今年の日本ダート界のスターホースといえば、フォーエバーヤングで間違いないでしょう。
昨年JBC2歳優駿(門別)、全日本2歳優駿(川崎)と連勝して、国内の2歳ダート界トップの成績を収めると、3歳の今年は果敢に世界に挑戦。
2月のサウジダービーでは出遅れて最初の直線は後方に置かれるも、3,4コーナーで押して好位へ。最後の直線はいったん大きく離されますが、離れた大外からじわじわと脚を伸ばし、最後はアタマ差で差し切って優勝。
3月にはUAEダービーに転戦します。スタートでやや出遅れるも、押して好位を取りに行き4,5番手の外を追走。4コーナーで2番手に取り付くと、直線は内の馬とのたたき合いに。しかし残り200m手前で抜け出すと、じりじりと離していき2馬身差で1着。これでポイントを積み上げて、アメリカのケンタッキーダービーへの出走権を獲得したのです。
5月6日(現地時間5月5日)に行われたケンタッキーダービーの模様は、朝の生中継のTVで見ました。中東の2戦ではいい勝負をしたものの、本場アメリカのダート競馬はタフなことでも名高く、期待は持ちながらも、どこまでやれるかと見ていました。
スタートで後手を踏んだフォーエバーヤングは後方から進めますが、外を通って少しずつポジションをあげていきます。3コーナー過ぎからは懸命に押して外を追い上げると、4コーナーでは先団に並びかけます。
直線は外から並びかけてきたシオラレオーネと派手に馬体をぶつけながらの懸命の追い比べとなり、先に抜け出したミスティックダンを2頭で追います。じりじりと差を詰めていくと、最後は3頭が並んだところがゴール。
クビの上げ下げの勝負となりましたが、1着ミスティックダン、2着シオラレオーネ、3着フォーエバーヤングと、それぞれハナ差での決着となりました。
最後は残念ながら差し切れずの惜敗。しかし海外転戦で結果を残してきたフォーエバーヤングは、初めてのアメリカのダートにもしっかり適応し、かつ激しく馬体をぶつけ合う勝負にもひるまずに挑んでいったのです。
勝てはしませんでしたが、快挙まであと1歩と迫った姿には、とても感動させられましたし、その強さを証明するレースになりました。
スターホースとなったフォーエバーヤングですが、JRAのレースを走ったのは2023年10月の京都の新馬戦のみ。その後も地方で2戦しただけで、今年になって国内ではその姿を見ることはできていませんでした。さらに秋はアメリカのブリーダーズカップに挑戦するということで、生でその走りを見ることはできないのかと残念に思っていたのですが、その後、矢作師から無事であれば、今年ジャパンダードダービーからリニューアルして、新たに3歳ダート3冠の最終戦に位置付けられたジャパンダートクラシックに出走したいという意向が表明されたのです。
これは矢作師も主戦の坂井騎手も、ともに父親が大井競馬場の調教師だったことから、大井を盛り上げたいという気持ちも強かったようです。
そこで国内でフォーエバーヤングの走りを見ることができる貴重な機会でもあるジャパンダートクラシックを、見に行ってきました。昨年大井競馬場で行われたJBCも見に行ったのですが、観客の数はその時よりも圧倒的に多く、スターホースの存在が観客増につながることを痛感させられました。
そしてもちろんレースの人気に拍車をかけたのは、ライバルの存在があってこそでしょう。その1番手はユニコーンSを勝ち、東京ダービーを6馬身差で圧勝したラムジェットでした。単勝オッズはフォーエバーヤングの1.7倍に次ぐ3.6倍の2番人気。同じ大井の2000mで勝っている実績から、逆転もあり得るのではと考えた人も多かったと思います。
さらにレパードSを1馬身差で勝ったミッキーファイト(3番人気 6.5倍)、昨年のJBC2歳優駿2着、ホープフルS3着と好走し、前走盛岡の不来方賞を3馬身差で勝ったサンライズジパング(4番人気 7.0倍)とJRA勢が続きます。地方勢で人気になったのは、京浜盃勝ちで休み明けの戸塚記念も勝った大井のサントノーレ(6番人気 38.4倍)でした。



レースでは1枠のフォーエバーヤングが、スタート直後につまずいてヒヤッとしますが、すぐに立て直してサンライズジパングと並んで2,3番手を追走。中団にいたラムジェットは、向こう正面で押してその直後まであがってきます。4コーナー手前で各馬早めに追い出すと、直線に入ってすぐにフォーエバーヤングが先頭。サンライズジパング、ラムジェットはやや後退し、外からミッキーファイトがいい脚で差してきます。
力強く抜け出したフォーエバーヤングは残り200mで2馬身ほど差をつけますが、ミッキーファイトが猛追。一瞬差が詰まりますが、残り100mを過ぎてからフォーエバーヤングがもうひと伸び。最後はミッキーファイトに1 1/4馬身差をつけて、フォーエバーヤングが見事に凱旋勝利を飾りました。
さらに5馬身差3着がサンライズジパング、そして1馬身差4着がラムジェットと、ほぼ人気通りの決着となりました。

矢作師も坂井騎手も勝ってホッとしたと言っていましたが、アメリカ遠征のダメージは大きかったようで、回復途上ということと、次を見据えて8分の出来だったそうで、それでも勝てたことに対して正直な想いだったのでしょう。
これでフォーエバーヤングは7戦6勝3着1回。唯一の敗戦がケンタッキーダービーということが残念ですが、世界的な実力の持ち主であることは間違いなく、次走に予定しているブリーダーズカップクラシックでも有力馬の1頭になるでしょう。
これまでブリーダーズカップクラシックに挑戦した日本馬は4頭(5回)。そして最高着順はタイキブリザード(1997年)とパーソナルラッシュ(2004年)の6着。今年はその更新はもちろん、優勝も決して夢ではありません。
実際に矢作師は2021年にマルシュロレーヌでブリーダーズカップディスタフを制して、日本調教馬として初めてダート国際G1勝ち馬になっています。その時の経験やノウハウも生かして、全力で勝ちに行くでしょう。
ぜひ期待して待ちたいと思います。
ところでフォーエバーヤングの父はリアルスティールですが、ディープインパクト産駒である父はドゥラメンテ、キタサンブラック世代としてクラシックでは惜敗を繰り返し、芝重賞を3勝してダートは1度も走っていません。また代表産駒は先日のオールカマーなど芝重賞3勝のレーベンスティールで、ダートで活躍しているのは、今年の北海道スプリントCと翌日の大井で行われた東京盃を勝ったチカッパぐらいと、突然変異という印象です。
おそらくアメリカで重賞勝ちのある母の影響が大きいのでしょうが、近親にそれほどの活躍馬はおらず、血統の奥深さを感じます。
その意味では、最初からダート路線を歩ませた陣営の適性判断はすばらしく、そういうところも厩舎の好成績につながっているのだろうと思います。