今年の宝塚記念は、マスカレードボール以外の芝中長距離有力古馬がほぼ顔をそろえるという、豪華なメンバーで行われました。グランプリホース(宝塚記念、有馬記念の勝ち馬)が3頭出走したというのは、史上初のことだったそうです。
ファン投票の結果は下記の通りでした。
| 順位 | 馬名 | 得票数 | 性年齢 |
| 1 | クロワデュノール | 366,039 | 牡4 |
| 2 | メイショウタバル | 348,698 | 牡5 |
| 3 | マスカレードボール | 321,563 | 牡4 |
| 4 | レガレイラ | 317,708 | 牝5 |
| 5 | ミュージアムマイル | 314,452 | 牡4 |
| 6 | ダノンデサイル | 224,336 | 牡5 |
| 7 | エネルジコ | 162,534 | 牡4 |
| 8 | ロブチェン | 156,318 | 牡3 |
| 9 | アドマイヤテラ | 139,363 | 牡5 |
| 10 | エンブロイダリー | 135,345 | 牝4 |
単勝人気1桁の5頭が、ファン投票で20万票以上を獲得した上位6頭のうち、出走しなかったマスカレードボールを除く5頭になったのですが、それぞれが不安な要素を抱えていました。それを克服できた馬が、勝利に近づくと思われたのです。
まず1番人気となったクロワデュノールですが、今年は大阪杯と天皇賞(春)を連勝と、実力No.1は誰もが認めるところです。しかしG1を連勝した負担の大きさがどれだけ影響するのかが、もっとも心配な点でした。
大阪杯がG1に昇格した2017年以降、春のG1を3連勝した馬はいません。キタサンブラックがその2017年に大阪杯、天皇賞(春)を連勝し、1.4倍の圧倒的1番人気で宝塚記念に挑んだものの、直線は馬群に飲み込まれて9着と大敗。あの時のショッキングなシーンは、いまだに鮮明に覚えています。
斉藤崇師のやや歯切れの悪いコメントは気にはなったものの、パドックでのクロワデュノールは疲れを全く感じさせないすばらしい状態で、適度な気合できびきびと伸びやかな歩様で歩き、毛ヅヤもすばらしく、天皇賞(春)よりも出来が良いようにも見えました。
そのため個人的には問題ないだろうと判断しました。
次に連覇を狙う2番人気メイショウタバルですが、大阪杯では逃げて2着惜敗と昨年秋の不振を払しょくし、あらためて阪神コースとの相性の良さを示しました。また調教もパドックも素晴らしく良く見せて、ローテーションも含めて勝利に最も近いのはこの馬だろうと思わされました。
ただし同型のミステリーウェイの存在と、先行脚質の馬が多いこと、またやや重馬場を利して3馬身差で逃げ切った昨年と違って、今年は良馬場が見込まれることも、不安要素として考えられたのです。
しかし鞍上の武豊騎手の腕込みで、最も不安点が少ない馬だとは思いました。
3番人気のダノンデサイルは、昨年春にドバイでカランダガンを破って勝ったあと、1年以上勝ち星がありません。昨秋から国内G1で3戦してすべて3着と、決め手に欠けるところが気になります。
また戸崎騎手の阪神コースとの相性の悪さも気がかりでした。戸崎騎手はJRAのG1を14勝していますが、その内阪神コースは2013年の阪神JFの1勝のみ。大阪杯0・1・0・3、桜花賞0・1・0・9、宝塚記念0・0・0・6と、関東の競馬場に比べると、成績が振るわないのです。
またエピファネイア産駒の古馬になってからの伸び悩みも気になるところでした。
4番人気ミュージアムマイル、5番人気レガレイラはどちらも有馬記念を勝っており、こちらも力があることは間違いないのですが、問題はどちらも昨年の有馬記念以来の半年ぶりの出走というところでしょう。
ミュージアムマイルは4か月ぶりだった昨年の弥生賞で1番人気4着となるなど、叩き良化型の傾向であると思われ、またレガレイラは同じく有馬記念以来だった昨年の宝塚記念では、2番人気で11着と大敗。久々を克服できるかということが、2頭の大きな課題だったのです。
そしてレースはある意味思わぬ状況となりました。
各馬がパドックを周回しているときは曇り空だったのですが、本馬場入場の直前に突然の大雨となり、返し馬のときには向こう正面が見えないほどの状態になります。そのため10レースまでは良馬場で行われていたのに、宝塚記念の発走前には一気に重馬場まで悪化してしまったのです。
そして雨が小康状態となる中で、スタートが切られました。
まずは有馬記念で2番手追走から2着に粘ったコスモキュランダ(8番人気)が、一気にハナに立ちます。外枠のメイショウタバルは無理せず2番手につけ、逃げ争いをすると思われたミステリーウェイは中団。クロワデュノールはメイショウタバルを見る好位につけ、ミュージアムマイルはその直後。ダノンデサイルとレガレイラは中団後方という位置取りになりました。
コスモキュランダは向こう正面でメイショウタバルを4馬身ほど離して逃げたものの、1000mは1.00.3と重馬場を考えても平均ペース。
4コーナーでメイショウタバルはコスモキュランダに1馬身半ほどに迫り射程圏内。さらに1馬身半差でクロワデュノールが続きます。残り200m手前でメイショウタバルがコスモキュランダを捉えて先頭に立つと、外からクロワデュノールも一気に差を詰めてきます。しかし重馬場の影響もあるのか、じりじりと差は詰まるものの最後まで交わせず、メイショウタバルがそのまま先頭でゴール。クロワデュノールはクビ差の2着に終わり、最後に大外から差してきたダノンデサイルが、ゴール直前でコスモキュランダを交わして3着に入りました。
メイショウタバルは父ゴールドシップに続いて宝塚記念連覇を達成。武豊騎手も連覇に加えて、先週の安田記念に続く2週連続G1制覇となり、G1勝利の最年長記録をさらに更新することになりました。
メイショウタバルは離れた2番手追走ということで、安田記念のシックスペンスと同じ状態になったのですが、どちらも逃げているのとほぼ同じ状況で、こうなると武豊騎手のペース配分や絶妙な追い出しのタイミングなどが生きる展開となり、最後まで脚を持たせることができたのでしょう。
先行各馬が控えたことや、直前の大雨で重馬場になったことも、メイショウタバルに味方したと思います。結果として不安要素をほぼ無くすことができたと言えるでしょう。
逆にクロワデュノールにとっては、馬場悪化はマイナスに働いたのではないでしょうか。昨年のフランス遠征で凱旋門賞馬ダリズに勝っているように、重馬場でも問題ないとはいえ、やはり良馬場に比べると切れが鈍ることは間違いなく、それがクビ差2着の要因でもあるでしょう。
春3冠が達成できなかったことは残念ですが、そこに手が届く位置まで来たことは間違いなく、クロワデュノールの卓越した能力は証明されたと思います。
疲れという不安要素は結果としてなかったと思われますが、馬場状態を含めて勝つには少しだけ運がなかったのでしょう。
ダノンデサイルは最速の上りで差してきたものの、馬場の悪化もあり前には届きませんでした。4戦連続G1で3着というのはすごいことですが、近走の決め手に欠ける状況は克服できませんでした。
レガレイラは後方から差したものの7着、ミュージアムマイルは好位から失速して9着と、どちらもらしくない敗戦。やはり6か月ぶりが響いたのでしょう。
メイショウタバルは秋は凱旋門賞をめざすようですが、重馬場を克服できたのは有利な点だと思います。また逃げなくても勝てたことは、大きな収穫でしょう。
父ゴールドシップも2014年の凱旋門賞に挑戦しており、重馬場に実績があることから期待したのですが、14着に終わっています。メイショウタバルにはそのリベンジも期待されるのですが、まずは充分に休養をとって、元気に秋に向けて準備をしていってほしいと思います。