今年の天皇賞(春)の大きな目玉は、やはりクロワデュノールの参戦でしょう。
3歳時は凱旋門賞を目指すために菊花賞には出走せず、それもあって中距離がおもなターゲットだと思われてきました。そのため前走大阪杯を勝ってG1 3勝目をあげたあとは、当然宝塚記念が目標になるだろうと思われていたのです。ところが斉藤崇師から、次走は天皇賞(春)に出走するという発表があると、かなりの驚きを持って受け止められました。
その懸念の第1は、やはり3200mという距離にありました。近年はステイヤーというカテゴリー自体が、かなりあいまいになってきた印象を受けるのですが、それでも歴代の天皇賞(春)優勝馬を見てみると、長距離に実績がある馬が圧倒的に多いのです。
クロワデュノール自身、走った最長距離は2400mということで3200mは未知数なのですが、クロワデュノールは消しとするいくつかの記事で根拠として挙げられていたのが、キタサンブラック産駒は3000m以上での連対がないという事実でした。
これまでの芝3000m以上のレースでのキタサンブラック産駒の成績は0・0・2・6。その中には、下記のような人気を裏切ったケースもあったのです。
2022年菊花賞 ガイアフォース 1番人気 8着
2023年菊花賞 ソールオリエンス 1番人気 3着
2026年阪神大賞典 ダノンシーマ 2番人気 3着
1番人気で3着なら悪くはないと思うのですが、勝てていないという事実はあるので、特に穴狙いの人にとっては歓迎すべきデータだったといえるでしょう。
しかし競走馬の能力は父親からの遺伝だけで決まるわけではないし、サンプル数も少ないので、よく考えてみればあまり根拠のあるデータとはいえないことがわかります。とはいえ単純明快なデータは、つい信じたくなるのが人間の性といえるのかもしれません。
ところがそんなデータがあるにもかかわらず、クロワデュノールは1.8倍の1番人気に支持されます。
2番人気(3.0倍)は阪神大賞典をレコードタイムで制したアドマイヤテラ。菊花賞3着で目黒記念も勝つなど長距離実績は出走メンバーの中でも1番の存在。
3番人気は昨年の覇者ヘデントール(5.0倍)。こちらも菊花賞ではアドマイヤテラに先着する2着で、昨年はビザンチンドリームの猛追をしのいで戴冠したのですが、その後故障して復帰戦の前走は8着。状態面に不安が残ります。
前走でダイヤモンドSを制したスティンガーグラスが直前で回避したこともあり、上位3頭が抜けた存在となります。4番人気アクアヴァーナルは26.4倍と大きく離れ、この3頭で固いのではないかという雰囲気がかなり強く感じられました。
レースでは、好スタートを切ったクロワデュノールが折り合いに専念して5,6番手を進み、ヘデントールは中団でアドマイヤテラは後方。逃げたミステリーウェイのペースは59.9とやや速め。
そのままの隊列で進み、3コーナーからペースが上がると、クロワデュノールは早めに仕掛けて外から上がっていきます。4コーナでは3番手に上って前を射程に捉えると、残り300mで先頭に立ちます。後方から迫ってきたのはアクアヴァーナルとアドマイヤテラですが、クロワデュノールは突き放して差をキープ。残り100mでアドマイヤテラがアクアヴァーナルを交わして2番手に上り、そのまま決まるかと思われたのですが、そこに大外から飛んできたのが12番人気のヴェルテンベルク。
一気に差を詰めてくると、逃げ込みを図るクロワデュノールと内外離れてほぼ同時にゴール。スローで見てもどちらが勝ったかわからない僅差で、長い写真判定となります。結果はクロワデュノールの優勝となり、ヴェルテンベルクは惜しい2着。その差はわずかに2cmほどとのこと。
ヴェルテンベルクはステイヤーズSで2馬身差6着、前走ダイヤモンドSで3 3/4馬身差4着と、長距離重賞で好走してはいたものの、重賞は未勝利。ただしダイヤモンドSでは後方から1番の上りで伸びており、スタミナと切れがあることは証明されていました。
そしてヴェルテンベルクの父もキタサンブラック。ワンツーを決めるとともに、親子制覇も実現したのです。そしてキタサンブラック産駒は3000m以上での連対0というデータを、2頭で見事に覆して見せました。
クロワデュノールはこれで早くも今年のG1 2勝目。大阪杯、天皇賞(春)とG1を連勝したのは、父の5歳時と同じです。ところがキタサンブラックはこのあと宝塚記念に出走して、古馬になって唯一の着外となる9着と大敗しています。よもや負けるとは思っていなかったので、直線でずるずる下がっていく姿を見た時は、信じられない思いでいっぱいだったことを覚えています。
クロワデュノールの次走がどうなるかわかりませんが、もし宝塚記念となるのであれば、父のリベンジがかかってきます。ただ父の敗因が2つのG1を激走したことによる疲れだとしたら、同じ懸念がクロワデュノールにもあるわけで、また悩むことになりそうです。