今回も年末に当たり2024年を振り返って総括し、JRA賞を個人的に予想するとともに、ベストレースを選んでみたいと思います。
2024年は騎手の話題が多かった印象があります。藤岡康太騎手が4月に落馬事故でのケガにより死去。また角田大河騎手も8月に亡くなりました。どちらも今後を期待されていただけに、大変残念でショッキングな出来事でした。
そのほかにも若手騎手を中心に調整ルームへのスマートフォン持ち込みや、ルールを守らない使用などが次々と発覚し、藤田菜七子騎手や永野猛蔵騎手が引退するという事態にもなりました。公正競馬の実施という意味ではルールの順守は当然必要なのですが、将来ある若手騎手の不祥事には、個人的には残念という言葉しかありません。
馬の方では、今年から3歳ダート3冠が地方を中心に整備されたこともあり、よりダート競馬にスポットライトが当たったように感じました。その中で出てきたスターホースがフォーエバーヤングでしょう。
2月のサウジダービー(G3)、3月のUAEダービー(G2)と連勝すると、アメリカのケンタッキーダービーに参戦。後方から差を詰めてくるとゴール前は壮絶なたたき合いとなり、ハナ+ハナ差の3着。また秋にもBCクラシックに参戦し、着差は離れたものの3着に入りました。ダート競馬の本場アメリカで、善戦以上の結果を残したことは、とてもすばらしいと思います。
さらに東京大賞典でも坂井騎手が8割の出来という状態でも、ウィルソンテソーロやウシュバテソーロをはじめ古馬一線級を撃破。すでに国内に敵はなく、再度世界一をめざすことになります。
国内の古馬中長距離路線は前半は中心馬不在でしたが、秋にはドウデュースが春の不振を脱して天皇賞(秋)、ジャパンCと連勝。有馬記念は残念ながら直前で取り消しとなり、史上3頭目の秋古馬3冠は実現ならなかったものの、有馬記念のファン投票では史上最高の得票数となるなど、ファンの多い馬でした。
それでは、JRA賞について部門ごとに振り返りながら予想してみます。
まずは確実なところから。
●最優秀2歳牝馬
昨年はレガレイラがホープフルSを制したため2歳G1を勝った牝馬が2頭となったのですが、今年は例年通りG1を勝ったのは阪神JF勝利のアルマヴェローチェのみ。5番人気での戴冠でしたが、勝った馬が1番強いわけで、レースぶりも強かったので、問題なく選ばれるでしょう。
●最優秀4歳以上牡馬
今年国内の芝G1を勝った4歳以上牡馬は、マッドクール(高松宮記念)、ベラジオオペラ(大阪杯)、テーオーロイヤル(天皇賞(春))、ブローザホーン(宝塚記念)、ルガル(スプリンターズS)、ドウデュース(天皇賞(秋)、ジャパンC)、ソウルラッシュ(マイルCS)の7頭。
複数勝っているのはドウデュースだけで、しかも有馬記念のファン投票では歴代最高得票数を獲得。人気も実力も兼ね備えた存在であり、おそらく今年もこの部門では昨年のイクイノックスに続いて、圧倒的な票数で選ばれるのではないでしょうか。
●最優秀マイラー
古馬のレースが対象になる前提だと、安田記念は香港馬のロマンチックウォリアーが制してるので、マイルCSを勝ったソウルラッシュということになるでしょう。ソウルラッシュは安田記念も3着に来ていますし、香港マイルも2着と好走。最優秀マイラーの称号に最もふさわしいと思います。
それでは、以下は迷うところを。
●最優秀2歳牡馬
ここはホープフルSが2017年にG1に昇格してから、毎年朝日杯FSとホープフルSの勝ち馬のどちらかが選ばれます。しかし意外と朝日杯FSの勝ち馬の方が強く、その比率は朝日杯FS5頭に対してホープフルS2頭。2023年は牝馬のレガレイラがホープフルSを勝ったので仕方ないのですが、それでも意外と差がある印象です。
しかし今年は、朝日杯FSを勝ったアドマイヤズームが前走未勝利勝ちの5番人気だったのに対して、ホープフルSを勝ったクロワデュノールは前走東スポ杯2歳Sを勝ち2戦2勝で圧倒的な1番人気。2020年のダノンザキッド以来、久々のホープフルS勝ち馬クロワデュノールが選ばれると思います。
●最優秀3歳牡馬
クラシックを勝ったのは、ジャスティンミラノ(皐月賞)、ダノンデサイル(日本ダービー)、アーバンシック(菊花賞)の3頭。さらにNHKマイルCをジャンタルマンタルが勝っています。
この中で3冠レース皆勤はアーバンシックだけですが、その成績は4,11,1着とあまりほめられたものではありません。ジャスティンミラノは日本ダービーも2着と堅実ですが、残念ながら秋は故障で引退。それに対してダノンデサイルは皐月賞は除外、菊花賞は6着と敗れたものの、有馬記念では2番人気で3着に好走し、6着だったアーバンシックにも勝っています。そのため例年であればダノンデサイルが最有力でしょう。
しかし今年はダートで活躍したフォーエバーヤングがいます。ケンタッキーダービー、BCクラシックとアメリカでともに3着と好走。さらに国内ダート3冠最終戦のジャパンダートC、そして古馬相手の東京大賞典と勝って国内無敗を継続。実績的には十分に資格があると思います。
しかしJRAのレースは1戦も走っておらず、例年の傾向から言えばダノンデサイルになるのではないでしょうか。
●最優秀3歳牝馬
今年のG1勝ち馬は、ステレンボッシュ(桜花賞)、チェルヴィニア(オークス、秋華賞)、レガレイラ(有馬記念)の3頭。ステレンボッシュはオークス2着、秋華賞3着と好走し、さらに香港ヴァーズでは1番人気で3着に入るなどすばらしい成績を残したのですがG1は同世代牝馬相手の1勝のみ。古馬牡馬を一蹴して64年ぶりの3歳牝馬による有馬記念勝ちとなったレガレイラと、牝馬2冠にプラスしてジャパンCで歴戦の古馬牡馬相手に4着と好走したチェルヴィニアの、同厩舎同馬主の2頭の対決となるでしょう。
レガレイラの有馬記念制覇はすばらしいのですが、果敢に牡馬に挑戦した皐月賞は6着、日本ダービーは5着。さらにG2ローズS5着、エリザベス女王杯5着という戦績は、やはり印象的に良くないでしょう。
かなり票数は割れると思いますが、安定感で個人的にはチェルヴィニアを支持したいと思います。
●最優秀4歳以上牝馬
ここ数年は牡馬混合のG1を勝つ牝馬が多かったのですが、今年はテンハッピーローズ(ヴィクトリアM)、スタニングローズ(エリザベス女王杯)と牝馬限定戦のみ。
この2頭のうちどちらを選ぶのかは大変難しいと思います。2頭とも他に勝ち鞍がないだけでなく、すべて着外に敗れています。唯一差をつけるとすると、スタニングローズはヴィクトリアMで9着に敗れていることと、テンハッピーローズはBCマイルで見せ場のある4着に好走したということでしょうか。
この2点からテンハッピーローズを押したいと思います。
●最優秀スプリンター
スプリントG1では、高松宮記念はマッドクール(6番人気)がアタマ差で、スプリンターズSはルガル(9番人気)がクビ差で勝ちました。他にはマッドクールは阪神C2着が、ルガルはシルクロードS1着があります。直接対決ではマッドクールがスプリンターズS3番人気12着に対してルガルは高松宮記念1番人気10着と、ともに人気で大敗。
ここはかなり票が割れると思いますし、どちらも決め手に欠ける印象です。こういう場合、より最近のレースの方が記憶に残っていることもあり、またルガルの方が人気が高いことが多いのでルガルが有力かと思います。ただ阪神Cでマッドクールが1/2馬身差で惜敗しているので、こちらの方が印象に残っている可能性はありますが。
●最優秀ダートホース
JRAのダートG1は、フェブラリーSがペプチドナイル、チャンピオンズCがレモンポップと異なる馬が勝ちました。ペプチドナイルは11番人気での快挙でフロックとも思われたのですが、その後かしわ記念3着、南部杯2着と好走。力があることを示しました。
しかしレモンポップは南部杯、チャンピオンズCと連勝してともにペプチドナイルを完封。国内ではG1(Jpn1)を3戦3勝ということで、2年連続レモンポップとなる可能性は高いと思います。
ただしここでも気になるのはフォーエバーヤングの存在です。JRAのレースを走っていないので、こちらでも選ばれる可能性は低いですが、何票かはフォーエバーヤングに流れるでしょう。
●最優秀障害馬
ここは中山GJを連覇したイロゴトシと、中山大障害を2年ぶりに勝ったニシノデイジーの争いになります。
2頭とも他に勝ち鞍はないのですが、イロゴトシは中山GJを勝った後にけがで休養し、今年は2戦のみ。それに対してニシノデイジーは中山GJで3着に好走し、年間を通して活躍。暮れの中山大障害の方が印象に残りやすいということもあり、ニシノデイジーが有力だと思います。
ただ個人的に気になるのは、ジューンベロシティの存在です。中山GJ2着、中山大障害4着と、どうしても中山では勝てないのですが、東京ジャンプS、東京ハイジャンプと東京では無類の強さを見せてともに1着。今年障害の重賞を2勝したのはジューンベロシティだけということもあり、1年を通して最も活躍した障害馬は、ジューンベロシティと言えるかもしれません。
そして年度代表馬ですが、天皇賞(秋)、ジャパンCとハイレベルなG1を連勝したドウデュースが最有力だと思います。残念ながら圧倒的なファン投票の数で選ばれた有馬記念は直前のケガで回避することとなりましたが、追い切りの動きは素晴らしいものがあり、出られていればかなりの確率で好走したのは間違いないと思います。
スローな流れを後方から32.5という究極の脚で差し切った天皇賞(秋)。世界的ビッグネームのオーギュストロダンをはじめ国内外の一流馬を相手に、超スローペースをやはり後方から32.7で突き抜けたジャパンC。どんなレースとなっても負けるシーンが想像できないという意味で、まさに馬として円熟した姿を見せたレースだったと思います。
続いて2024年のベストレースです。
今年のジャパンCはヨーロッパを代表する3頭、特に目玉でもあるオーギュストロダンが参戦して、世界的にも注目のレースとなりました。その豪華メンバーを後方から差し切ったドウデュースのパフォーマンスはもちろん素晴らしかったですし、2着がシンエンペラーとドゥレッツァの同着となったことも印象的でした。結果的にドウデュースの最後のレースとなったこともあり、ジャパンCをまずは上げたいと思います。
しかし個人的にはフォーエバーヤングのレースも印象的でした。中でも世界に手が届きかけた大接戦のケンタッキーダービーと、本調子ではないにも関わらず最後は強い勝ち方を見せた東京大賞典は、本当に感心させられました。
2025年はサウジからドバイ、さらに秋は再度BCクラシックが視野に入ってくるのでしょう。今度こそ世界一の称号を手に入れられることを願って、この2レースを次点にあげたいと思います。