最も固いG1から最も荒れるG1へ ~天皇賞(春)

今年の天皇賞(春)は、直線で2番人気のキタサンブラックと13番人気のカレンミロティックの叩き合いとなり、いったんカレンミロティックがアタマ差ほど前に出ましたが、最後にもう一度キタサンブラックが内から差し返し、数cm差での戴冠となりました。
これで菊花賞に続くG1 2勝目となったわけですが、3000mを超えるG1を両方制したことで、ようやく母父サクラバクシンオーからくる距離不安説も影を潜めることでしょう。馬主の北島三郎さんも再び「まつり」を歌って喜ばれたとのことで、おめでとうございます。

それに対して、1番人気のゴールドアクターは道中掛かったことが影響したのか、4コーナー2番手から後退して0.8秒差の12着大敗となりました。掲示板を外したのは新馬戦7着以来2回目ということで、堅実な成績からここまでの大敗は、正直驚かされました。
そしてこれにより、天皇賞(春)では10回連続で1番人気が連対できなかったことになり、まさに最も荒れるG1と言えると思います。しかも3着に入ったのも、2008年のアサクサキングスが最後。つまり過去8回連続で1番人気が着外に敗れているのです。

しかし私が競馬初心者だったころは、確か最も固いG1と言われていたはずです。いつからこんなに荒れるようになってしまったのでしょうか。
ちょっと調べてみると、2003年の第127回から傾向が変わったようです。それまでももちろんたまに荒れることもあったのですが、例えば1999年から2002年まで4回連続で1~3番人気の馬が3着以内を占めていますし、1990年代で1,2番人気が揃って連対を外したのは、1995年の1回だけ。その年の馬連が4,090円で、他に1998年に2番人気-10番人気で決まって4,770円というのがありますが、その2回を除けば平穏に収まっていたのです。
しかし2003年に1着ヒシミラクル(7番人気) 2着サンライズジェガー(8番人気)で馬連16,490円と荒れると、2004年は1着イングランディーレ(10番人気) 2着ゼンノロブロイ(4番人気)で馬連36,680円。そしてついに2005年には1着スズカマンボ(13番人気) 2着ビッグゴールド(12番人気)で馬連169,320円の大荒れに。今から思えば、これで今の傾向が決まったような気がします。

その後、2006年こそディープインパクト-リンカーンの1,2番人気で決まって馬連380円で収まったものの、2007年からの10回で馬連3桁は1度もなく、5桁(万馬券)は3回。さらに3連単は10万円超えが10回中9回で、まさに荒れるG1という感じです。

その理由は、いろいろあるのでしょうが、個人的には長距離レースの価値の低下があるのではという気がします。昨年の2冠馬ドゥラメンテはダービー後に怪我が発覚して秋は全休しましたが、無事なら菊花賞で3冠は狙わず凱旋門賞に挑戦するつもりだったといいます。他にもダービー3着馬サトノクラウンは菊花賞ではなく天皇賞(秋)を選択しました。
このように競馬サークル全体として、配合の段階から調教まで長距離レースを意識しない傾向が強くなっているのではないでしょうか。そのため。中距離では強いのに意外と距離がもたなかったり、距離に自信がない馬ばかりで全体にペースが遅くなってしまい、スローペースの経験が少ない有力馬が掛かって末を失ったり、逆に直線の瞬発力勝負になって短い距離に適性があるはずの馬が上位に来たりと、さまざまな要因で荒れることが多くなっているのかもしれません。

しかし一方、昔、天皇賞(春)で強い勝ち方をした、メジロマックイーン、サクラローレル、マヤノトップガン、スペシャルウィーク、テイエムオペラオー、そしてディープインパクトなどは、中距離でも活躍しました。ところが最近天皇賞(春)を勝った馬は、他ではあまり活躍できず、このレース限定のような傾向も見えます。そういう意味では、天皇賞(春)を勝つのは新たなステイヤーと言えるのかもしれません。

今年優勝したキタサンブラックは、現状ではG1勝ちは菊花賞と天皇賞(春)の長距離G1のみとなっています。しかし2000mの産経大阪杯で好勝負するなど中距離でも実績を残しており、逆に母父サクラバクシンオーのスピードがうまく生かされているのかもしれません。まだ底を見せていない感もあり、中長距離でまんべんなく活躍できるようなスターホースへの道を歩んでいくことを期待したいと思います。

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