今年の皐月賞は、牝馬のファンディーナの参戦で、69年ぶりの牝馬による快挙なるかが大きな話題となりました。デビュー3連勝がいずれも先行して楽勝で、特に前走のフラワーCは直線で突き放して5馬身差の圧勝。今年の3歳牡馬は弱いという評価もあって、そのファンディーナは最終的に2.4倍の圧倒的な1番人気に支持されたのです。
牝馬による牡馬クラシック勝利といえば、2007年のウオッカによるダービー制覇が思い浮かびますが、逆に言うと近年ではそれしかないわけで、だからこそ快挙だったのです。そのウオッカは前走の桜花賞で2着に負けていたこともあり、当日の評価は10.5倍の3番人気。牝馬の牡馬クラシックでの1番人気は、1995年菊花賞でダンスパートナー(レースではマヤノトップガンの4着)が支持されましたが、それ以外は記憶にありません。
そのファンディーナの評価ですが、個人的には上位の可能性はあるものの、勝つまでは難しいのではと思っていました。その根拠として、年明け3戦の厳しいローテーションや、先行しての楽勝ばかりでもまれた経験がないこと、3戦全勝馬の成績が振るわないことなどもありますが、やはり牡馬の迫力というか圧力のようなものが、かなり影響するのではと思ったのです。
それはダンスパートナーの菊花賞の時にも感じたのですが、3歳牝馬にとって牡馬の圧力は想像以上に大きいのではないかと思うのです。
いわゆる女傑と呼ばれる牡馬まさりの牝馬は過去にも何頭かいました。エアグルーヴ、ヒシアマゾン、ウオッカ、ダイワスカーレット、ブエナビスタ、ジェンティルドンナなど、牡馬を相手にG1で好勝負を演じた牝馬が何頭も思い浮かびますが、3歳で牡馬相手にG1を勝ったのはウオッカだけで、その多くが古馬になってから勝っているのです。
これは競走能力だけではなく、牡馬相手に勝つだけの精神力も必要なのではないでしょうか。それを3歳春の時点で求めるのは、かなりハードルが高いのではないかと思うのです。
しかし予想のプロであっても、ファンディーナを高く評価する人はかなりいて、中には負けるシーンが想像できないというような表現もあって、ちょっと驚きました。
レースでは、ファンディーナは横一線のスタートから前に行くものの、人気ゆえのマークもあり、どんどんポジションを下げてしまいます。4コーナー手前から押して出していき、直線に入って一瞬先頭に立つものの、内から1着になるアルアインが追い出し、外から3着になるダンビュライトが迫ってくると、その迫力に押されるように下がってしまいます。そこから懸命に前を追うものの、結局0.5秒差の7着に終わりました。
ファンディーナは牝馬としては馬格があり、今日の馬体重は504kgありましたが、やはり牡馬の”圧”に押されたように見えました。
勝ったのは9番人気のアルアインで、2着は4番人気のペルシアンナイト。連対した2頭の前走は毎日杯1着とアーリントンC1着。ともに過去10年の連対馬にはない臨戦過程で、トライアル組では唯一弥生賞3着のダンビュライトが3着に入るだけと、過去の傾向とは大幅に異なる結果になりました。
昨年までの5年で4勝を挙げていた前走共同通信杯組は、スワーヴリチャードが6着と敗退。思えば2012年にゴールドシップが共同通信杯からの直行で勝ってから傾向が変わり、共同通信杯が主要な前哨戦となったのですが、今年の結果を受けてまた傾向が変わるかもしれません。来年以降に注目です。
しかしこれでダービーがわからなくなりました。過去10年で6番人気以下の人気薄の馬が皐月賞を勝ったのは3回ありますが、そのうち2回は皐月賞不出走馬がダービーを勝ち、昨年は皐月賞2着馬(3番人気)がダービーを勝ちました。
これを当てはめると、今年は皐月賞不出走馬かペルシアンナイトがダービーを勝つことになりそうです。個人的には、ダービーはぜひ誰もが納得するような強く実績がある馬に勝ってほしいと思います。