札幌記念の結果を受けて

今年も注目の夏のスーパーG2札幌記念が行われました。15頭中13頭が重賞勝ち馬で、うち3頭がG1勝ちと相変わらずの充実したメンバー構成。秋のG1シーズンに向けて見逃せないレースとなりました。

1番人気は連覇を狙うジャックドール。
今年は大阪杯を逃げ切ってG1初制覇を飾り、前走安田記念こそ初めてのマイル戦で5着に敗れたものの、得意の2000mに戻れば実績は上位。懸念材料としては、国分兄弟が騎乗する2頭の逃げ馬ユニコーンライオンとアフリカンゴールドの存在と、エアグルーヴ以外に連覇した馬がいないというジンクスがありましたが、ベテラン武豊騎手なら何とかしてくれるのではという期待感も後押ししたように思われます。

2番人気は、5歳馬ながら今年の金鯱賞で重賞初制覇を果たし、前走香港のクイーンエリザベス2世Cではロマンチックウォリアーの2着に好走した、遅咲きのディープインパクト産駒プログノーシス。
キャリア9戦と使っていないことと、着外わずか1の安定感、さらに鋭い末脚が魅力ですが、追い込み脚質ゆえに小回りで直線が短く、力のいる洋芝の札幌コースがどうかという心配もありました。

さらに昨年の天皇賞(秋)3着、今年のドバイターフ2着と勝てないまでも堅実なダノンベルーガ、近走は大敗続きもチャレンジC連覇でルメール騎手騎乗のオルフェーヴル産駒ソーヴァリアント、2年前のダービー馬で昨年のドバイシーマC勝ちなど堅実なシャフリヤールまでが単勝1桁人気。
この中から勝ち馬が出る可能性が高いと見ていました。

レースは、ジャックドールが好スタートを切るも、ユニコーンライオン、アフリカンゴールドが押して前に行き、さらにウインマリリンもそれを追って、3頭が縦に並んで馬群を離していきます。ジャックドールはそこから4馬身ほど離れた4番手を進みますが、武豊騎手は行きたがるのを懸命に抑えている感じ。そしてプログノーシスは後方にいたものの、向こう正面では内を通ってするすると上がっていき、先行集団に取り付きます。
1000mは1.00.4と、逃げ馬がそろった割には落ち着いたペース。ところが逃げていたユニコーンライオン、アフリカンゴールド、ウインマリリンは3コーナー過ぎに後続につかまり、早めに先頭に立ったのが、内から押して出た唯一の3歳馬トップナイフ。さらにプログノーシスも押して外から2番手に上がっていきます。ジャックドールも懸命に押すものの反応一息で後れを取ります。

懸命に押しながらトップナイフが先頭で4コーナーを回るものの、かなり外を回したプログノーシスが距離損も何のその、直線は離れた外からトップナイフを交わしにかかります。後続はソーヴァリアント、ダノンベルーガが3,4番手も少しずつ離され、その後ろのジャックドールも手応えが怪しくなります。
馬場中央を一気に伸びたプログノーシスが、最後まで末脚を伸ばして4馬身差の圧勝でゴール。
2着は内でトップナイフが粘り、3馬身差で3着ソーヴァリアント、さらに3/4馬身差で4着ダノンベルーガ。ジャックドールは6着に終わりました。

強く印象に残ったのは、やはりプログノーシスの強さでしょう。
3歳の毎日杯で3着に敗れてクラシック戦線をあきらめると、1勝Cから3勝Cまで間隔をあけながら3連勝。4歳秋はやや足踏みするも、5歳になってようやく才能が開花。札幌記念では最初は後方を進むも、道中はどんどんポジションをあげていき、先団に取り付くと最速の上りで後続を突き放すという、ちょっとレベルの違うレースぶりを見せてくれました。
その上りは36.0と、やや重の割には時計がかかっていますが、それを勝ちきるスタミナと精神力も兼ね備え、良馬場での末脚の切れも持っており、今後どのようなレースを見せてくれるか、とても楽しみな存在と言えるでしょう。
1800~2000mで実績を残していることもあり、当面の目標は天皇賞(秋)ということになります。イクイノックスや3歳勢が出てくるかはわかりませんが、間違いなく主役の1頭になるでしょう。ジャックドールやソーヴァリアント、ダノンベルーガなども巻き返しを狙ってくるでしょうから、楽しみな1戦になりそうです。

そして個人的に注目したのは、2着に粘ったトップナイフでした。
昨年のホープフルSで、勝ったと思ったところをドゥラエレーデに差されて痛恨の2着に終わった後、弥生賞で1番人気に支持されたのですが、そこでのパドックの様子がとても良く見えたのです。落ち着いてゆったりと歩いており、トモの踏み込みも深く理想的な姿。
しかしレースでは内でやや掛かるのを抑えているうちにポジションが悪くなり、直線は内ラチ沿いから懸命に脚を伸ばすも、先に抜け出していたタスティエーラに及ばず1馬身差の2着。ところが3着馬ワンダイレクトが交わす勢いで伸びてくると、もうひと伸びしたゴール前の姿に、勝負根性のすごさを見た気がしたのです。

そこで皐月賞でも日本ダービーでも、人気はないものの連下として買い続けました。ところがどちらも後方から進めると、直線では伸び脚を見せたものの、7着、14着と大敗。残念ながら期待には応えてくれず、買い被りだったかと思わされました。
しかし今回、主戦の横山典騎手がマテンロウレオに騎乗するため、代打を務めた息子の横山和騎手は、好位から3コーナー過ぎに先頭に立つという大胆な騎乗で、トップナイフの長所である息の長い末脚と勝負根性を活かすレースをして、結果を残すことができたのです。
9番人気という人気薄ゆえにできたという面もあるでしょうが、これまでのレースを見て分析した結果の戦術ということで、見事だったと思います。
またパドックの様子も相変わらずよく見せており、一段成長した感じも好感を持てました。

次走は菊花賞を目指すようですが、個人的には小回りの中距離がベストの印象を持っているので、ぜひ適鞍で重賞での2着4回という殻を破って、初重賞制覇を決めてもらいたいと思います。

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