2021年の振り返りとJRA賞予想&ベストレース

今回も恒例の2021年を振り返って総括し、JRA賞を個人的に予想するとともに、ベストレースを選んでみたいと思います。

2021年も2020年に続いてコロナウイルスに翻弄された1年でした。そのなかでも人数は限られたとはいえ競馬場で実際に観戦できる機会も増え、声援はできないものの拍手など観客の存在を感じることで、関係者の気持ちの部分では、ずいぶん刺激を受けることが多かったのではないでしょうか。

そして2021年の特徴的な出来事としては、まず海外における日本馬の活躍ということがあげられると思います。
近年では海外のビッグレースに日本の馬たちが挑戦するのは当たり前になってきていますが、その中でアメリカのブリーダーズカップ(11/6,7)での初めての勝利が話題になりました。アメリカのG1での日本馬の勝利は、2005年アメリカンオークスでのシーザリオが唯一だったのですが、なんとG1中のG1であるブリーダーズカップで、しかも2勝を挙げたのです。
ラヴズオンリーユーのフィリー&メアターフ(デルマー競馬場 芝2200m 3歳以上牝馬)での勝利もすばらしかったのですが、マルシュロレーヌのディスタフ(デルマー競馬場 ダート1800m 3歳以上牝馬)での勝利には、本当に驚かされました。ダート競馬の本場アメリカのダートG1を日本馬が勝ったのはもちろん初めての快挙。しかもそれを日本ではG2勝ちまでの実績しかなかった5歳牝馬が成し遂げたのです。
その素質を見抜いてアメリカまで連れて行った矢作調教師の眼力にも敬服させられました。

さらにラヴズオンリーユーは、4/25の香港でのクイーンエリザベス2世C(シャティン競馬場 芝2000m 4歳以上牝馬)、12/12の香港C(シャティン競馬場 芝2000m 3歳以上牝馬)と海外G1を3勝。これも初めてのことでした。

そのほかに名馬たちの引退も多かった印象があります。
昨年無敗の牡馬クラシック3冠を成し遂げ今年のJCで感動のラストランを勝利で飾ったコントレイル、芝マイルの古馬G1全制覇を含むG1 6勝をあげたグランアレグリア、昨年の宝塚記念からグランプリ3連覇を達成し最後の有馬記念こそ3着だったものの勝負強さを見せたクロノジェネシス。
いずれも無事に引退式を行い、次は父や母として活躍するために、北海道に帰っていきました。

それでは、JRA賞について各部門ごとに振り返りながら予想してみます。
まずは確実なところから。

●最優秀2歳牝馬
ここは毎年阪神JFを勝った馬が選ばれる無風の部門です。サークルオブライフは3番人気ではありましたが、アルテミスSと重賞は2勝で、阪神JFの勝ちタイムは2019年レシステンシア、2020年ソダシに続くこの10年では3番目という優秀なもの。勝ち方には余裕もあり、クラシックへの期待も込めて問題なく選ばれるでしょう。

●最優秀3歳牡馬
G1を勝った3歳牡馬は、エフフォーリア(皐月賞、天皇賞(秋)、有馬記念)、シャフリヤール(ダービー)、シュネルマイスター(NHKマイルC)、ピクシーナイト(スプリンターズS)、タイトルホルダー(菊花賞)の5頭。もちろん3勝を挙げたエフフォーリアが抜けており、唯一負けたダービーもハナ差。ほぼ間違いなく満票で選ばれるでしょう。
今年の3歳世代は強いという評判のとおり、古馬G1を3勝したほか、ほかの秋の芝G1でも勝てないまでも3着以内に1頭は入るという状況。タレントの多さが印象的でした。

●最優秀4歳以上牡馬
今年国内の芝G1を勝った4歳以上牡馬は、ダノンスマッシュ(高松宮記念)、ワールドプレミア(天皇賞(春))、ダノンキングリー(安田記念)、コントレイル(ジャパンC)の4頭。ほかに香港ヴァーズでグローリーヴェイズが勝っています。
この中でコントレイルは大阪杯3着、天皇賞(秋)2着といずれも1番人気で好走しており、ジャパンCも2馬身差の完勝。高いレベルで安定した成績を残しており、総合力という意味でも受賞にふさわしいと思います。

●最優秀4歳以上牝馬
ここは2020年に続いてレベルが高い部門です。海外も含めて芝G1を勝ったのは、レイパパレ(大阪杯)、グランアレグリア(ヴィクトリアM、マイルCS)、クロノジェネシス(宝塚記念)、アカイイト(高松宮記念)、ラヴズオンリーユー(クイーンエリザベス2世C、BCフィリー&メアターフ、香港C)の5頭。グランアレグリアは短距離馬で選ばれるでしょうし、もしクロノジェネシスが有馬記念を勝ったら混戦になると思っていたのですが残念ながら3着まで。年間に海外G1を3勝という記録を打ち立てたラヴズオンリーユーが選ばれるでしょう。
ただし国内で走ったのは、ソダシの2着に敗れた札幌記念のみ。そのあたりで別の馬に何票か流れるとは思います。

●最優秀短距離馬
マイル以下の古馬G1では、高松宮記念はダノンスマッシュ、安田記念はダノンキングリー、スプリンターズSはピクシーナイト、ヴィクトリアMとマイルCSはグランアレグリアが勝ちました。
グランアレグリアは中距離戦での戴冠も狙って大阪杯、天皇賞(秋)に出走したため、スプリント戦には出ませんでしたが、安田記念も勝ちに等しい2着とマイルでの強さは現役随一。JRA G1を複数勝ったのは、エフフォーリア以外はグランアレグリアだけで、その意味でもここはグランアレングリアで決まりでしょう。

それでは、以下は迷うところを。

●最優秀2歳牡馬
4年前にホープフルSがG1に昇格し、2歳牡馬のG1馬が2頭生まれることになり、毎年どちらが選ばれるかが焦点になります。最初の2年は朝日杯FSの勝ち馬が選ばれ、その後の2年はホープフルSの勝ち馬が選ばれており、現在ちょうど半分ずつ。
何を基準に選ぶかで意見が分かれるでしょうが、朝日杯FSを勝ったドウデュースは無敗で、武豊騎手が22回目の挑戦で初めて勝ったという話題もありましたが、2着馬との着差は1/2馬身と少なく、勝ちタイムは過去2年に劣ります。対するホープフルS勝ち馬キラーアビリティは、話題性は劣るものの2着馬との着差は1 1/2馬身差で余裕ある勝ち方を見せ、勝ちタイムもG1昇格後の最速。
クラシックへの将来性や勝ちっぷりから、個人的にはキラーアビリティを押したいと思います。

●最優秀3歳牝馬
今年のG1勝ち馬は、ソダシ(桜花賞)、ユーバーレーベン(オークス)、アカイトリノムスメ(秋華賞)の3頭。安定感という意味では、アカイトリノムスメ(桜花賞4着、オークス2着)でしょうし、話題性という意味では白毛のソダシ(オークス8着、秋華賞10着)に軍配があがるでしょう。そのうえ何といってもソダシにはラヴズオンリーユー、ペルシアンナイトを抑えて札幌記念を勝ったという実績もあります。ユーバーレーベンはほかに重賞勝ちはなく、残念ながら少し落ちる印象。
何を重視するかではありますが、個人的には札幌記念1着とファンの多さも評価してソダシとしたいと思います。

●最優秀ダートホース
JRAのダートG1は、フェブラリーSはカフェファラオ、チャンピオンズCはテーオーケインズが勝ちました。カフェファラオはその後3着以内すらないのに対して、テーオーケインズは帝王賞1着など今年5戦4勝。これを見る限り、例年であればテーオーケインズで決まりでしょう。
ところが今年はダートの本場アメリカで、マルシュロレーヌがBCディスタフを勝つという歴史的な快挙を達成。マルシュロレーヌは国内では川崎のエンプレス杯などG2勝ちまでで、G1は昨年のJBCレディスクラシックの3着が最高と勝ったことがありません。しかしアメリカのダートG1を勝つというインパクトはとても大きいので、ある程度の票が流れると思います。とはいえJRA賞である以上は、やはりテーオーケインズでではないかというのが、個人的な予想です。

●最優秀障害馬
ここは中山GJを勝ったメイショウダッサイと、中山大障害を勝ったオジュウチョウサンという、昨年と同じ顔ぶれながら、勝ったレースは逆になった2頭のどちらかでしょう。
メイショウダッサイは昨年の東京HJから中山大障害、中山GJを含む4連勝。しかし10月に故障が判明し、連覇がかかった中山大障害は回避します。
一方オジュウチョウサンは昨年の中山GJを勝った後、途中脚部不安などもあり障害で3連敗。もう終わったかとも思われましたが、中山大障害で鮮やかに復活。強いオジュウチョウサンが戻ってきました。その印象の強さから、オジュウチョウサンが4回目の最優秀障害馬の称号を得るのではと思います。

そして年度代表馬ですが、G1を3勝したエフフォーリアとラヴズオンリーユーの一騎打ちでしょう。
G1の勝ち数では並ぶものの、ラヴズオンリーユーはJRAのG1には出走しておらず、唯一走った国内のレースはG2札幌記念で、しかも3/4馬身差2着に敗れてしまいます。
対するエフフォーリアは5戦4勝で、唯一の敗戦はダービーのハナ差2着と勝ちに等しい内容。天皇賞(秋)ではコントレイル、グランアレグリアという強い馬を下し、有馬記念もディープボンドやクロノジェネシスに着差以上の完勝。JRA賞ということもあり、やはりエフフォーリアが選ばれるのではないでしょうか。

続いて2021年のベストレースです。
ダービーのハナ差勝負は印象的でしたし、菊花賞の5馬身差逃げ切りも驚きました。またジャパンCでのコントレイルのラストランでの復活勝利は感動的でしたし、有馬記念も良いレースだったと思います。
それらを抑えて個人的なベストとしては、天皇賞(秋)をあげたいと思います。復活をかけた前年の3冠牡馬コントレイルに、マイルからの距離延長に挑戦してきたグランアレグリアと、ダービーハナ差2着の悔しさを晴らしたい3歳代表エフフォーリアが挑む構図。横山武騎手が、ダービー勝ちのシャフリヤールに乗っていたコントレイルの福永騎手に雪辱するというドラマも、楽しませてもらいました。

時代を代表するような馬たちが次々に引退して、世代交代が印象的でもありました。そんな中でエフフォーリアをはじめ、秋のG1で活躍した3歳馬たちが中心になって、2022年の競馬を支えていくのでしょう。また2歳戦でも暮れのG1では楽しみな馬たちが勝って、クラシックも期待できそうです。

そんな中で、種牡馬の世代交代も印象的でした。ホープフルSはディープインパクト産駒が1,2着を占めて相変わらずの強さを見せましたが、実質的にこの世代が最後。今後は多くの種牡馬による戦国時代が続くのではないかと思います。
それを象徴したのが、2021年の有馬記念。出走した16頭にディープインパクト産駒はおらず、ディープインパクト産駒が父となる馬が3頭いたものの、種牡馬のバリエーションは多彩でした。同じ種牡馬の産駒ばかりが活躍すると、血統的には早々に行き詰まることが予想されるので、そういう意味では望ましい状況だとは思うのですが、予想する側からは大変になります。

ただし間違いなく予想する面白さは増すでしょう。
1日も早く誰でも普通に競馬場で観戦できるようになることを祈りながら、2022年の競馬に期待したいと思います。

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