J・G1馬の平場での実力とは ~オジュウチョウサンの将来性は

この福島開催で最も注目を集めたのは、ラジオNIKKEI賞でも七夕賞でもなく、7/7(土)の9R 開成山特別(500万下 芝2600m)だったのは間違いないでしょう。そう、J・G1 5連勝を含む障害重賞9連勝中のオジュウチョウサンが、4年半ぶりの平場のレースに出走してきたのです。
当日の入場人員は前年同日比138.3%の1万4247人で、開成山特別の売り上げも前年比195.6%の11億4320万1100円だったそうです。またオジュウチョウサンのグッズ売り場には最大500人以上の列ができ、最長1時間待ちだったとか。
平地競争参戦のニュースを聞いた時は驚きました。しかも鞍上が武豊騎手。障害レースに注目を集めて盛り上げるという意味でも、効果的でおもしろい試みだったと思います。

しかし盛り上げるだけで肝心のレースで負けてしまっては、元も子もありません。ローカルの500万下ならさすがに勝つかなとは思いましたが、あとで示すように実はJ・G1馬といっても平地では意外な苦戦を強いられており、一抹の不安もありました。
ところがふたを開けてみれば、好位追走から4コーナーでは早くも先頭に立ち、あとは離す一方で3馬身差の勝利を危なげなく飾ったのです。今後は有馬記念制覇が目標とのこと。ではJ・G1馬の平地での実力とはどれぐらいなのでしょうか。

過去に中山大障害や中山グランドジャンプを制したのちに平地競争を走った馬は何頭かいますが、実は勝ったのは今回のオジュウチョウサンが初めて。ではどんな馬たちがどんな成績を残してきたのか、ちょっと調べてみました。

現在は平地と障害の賞金は分かれていて、オジュウチョウサンのようにJ・G1を5勝しても、平地では2戦0勝のため未勝利馬なのです。しかし以前(いつまでかはわかりませんが)は合算でした。そのため平地で条件馬でも、障害の賞金で重賞出走が可能だったのです。

1974年にデビューしたバローネターフは平地は未勝利でしたが、3歳(当時は4歳。以下現年齢で表記)夏に障害入りしていきなり未勝利を勝つと、5歳時には中山大障害春、秋と連覇。6歳春は2着に負けたものの、6歳秋、7歳春、秋と3連覇して合計5勝。オジュウチョウサンとほぼ並ぶ実績を残した、障害重賞7勝を誇る名ジャンパーでした。
そのバローネターフですが、7歳秋の中山大障害の前に、当時芝3200mだった天皇賞(秋)に出走しています。平地での賞金は0なので今なら出られませんが、障害だと重い斤量を背負わされるので、叩きで8大競争の1つに出走したのです。結果は13頭立ての11着。13番人気だったので、休み明けとはいえ、平地と障害での力差は当時も当然のように思われていたのでしょう。

テンポイントの全弟で兄と同じ悲劇に見舞われたキングスポイントは、平地は未勝利の1勝のみでしたが、1982年の中山大障害春、秋連覇を果たした名ジャンパーとして有名です。そのキングスポイントも、中山大障害春を勝った後に、秋に向けての叩きとして京都大賞典、天皇賞(秋)と平地の重賞に参戦しています。しかし京都大賞典が14頭立て7番人気10着。天皇賞(秋)が14頭立て11番人気8着。いずれも1秒以上の差をつけられた完敗に終わりました。

1996年の中山大障害春、秋を連覇し、1997年春に3連覇を飾ったポレールは、個人的にも記憶に残る障害馬ですが、1997年中山大障害春を勝った後に天皇賞(春)に参戦して16頭立て12番人気12着。秋は京都大賞典に参戦して10頭立て10番人気で6着。

このように見てくると、J・G1で好成績を残している馬たちも、平地の重賞ではまったく歯が立たなかったことがわかります。
さらに条件戦を見てみると、近年では下記の馬たちがJ・G1を勝った後に参戦するも好成績を残せていません。
メルシーエイタイム(2007年中山大障害):2013年までJ・G1と500万下を交互に走るも7着まで
マルカラスカル(2008年中山GJ):1000万下4戦するもすべて2桁着順
スプリングゲント(2009年中山GJ):2013年までJ・G1と1000万下を交互に走るも2桁着順
アポロマーベリック(2013年中山大障害、2014年中山GJ):500万下11着

競馬で勝つには、スピードと瞬発力と持久力、さらには勝とうとする気持ちが大事だと思いますが、平地と障害では特にスピードと瞬発力あたりで、求められるものが違うのではないかと思うのです。

オジュウチョウサンは障害入りしてめきめき強くなり、特に気持ちの部分が強くなったと感じます。また全兄のケイアイチョウサンがラジオNIKKEI賞を勝っており、全弟のコウキチョウサンが今年の目黒記念で差のない8着に入るなど、血統的にも重賞で好走できる要素はあるでしょう。

過去の障害実力馬の平地での成績を見ると、オジュウチョウサンの有馬記念制覇はかなり遠い気がしますが、何といっても現在障害重賞9連勝を含む10連勝中という過去に例がない成績を継続している馬です。今後の活躍を期待したいと思います。
ただ、今後障害レースへの出走は考えていないというオーナーの言葉には、一抹の寂しさを感じます。J・G1の連勝記録をどこまで伸ばすかも見たかったなと。

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