12月になると2歳G1が続きますが、古馬のレースとは違って2,3戦しかしていない馬たちの中から、勝ち馬をどうやって見つけるのかは、いつも悩まされます。個人的にも、今年の本命馬は阪神JFのナミュール(まさか1番人気になるとは思わなかったのですが)が4着、朝日杯FSのセリフォスが2着、そしてホープフルSのキラーアビリティがようやく1着と、決して褒められたものではなかったものの、あまり大きく外れることはなかったかなという感じでした。
そんな中で、今日のホープフルSで勝ち馬を指名することができたのは、ここまでの各馬のレースをよく見なおした結果だったと思います。やはり参考レースは、その馬の走りだけでなく、周りの馬との関係も良く見る必要があると思うのです。
個人的にはG1を勝つような馬は、それまでのレースの中で、どこか光る部分を見せているはずだと思っています。そして今回の出走馬の中で、それを一番強く感じたのは、萩Sでのキラーアビリティの走りでした。
萩Sは阪神芝1800mで10/30に行われたリステッド競走ですが、キラーアビリティは前走の小倉芝2000m未勝利をレコードタイムで7馬身差をつけて勝っていたことで、1.5倍の1番人気に支持されます。スローペースだったこともあり、先行したキラーアビリティは4コーナー2番手から早めに抜け出します。その時の脚色がちょっと目を見張るような瞬発力で、これはと思わされました。
しかしいったんは抜け出したものの、後ろから差を詰めてきたダノンスコーピオンにゴール直前でクビ差かわされて2着に敗れてしまうのです。とはいえ、そのダノンスコーピオンも朝日杯FSでは、勝ったドウデュースに次ぐ末脚で1馬身差の3着に食い込みました。これでキラーアビリティも力があることを、間接的に証明できたのではと思ったのです。
そう考えた人が多かったのか、キラーアビリティは3.1倍の2番人気。前走で負けている割に意外と人気があって、ちょっと驚きました。
そして今日のレースでは、さらに注目を集めた馬がいました。それが1番人気に支持されたコマンドライン。すでにデビュー前から大物だという評判が立ち、実際に東京芝1600m新馬を3馬身差で勝つと、サウジアラビアRCも早めに抜け出して余裕の1着。来年のクラシック有力候補と騒がれ、その影響もあり人気になったのでしょう。
サウジRCについては、2着のステルナティーアが阪神JFに出ていたので、その時によく見返してみたのですが、実はちょっと疑問を感じさせられました。
このレースでは抜け出したコマンドラインにステルナティーアが詰め寄るも1/2馬身差の2着。これを根拠に、クラシック有力候補のコマンドラインに僅差で敗れたのだから、ステルナティーアも強いという論調が阪神JFの予想において散見されたのです。
ここで注目したのが、サウジRCの3,4着馬でした。3着に入ったスタニングローズは上位2頭を上回る末脚で迫ってきて、ステルナティーアに1/2馬身差という惜敗。また4着ウナギノボリもステルナティーアと同じ上りで、さらに1馬身差でゴール。5着馬は3馬身離れているので、上位4頭は力があると推察されます。
そこでスタニングローズとウナギノボリも、さぞ活躍しているだろうと成績を調べてみたのです。
ところがスタニングローズは次にデイリー杯2歳Sに出走して、先行退で0.5秒差5着。ウナギノボリも同じデイリー杯に出て1.3秒差7着(最下位)。さらに中京芝1600m1勝Cでクビ差2着と、活躍どころか勝ててすらいなかったのです。
そしてステルナティーアも阪神JFで、ルメール騎手騎乗で2番人気に支持されながら、見せ場なく7着に敗れてしまいました。
さらにホープフルSでは、G1昇格後は1800m以上で1着がある馬しか勝っていないというデータもあります。こうなると、いくら評判が良いとはいえ、コマンドラインを本命にすることは躊躇せざるを得なくなります。
また最終追い切りでも気づいたことがありました。
キラーアビリティの追い切りは、2頭合わせの内で、軽く促すといい反応で前に出て、機敏な動きが目についたのですが、その後外の馬が促されると、キラーアビリティを交わしていったのです。その動きが気になって、合わせた馬を調べてみると、ソフトフルートでした。昨年の秋華賞でデアリングタクトの3着に入り、今年のエリザベス女王杯でも人気はなかったものの4着。重賞勝ちこそないものの、G1で掲示板にのるバリバリの古馬オープン馬。
そんな馬と2歳馬ながら調教で互角に渡り合えるのだから、力があるのは間違いないだろうと、自信をもって本命にすることができました。
そしてレースでは、好スタートを切ったキラーアビリティは3番手を追走。そのまま直線で外に出すと外から前を交わして先頭に立ち、最後は萩Sで見せたような末脚で後続を突き放すと、1 1/2馬身差の1着。着差以上の強さを感じさせる勝ち方でした。対するコマンドラインは後方のまま伸びずに12着と大敗。明暗が分かれてしまいました。
当初キラーアビリティの鞍上は福永騎手が予定されていたそうですが、香港での落馬負傷により横山武騎手に乗り替わり。なんと2日前の有馬記念に続き、G1連勝で今年5勝目のG1制覇と、まさに破竹の勢い。運も味方につけて、すばらしい1年となりました。
ただ本人は有馬記念のインタビューでも反省の弁から入っていましたし、ダービーのハナ差負けもかなり響いたでしょうから、決して浮かれてはいないと思います。だからこそ成績も上がってきたのでしょう。
キラーアビリティの鞍上が来年どうなるかはわかりませんが、もし横山武騎手とのコンビが続行するのであれば、クラシックに向けてより一層の人馬の成長を期待したいと思います。