牝馬同士の戦いは意外な馬が好走したり人気馬が惨敗することがあり、牡馬同士よりも予想が難しいイメージがありますが、それがキャリアの浅い2歳戦となれば、よけいに難しくなります。個人的に一番記憶に残っているのは、1992年にスエヒロジョウオー(9番人気)が勝って2着にマイネピクシー(12番人気)が入り、馬連が12万円を超えたレース(当時は阪神3歳牝馬S)ですが、さすがに近年はそこまで荒れることはなくなっています。
過去10年でいえば、勝ち馬は5番人気以内から出ていますし、一番荒れた年でも馬連は12,470円(2021年)と比較的おとなしいといえます。さらに3桁(1,000円未満)の年が4回もあるのです。
しかし今年は確たる中心馬がいない印象でした。個人的にはアルテミスSでとても良く見えたブラウンラチェットが一押しだったのですが、そのブラウンラチェットは、実はアルテミスSではルメール騎手騎乗にも関わらず3番人気。しかもただでさえ体がない馬にも関わらず、輸送前の段階で前走より10kg減の430kgと発表されて、にわかに不安が大きくなります。過去に関西圏のレースで、大幅馬体減で力を出せなかった美浦所属の2,3歳牝馬を何頭も見てきているので。
結局ブラウンラチェットは428kgでの出走となりましたが、後方のまま直線も伸びず、1番人気を大きく裏切る1.7秒差16着と大敗してしまいました。
勝ったのは前走札幌2歳Sでハナ差2着だったアルマヴェローチェ(5番人気)でした。
その札幌2歳Sでは、中団から直線は最速の上りで内ラチ沿いを突いて、外を回したマジックサンズにハナ差2着と惜敗していました。その特徴は長く脚を使えることと、時計が掛かる芝1800mでものびるスタミナだと思います。そのあたりは父ハービンジャーと、母父ダイワメジャーからうまく引き継いだような印象です。
そして今日のレースでは、好スタートから中団の馬群内につけると、4コーナーではうまく外目に出します。内からメイデイレディに張られて、外のランフォーヴァウにぶつかるアクシデントがありながら、怯まずに大外を一気に伸びると、途中で内から馬体を合わせてきたビップデイジーと併せ馬で伸びて、最後はビップデイジーを振り切って1着でゴールに飛び込みました。
その勝因は、やはりスタミナと馬場の良い外を選んだコース取りだったと思います。今年は阪神競馬場が改修工事で使えず、第7回京都ということでどうしても馬場が荒れてきているのですが、その力のいる馬場というのが、洋芝の札幌で実績を残してきたアルマヴェローチェに合っていたのでしょう。
そしてJRA G1初制覇となった鞍上の岩田望騎手のコース取りも良かったと思います。前半はコースロスを避けて馬群の中を進み、直線は馬場の良い外を差してきました。このあたりはやはりコース経験が生きたのでしょう。
というのも、対照的なレースをした馬がいたからです。それがもう1頭注目していた、新潟2歳S2着から臨んだコートアリシアンでした。スタートでダッシュがきかずに後方からになったコートアリシアンは4コーナーでも後方から2,3番手。そこから美浦所属の戸崎騎手は最内を突きます。上りはアルマヴェローチェより0.1遅いだけの34.4でしたが、0.8秒差6着に終わりました。
内を突く判断は仕方ない面もありましたが、もしうまく馬場の良い外に出せていれば、アルマヴェローチェを上回る末脚を発揮できていた可能性はあり、もっときわどい勝負になっていたかもしれません。
そして2着になったビップデイジーも、スタミナとコース取りが生きたと思います。
ビップデイジーは前走芝1800m紫菊賞を勝って臨んでおり、父サトノダイヤモンド、母父キングカメハメハと中距離が合う印象があります。
そのビップデイジーもスタートダッシュがきかずに後方に置かれますが、幸騎手が懸命に押して中団後方の最内につけます。そして4コーナーに向けて徐々に外に出していくと、直線は馬場中央へ。さらに外から脚を伸ばすアルマヴェローチェを見て、一気に外へ馬体を合わせに行って、いっしょに伸びてきたのです。
最後はアルマヴェローチェに突き放されたものの、ベテランの幸騎手ならではの対応だったと思います。
ちなみに3着のテリオスララも前走は芝1800m萩Sを勝って臨んでいました。前走芝1800mを使った馬は、18頭中でこの上位3頭のみ。もしそこに着目していれば、3連複37,530円を1点で取れていたことになります。
残念ながら来年の阪神JFはまた阪神競馬場に戻るので、この傾向は来年に生かすことはできないでしょう。ただし来週同じ舞台で朝日杯FSが行われます。こちらには適応できるかもしれないので、予想の参考にしていきたいと思います。