フェブラリーSに感じる危機感

今年のフェブラリーSは24頭が登録しており、その中には昨年のチャンピオンズCを勝ったテーオーケインズ、BCディスタフを勝ったマルシュロレーヌの名前もありました。しかし2頭とも来週(2/26)行われるサウジカップに向かうため回避。1着賞金1,000万ドル(約11億5千万円)という世界最高の賞金を考えると、1億2千万円のフェブラリーSに魅力を感じないのは仕方ないでしょう。
さらにチャンピオンズC2着で川崎記念を勝ったチュウワウィザードも含めた3頭は、3/26に行われるドバイワールドカップの招待を受諾。ダートの有力馬にとってビッグマネーを稼ぐチャンスのある海外ビッグレースが行われる上半期は、国内に目が向かない傾向がますます強まっていきそうです。

こうなるとつらい立場に立たされるのがフェブラリーSです。上半期のダート最強馬決定戦のはずが、なんとも締まらない格好になってしまいつつあります。
日本グレード格付け管理委員会が定める、国際グレード昇格条件というのがあって、3歳上(牡牝混合)のG1では、過去3年間の最終レースレーティング(FRR)の平均値および直近年のFRRが115以上ということが求められます。そして過去2年間のFRRが昇格要件に定める数値を3ポンドを超えて下回った場合に警告が出され、その翌年度にも3ポンドを超えて下回ると審議が行われ、降格になることもあるのです。

このFRRについて、JRAの古馬牡馬混合G1を見てみると、過去3年平均で唯一115を下回っているのがフェブラリーSでその数値は112.42。かろうじて警告を出されるポイントは上回っているものの、2019年には111.75と115を3ポイント以上下回っており、かなり危ない状況なのです。
この傾向に、2020年から始まったサウジカップが拍車をかけることは間違いないでしょう。

そして今年出走したメンバーを見てみると、昨年のレーティングで最高なのが115のアルクトス、カフェファラオ、ソダシ、ミューチャリーの4頭。あとはすべて114以下なので、平均が115を超えることはありません。
回避したテーオーケインズが120、マルシュロレーヌが116だったので、関係者だけでなく、強い馬同士のレースを期待しているファンにとっても残念なことでした。

そんなどんぐりの背比べ状態の中で、1番人気に支持されたのはレッドルゼル。マイル実績はないものの、1400mは得意で昨年のJBCスプリントは圧勝。昨年のフェブラリーSも4着にきており、東京も得意で充実した今なら距離もこなせるのではと思われたのでしょう。
そして2番人気が昨年の覇者カフェファラオ。しかし昨年勝った後は、かしわ記念5着、芝に挑戦した函館記念9着、チャンピオンズCはかかって11着とまったく結果を残せていません。唯一東京ダートのマイルで3戦3勝というところが評価ポイントでした。
以下、交流重賞連勝中の9歳馬アルクトス、白毛の桜花賞馬でダート血統のソダシ、根岸Sを勝ったもののマイル実績の無いテイエムサウスダン、昨年武蔵野Sを勝ったものの根岸Sは1番人気で9着だったソリストサンダーと6頭が単勝1桁台の混戦模様。

予想に当たって困ったのがカフェファラオの扱いでした。たしかに昨年のレースは強い勝ち方で、東京ダートマイルでの成績の良さは目を引くものの、昨年のチャンピオンズCの負け方を見ると、どうしても疑問を感じざるを得ないのです。
ただ過去の成績を見るとフェブラリーSはリピーターが多いことは間違いなく、それまでの成績が今一つでも、ここで好走する例はいくつも見てきたので、無視するわけにはいきません。

【カフェファラオ】気合乗りよく前進気勢に満ちたパドックでした

そしてレースでは、これまでの不振を吹き飛ばすような見事な走りを見せてくれました。
これまでの主戦だったルメール騎手から乗り替わった福永騎手は、堀調教師から前目につけるように言われたとのことで、向こう正面で先頭に立ち逃げるテイエムサウスダン、それを追走するサンライズホープ、ソダシを見る4番手につけます。
馬なりで4コーナーの外を回ると、直線で前を行くテイエムサウスダン、ソダシを交わして先頭。そのまま後続を引き離し、2 1/2馬身差で連覇を飾りました。2着テイエムサウスダン、3着ソダシも前に行った馬がそのまま残り、脚抜きの良い重馬場ということもあり、レコードタイのスピード決着となりました。

【カフェファラオ】力強く抜け出します
【カフェファラオ】初騎乗の福永騎手もうれしそうでした

カフェファラオのレースぶりは素晴らしく、決してケチをつけるような内容ではなかったのですが、このレースだけが強い馬が活躍する特殊なレースになってしまうことは本意ではありません。
このままでは、いずれフェブラリーSの降格が話題になる危険も十分にあるでしょう。JRAとしても、1着馬にBCクラシックの優先出走権を与えるなど工夫はしているのですが、厳しい状況は続いていくと思われます。

ダートの地位を引き上げるような抜本的な改革を行っていかないと、国内の強いダート馬たちの海外流出は止まらないと思います。なかなかいい対策は思い浮かばないのですが、貴重なダートG1を守る方法を、ファンからも知恵を出して、試行錯誤していくしかないのかもしれません。

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