜けたレガレイラは、G1昇格以降1度も馬券圏内になったことがない牝馬ながら、1番人気(3.1倍)に推されます。もちろんルメール騎手騎乗ということもありましたが、やはりそのポテンシャルの高さが期待値をあげたのでしょう。
そしてレースでは、その期待に応えて後方から大外を回し、鋭い末脚でシンエンペラーを交わして、最後は抑える余裕で3/4馬身差1着。1番人気に応える堂々とした強い勝ち方でした。

その結果を受けて陣営は牝馬クラシックではなく、牡馬のクラシック路線を歩ませることを表明します。同厩舎で同馬主かつ主戦騎手が同じルメール騎手の牝馬チェルヴィニアと、レースを使い分けるという面もあったのでしょうが、距離が伸びて良いというレガレイラの特性を活かすという意図もあったようです。また馬主サンデーレーシングに、クラシックを狙える有力牡馬がいなかったということも、その理由の1つだったと言われています。

ホープフルSの強い勝ち方を受けて、同じ舞台で行われるクラシック第1弾の皐月賞では、3.7倍の1番人気に支持されます。しかしドバイで落馬負傷してルメール騎手が乗れなくなったことも影響したのか、後方から追いこむものの、2 3/4馬身差6着に敗れます。
続く日本ダービーではルメール騎手が復帰したこともあり、4.5倍の2番人気と再び高い支持を得ますが、4 1/2馬身差5着まで。

秋になって牝馬戦に出走するものの、確勝と思われたローズS(1番人気 1.7倍)で後方から1番の上りで追い込むも届かず2 1/4馬身差5着。続くエリザベス女王杯(1番人気 1.9倍)では前がふさがる不利もあり3馬身差5着と、人気を裏切るレースが続きます。

そして有馬記念に出走するのですが、ルメール騎手は菊花賞をともに勝ったアーバンシックを選び、レガレイラは新たに戸崎騎手とコンビを組むことになります。評価は落ちて、10.9倍の5番人気と自身のキャリアでは初の2桁オッズとなりました。
個人的にもどうかなと思っていたのですが、パドックでは伸びやかな歩様でトモは力強く踏み込みも深くとても良く見えました。参考レースで流れた昨年のホープフルSの強い勝ち方も思い出し、連下には押さえが必要だとは思ったのですが。

レースでは戸崎騎手は促して好位の中央につけます。逃げたダノンデサイルが作るペースは、1000m1.02.9とかなりのスロー。それをレガレイラは折り合って淡々と進みます。
3コーナーからペースがあがり、並んでいたスターズオンアースが失速していく中、絶好の手応えで4コーナーで外目に出すと、外からきたシャフリヤールと馬体を合わせて、前を行くダノンデサイル、ベラジオオペラを追います。
残り50mで2頭でダノンデサイルを交わして先頭に立つと、並んだままマッチレースに。そのまま並んでゴールするも、写真判定の結果、ハナ差でレガレイラが勝ちました。
昨年のホープフルS以来、約1年ぶり、今年5戦目でようやく復活の勝利となったのです。

春のクラシックで負け続けた時は、素直に牝馬クラシックに行くべきだったのではと言われ、秋に牝馬相手でも結果が出なかった時は、やはりそこまでの馬ではなかったのではと言われたのですが、ドウデュース以外はほぼ一線級の古馬がそろったレースを制して、それらの声を見返すことができました。
3歳牝馬の有馬記念勝利は、スターロツチ以来64年ぶりの快挙ということで、正直得意な舞台がわかりにくいのですが、来年に向けて大いに期待が持てる結果だったと思います。

そしてハナ差2着のシャフリヤールも復活と言えるでしょう。海外遠征が多く、今年も3月のドバイシーマクラシック2着、前走ブリーダーズカップターフ3着と結果を残してきたのですが、国内での連対は2年前のジャパンC2着以来。もし勝っていれば3年前の日本ダービー以来の快挙でした。
近年は連対例のない6歳馬かつ大外16番ということで、実績馬ながら30.1倍の10番人気と低評価だったのですが、それを見返すような好走でした。
レース前は陣営から逃げ宣言も出ていたのですが、道中は後方の外を進み、3コーナーから追い上げて長く脚を使い、あと一歩のところまで持ってきました。海外も含めて何度も乗っているC.デムーロ騎手が、特徴を生かしてうまく乗ったと思いますが、調教がとても良く見えたので、体調もあがっていたのでしょう。
それだけにハナ差2着は、陣営にとっても悔しい結果だったと思います。

最後に、ファン投票で史上最高の478,415票を獲得して、圧倒的な1番人気に支持されたであろうドウデュースの出走取り消しは、とても残念でした。史上3頭目の秋古馬3冠は確実と思わせる、天皇賞(秋)、ジャパンCのパフォーマンスだったので、万全な形での引退レースを見たかったというのが、多くの人の想いだったと思います。
この秋2戦と同じくスローの展開だったので、もし出走していれば、馬体を合わせて先頭争いをする2頭を、軽々と外から差してくるドウデュースの姿が見られたのではないでしょうか。
その夢は、4年後に現れるであろう産駒たちに期待したいと思います。

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