新潟2歳S観戦記

新潟2歳Sといえば、世代で最初のマイル重賞であり、ここで連対して賞金を積み重ねておけばクラシックの選択肢が広がることもあって、期待馬が出走することがあります。
2002年にマイル戦になってからは、マイネルレコルト(2004年朝日杯FS1着)、セイウンワンダー(2008年朝日杯FS1着)、ハープスター(2014年桜花賞1着)、セリフォス(2022年マイルCS1着)、アスコリピチェーノ(2023年阪神JF1着)などのG1馬を1着馬から輩出しているほか、クラシックや2歳G1での好走馬も多数生み出している注目のレースでもあります。

新潟競馬場入場門

そんな新潟2歳Sを観戦するために、久々に新潟競馬場に足を運んでみました。
天気予報は怪しかったものの、幸いメインレースまで雨が降ることはなく、レース直前に分厚い雲が広がったものの、無事にスタートを切ることができました。
ところがレース後には、さらに天候は悪化して雷鳴がとどろくようになり、「落雷の可能性があるため、安全な競馬の実施が困難である」として12Rは取りやめとなってしまったのです。まさに間一髪で、ラッキーだったと思います。

1番人気は6月の東京芝1600m新馬を33.3の上りで5馬身突き抜けた牝馬コートアリシアン。新種牡馬サートゥルナーリア産駒の期待馬の1頭であり、特に新馬の勝ちっぷりが高く評価されていました。

コートアリシアン

2番人気は新潟芝1600m新馬を逃げて、上り33.3で2 1/2馬身差で逃げ切ったシンフォーエバー。外国産馬で藤田晋オーナー、森秀行調教師のコンビということもあり注目されていました。

シンフォーエバー

3番人気は6月初週の東京芝1400m新馬を中団から33.4で1 1/4差で差し切ったスターウェーブ。3億3千万円の高額でセレクトセールで落札されたキングマン産駒の良血馬で、期待も大きかったと思います。

スターウェーブ

以上の3頭が5倍以下の支持を集め、あとは東京芝1600m新馬を勝ったジョリーレーヌ、新潟芝1600m新馬を勝ったプロクレイアの2頭の牝馬が10倍を切る人気で、京都芝1600m新馬を勝ったトータルクラリティが11.7倍の6番人気。以下の5頭は20倍以上という状況でした。

11頭中9頭が前走新馬勝ちで、唯一の2勝馬は小倉芝1200m連勝。さらに前走新馬勝ちの9頭のうち1400m以上で勝ったのは7頭で、そのうち6頭は上りタイムが1番。いずれも甲乙つけがたい成績で比較は難しく、そういう時は調教とパドックの状況を参考にするようにしています。

調教で特に良く見えたのは、やはり上位人気の3頭。いずれも覇気のある走りで調子は良さそう。
そしてパドックで1番良く見えたのは、3番人気のスターウェーブでした。がっしりとした馬体で、落ち着きがありながら適度な気合乗り。クビを使ってきびきび歩き、トモの踏み込みも深く力強いのが印象的で、さすが高額な良血馬という感じでした。またコートアリシアンも牝馬らしいしなやかな馬体で素軽い歩様。適度な気合乗りながら落ち着きもあり、トモの踏み込みも力強く見えました。
シンフォーエバーはややテンションが高い感じも、馬格のある立派な体できびきびと歩き、プロクレイアとトータルクラリティはいずれも気合乗りよく、トモの送りはやや浅めも力強い歩様で、ともに悪くない印象でした。

スタートはほぼ揃って出たものの、コートアリシアンはダッシュがきかずに後方。それでも追い上げていって中団につけます。逃げたのはシンフォーエバーで、岩田康騎手がなだめながらじわじわと先頭に立ちます。北村友騎手のトータルクラリティが好位につけ、三浦騎手のスターウェーブ、菅原明騎手のコートアリシアンは中団。後方に和田竜騎手のマジカルフェアリー、石川騎手のジョリーレーヌ、津村騎手のプロクレイアなどがいる展開で、600mは35.0とスロー。
そのまま直線に向くと、シンフォーエバーが持ったままで後続を突き放していき、後続も横に広がって前を追います。残り400mで5頭が横一線になると、シンフォーエバーは手応えが悪くなって脱落し、外からトータルクラリティが先頭に立ちます。内でスターウェーブも懸命に追いますが手ごたえが悪くなり、代わって大外から上がってきたのがコートアリシアン。
残り200mでトータルクラリティとコートアリシアンが抜け出して、2頭のマッチレースの様相に。いったんはコートアリシアンがクビ差前に出るものの、トータルクラリティが差し返し、1/2馬身差のまま2頭のたたき合いが続きますが、最後までその差は変わらずゴール。
トータルクラリティが6番人気の低評価を覆す見事な走りで、G3の勲章を手に入れました。2着はコートアリシアンで、3馬身離れた3着が最後に大外から追いこんできたプロクレイア。

トータルクラリティは父バゴで母父スペシャルウィークという血統。京都芝1600m新馬の勝ちタイムが平凡で、1/2馬身差の辛勝ということであまり人気はなかったのですが、力強い末脚で早め先頭から押し切った形となりました。しかも一度差されてから差し返したことで、勝負根性もあるところを見せました。血統的にも距離が伸びて良さそうで、クラシックに向けて期待が持てる結果だったと思います。

トータルクラリティ

コートアリシアンは父サートゥルナーリアで母父ハーツクライという血統。1番人気に応えることはできなかったものの、その末脚はメンバー唯一の33秒台の上りで、決して悲観する内容ではなかったと思います。434kgとやや華奢な体で、今回も馬体重が減っていたのですが、今後馬体が充実すればさらなる前進も可能でしょう。こちらも血統的にマイルより長いところがよさそうで、今後に期待が持てます。

逆に人気のシンフォーエバー、スターウェーブはスローを先行しながらもあっさりと後退し、前者は9着、後者は6着という結果に終わりました。明確な敗因はわかりませんが、いずれも調子は悪くなさそうだったので、距離的な適性もあるのかもしれません。特にシンフォーエバーは止まり方も急だったので、その可能性は高いように思えます。
とはいえ、過去には新潟3歳S(1996年 当時は芝1200m)で5着に敗れながらも、その後盛り返して阪神3歳牝S、オークスを勝ったメジロドーベルのような例もあるので、まだ評価を決めるのは早いでしょう。いずれも馬っぷりの良さは目立っていたので、今後の巻き返しを期待したいと思います。

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