東スポ杯2歳Sは東京競馬場で行われる2歳重賞で唯一芝1800mで行われるため、クラシックを目指す有力馬が毎年終結することもあり、レベルの高い戦いが繰り広げられます。そのため出走馬の質も高く、過去10年で1着馬からは5頭、2着馬からは2頭のG1馬が輩出されているのです。
上記の7頭のG1馬のうち、古馬になってからG1を制したサトノクラウンは東スポ杯では4番人気で1着、スワーヴリチャードは4番人気で2着という成績でした。残る5頭のうちタイトルホルダーは5番人気で2着だったのですが、それ以外の2,3歳でG1を制した4頭はすべて1番人気で1着。
つまりクラシックで活躍するためには1番人気で勝つことが望まれます。逆に2番人気以下で勝った馬の中でG1を勝った馬は1頭もいないのです。
今年1番人気(2.2倍)に支持されたのは、6月9日の東京芝1800m新馬戦で、史上最速のタイムで勝ち上がったクロワデュノール(父キタサンブラック)でした。北村友騎手騎乗で直線で1番人気のアルレッキーノを競り落として勝ったのですが、そのアルレッキーノは2戦目の未勝利戦を7馬身差で圧勝すると、次走のサウジアラビアロイヤルカップでは1番人気に支持され(レースでは5着)、よりクロワデュノールの価値が上がったのです。
続く2番人気(2.7倍)は10月5日の東京芝2000m新馬戦で、2番手から抜け出し4馬身差で快勝したレッドキングリー(父サートゥルナーリア)。口向きが悪く直線では鞍上の北村宏騎手がかなり苦労しているように見えましたが、最後はきれいに差し切りました。今回は鞍上にルメール騎手を迎え、イクイノックスと同じルメール騎手ー木村厩舎のコンビというところも、人気に一役買ったのではと思います。
以上の2頭がやや抜けた人気となり、3番人気(5.7倍)は9月22日の中京芝2000m新馬戦を、先行抜け出しで1 1/2馬身差で勝ったサトノシャイニング(父キズナ)。さらに4番人気(8.0倍)は札幌2歳Sで最後に詰め寄ったものの3着に敗れたファイアンクランツ(父ドゥラメンテ)と続きました。
調教はやはり上位人気3頭が良く見えたのですが、パドックで1番良く見えたのは、個人的にはレッドキングリーでした。落ち着いていながら適度な気合乗りで、キビキビと素軽い歩様を見せ、トモの踏み込みも深く力強く見えました。そして同様にクロワデュノールも、適度な気合のりで落ち着いて伸びやかな歩様でトモも力強く、2頭が抜けているように思われました。
対するサトノシャイニングはクビを傾けてややテンション高めで、トモの送りも浅めの感じに見えて、個人的にはあまり評価できませんでした。
レースでは各馬そろったスタートを切ると、やや掛かり気味に前に行くレッドキングリーをかわして外からサトノシャイニングがハナを切ります。レッドキングリーはルメール騎手が懸命に抑えて2番手。やや離れて4番手をクロワデュノールが追走します。
3コーナー過ぎにクロワデュノールの北村友騎手が促して早めに動き、4コーナーでは絶好の手応えで2番手で直線を向きます。直線では逃げるサトノシャイニングが馬場中央に出すと、その内にレッドキングリー、外にクロワデュノールという態勢。そのまま3頭の追い比べとなりますが、残り200m手前でクロワデュノールが前に出て、最内のレッドキングリーは手応えが怪しくなり3番手に後退。
クロワデュノールは最後まで伸びて1着でゴール。2着は3/4馬身差でサトノシャイニングが粘り、最後ファイアンクランツに詰め寄られるものの1 1/2馬身差で3着はレッドキングリーという結果になりました。
クロワデュノールは無事に1番人気に応えての1着で、過去の傾向から見ると将来が期待できる結果となりました。勝ちタイムは特に速くはないものの、イクイノックスに0.6秒劣るぐらいなので悪くはないでしょう。また上りはメンバー最速タイの33.3で、こちらも合格点と言えると思います。
ただし2着のサトノシャイニングとは3/4馬身差というところが気になります。ワグネリアンは3馬身、コントレイルは5馬身、イクイノックスは2 1/2馬身といずれも明確な差をつけて勝っており、ダノンザキッドも1 1/4馬身差で勝っています。
逆に1馬身差以内で勝った馬の中では、サトノクラウン以外は活躍できていないのです。ここが1番の懸念事項でしょうか。
しかしパドックや調教での動きは、個人的には過去の実績馬に遜色のないものだと思いましたし、24kg増の堂々とした馬体もすばらしく、ときに大物を輩出するキタサンブラック産駒ということで、期待は持てると思います。今後どのような成長を経てクラシックに臨むのか、楽しみに待ちたいと思います。
なお2着馬のサトノシャイニングは逃げながら最後まで粘る強い競馬で、こちらも成長次第で期待できるでしょう。逆にレッドキングリーはパドックの様子は1番良く見えたのですが、掛かったことも影響したのか最後は伸びを欠き、現状では厳しい感じがします。陣営がどう立て直してくるのかに期待したいと思います。