Farewell! Almond Eye! ~Japan Cup

今年のジャパンカップ(JC)は無敗の3歳3冠馬2頭コントレイル、デアリングタクトと、2年前の3冠馬で芝G1 8勝馬アーモンドアイの対決という、まさに前代未聞の豪華なレースとなりました。
3頭とも実力は間違いないものの、それぞれに不安な点もあり、どの馬が勝つのか全くわかりません。そのため、決まった時からワクワク感が止まらず、早く見てみたいものの、少なくとも無敗の2頭のどちらかには土が付いてしまうこともあり、いつまでもレースがこなければいいという、複雑な心境を味わいました。

予想は本当に困りました。
まずアーモンドアイ。2年前は驚異的なレコードタイムでJCを勝っていますが、その後マイルから2000mを使ってきたこともあり、年を重ねて父ロードカナロアの特徴が強くなり、距離が長いのではという懸念があります。
そして毎回一生懸命走るため、3,4歳時はレース後に熱中症のような症状でふらついたり、中2週で走った今春の安田記念では完敗したりと、天皇賞(秋)からの中3週は大丈夫かという不安もありました。

次にコントレイルですが、3頭の中では唯一秋3戦目となり、また明らかに距離が長い菊花賞で、アリストテレスにプレッシャーを掛け続けられて、厳しいレースをクビ差で勝った疲れが気になります。
また菊花賞からJCというローテーションで勝った馬がいないとか、無敗の3冠馬シンボリルドルフもディープインパクトも、3冠後の初戦は負けているという事実も不安にさせられました。

最後にデアリングタクト。秋華賞からの中5週という余裕のローテーションや、最近の3冠牝馬ジェンティルドンナ、アーモンドアイがいずれも3歳時にJCを勝っているという事実、さらに荒れて時計のかかる馬場も、重の桜花賞で完勝したこの馬に有利と思われます。
しかし振り返ってみると、3歳牝馬で勝ったのは上記2頭だけで、ウオッカも4着に敗れています。また後方からの脚質も前がふさがる危険があり、オークスは力の違いで勝ったものの、JCであの状況になったら差し切るのは無理でしょう。

最終的にアーモンドアイを中心にしようと決めたのですが、その理由として付き合いが長く思い入れが一番強いという心情的なものの他に、国枝師が昨年の有馬記念や今年の安田記念の反省として、調教で追い込まないようにしたという記事を読んだことが大きかったと思います。
どうしても勝ちたい気持ちから、強めの調教をした結果、馬のテンションが上がってしまい、それがレースで折り合いを欠くことにつながったというのです。たしかに今回の最終追い切りでは、内から先行する馬に合わせたものの、抜くことはせず、最後に少しだけ前に出るという、見た目には大丈夫かと思わせるものでした。しかしこれが逆に良かったのではと思ったのです。

レースではアーモンドアイは好スタートを切ったものの、外から押してきたキセキが前に行くと抑えて好位の内をキープ。デアリングタクトはやや掛かりぎみにいつもより前の中団につけ、その直後にコントレイルという隊列になります。
天皇賞(春)以来の逃げに出たキセキは、初騎乗の浜中騎手が、けれん味のない走りで後続にぐんぐんと差をつけ、向こう正面では10馬身以上離します。一瞬まずいかと思いましたが、1000m57.9秒はさすがに速すぎました。
それに惑わされずアーモンドアイは、やや掛かりぎみも前の僚馬グローリーヴェイズを壁にして4,5番手の内。その2馬身後ろにデアリングタクトとカレンブーケドールが並び、さらに2馬身後方にコントレイル。

アーモンドアイのルメール騎手は、内が悪いことを当然わかっていたでしょうが、掛かって前に行くことを恐れてわざと内に入れたのでしょう。そして前のグローリーヴェイズは同じシルクの馬だし、直線は内をあけて皆外に行きたがるので、前がふさがる心配がないことも読んでいたと思います。

そしてアーモンドアイは4番手で直線に入ると、案の定前は簡単に開いて、馬場中央に出します。残り400mの時点でキセキとはまだ50mほど差がありましたが、そこから追い出すと徐々に差を詰めていきます。
残り200mで前を行くグローリーヴェイズを捉えると、残り100m手前でキセキを交わして先頭。後方からはコントレイル、デアリングタクト、カレンブーケドールが並んで差してきますが、3馬身ほど後方。
そのままアーモンドアイはゴールまで脚色衰えず、壮絶な4頭の2着争いをしり目にコントレイルに1 1/4馬身差をつけて芝G1 9勝目となるゴールに飛び込みました。

マイルCSの時にも今年の5歳が、3~5歳世代では最も強いのではと書いたのですが、それを証明するように5歳最強馬のアーモンドアイが終わってみれば危なげないレースで見事に勝利しました。
これで引退というのがとても残念でさみしいですが、後輩の3冠馬2頭に今後を託して去っていくという、まさに絵にかいたような美しい去り際を見せてくれました。
そして厳しいローテーションながら最後はアーモンドアイに迫り2着に入ったコントレイル。粘るカレンブーケドールを最後にハナ差だけ交わして3着に入ったデアリングタクトも、3冠馬の意地を示し、すばらしいレースを見せてくれました。
2頭とも無敗が継続できなかったのは残念ですが、負けて強しのレース内容は、来年以降の活躍に期待を持たせてくれるものだったと思います。

思えばアーモンドアイは、桜花賞を勝った時から、何度も驚くような強さを見せてくれましたし、特に驚異的なレコードを出した2018年のJCは衝撃的でした。
また昨年の有馬記念で思わぬ大敗を喫したときはどうなることかと思ったものの、その後立て直してこの秋も天皇賞(秋)、JCと連勝。芝G1勝ちの記録を9勝に伸ばすとともに、獲得賞金もキタサンブラックを抜いて過去最高になりました。
個人的にはパドックでの落ち着いた様子と、美しい毛づや、伸びやかな歩様と力強いトモの踏み込みに、毎回感心させられましたし、名前通りのクリッとした目と美しい顔立ちも印象的でした。
今後はよい子供たちを出すという新たな使命に挑戦するわけですが、ぜひ自らを超えるようなすばらしい産駒を期待したいと思います。

最後に、お疲れさまでした。そして感動をありがとうございました。

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