2019年のダービー馬ロジャーバローズが6月25日に死亡しました。詳しいことは公表されていませんが、疝痛だったという情報もあり、病気だったようです。
まだ8歳と若く、産駒も昨年から走り始めたばかり。残念ながら今年の春のクラシックには出走馬がいませんでしたが、産駒のオーキッドロマンスが京王杯2歳S 3着、ファルコンS 2着の後、6月23日のパラダイスS(L)を逃げて快勝。今後の短距離での活躍が期待される中での訃報でした。
ロジャーバローズの2019年組といえば、日本ダービーでは、無敗でホープフルS、皐月賞とG1を連勝してきたサートゥルナーリアを中心に、若駒S、若葉Sとリステッド連勝から皐月賞2着のヴェロックス、デビュー3連勝で共同通信杯を制して皐月賞は3着だったダノンキングリーが圧倒的な3強に支持されました。
その3頭のみが単勝1桁で、4番人気は20倍を超えるというかなり偏った状況。中でも1番人気のサートゥルナーリアは1.6倍と圧倒的な人気で、これは平成になって無敗で皐月賞を制した馬は、故障で引退したアグネスタキオン以外すべて無敗のダービー馬になっているという事実も後押ししたと思います。
そんな中、ロジャーバローズは新馬勝ちの後、500万下を2戦目で勝ち上がるも、2番人気に支持されたスプリングSは好位から伸び一息で0.4秒差7着。皐月賞は断念したものの、京都新聞杯を逃げてクビ差2着に入り、なんとか賞金を加算してダービーに出走してきました。
父がディープインパクトで、母の半姉の娘にジェンティルドンナがいるという良血ではありましたが、成績的にはあまりインパクトはなく、93.1倍の12番人気は妥当な評価だったと思います。
しかしロジャーバローズは絶好の1番枠から好スタートを切ると、懸命に押す青葉賞馬リオンリオンにハナを譲り2番手。リオンリオンが1000m57.8とハイペースで大逃げを打つ中、冷静に離れた2番目を進みます。
そのまま直線に入ると、残り400mを過ぎてリオンリオンを交わして先頭。この時点で3番手ダノンキングリーとは2馬身ほど差があり、サートゥルナーリア、ヴェロックスなどはさらに3馬身後方という状況。
まだここでは3強が差してロジャーバローズを飲み込むだろうと見ていて、実際にダノンキングリーがじりじり伸びてきて、サートゥルナーリアやヴェロックスも差を詰めてきたのですが、残り200m手前でダノンキングリーが苦しくなって大きく外によれてしまい、サートゥルナーリアも伸び一息。
それでも残り100mを切ってダノンキングリーがロジャーバローズに迫るのですが、ロジャーバローズがクビ差振り切って栄光のダービーのゴールを先頭で駆け抜けたのです。
個人的にはサートゥルナーリアとダノンキングリーを中心に買っていたのですが、調教もパドックも高評価だったにも関わらずロジャーバローズまでは手が出ず。久々に日本ダービーが大穴決着になったということで、しばらく呆然としていたことを覚えています。
3強が2~4着に来たのはさすがだと思いましたが、勝てなければ意味がないので、各陣営は残念な気持ちがとても強かったと思います。その中で複雑な想いだったのは角居調教師でしょう。サートゥルナーリアとロジャーバローズの2頭出しで、圧倒的1番人気のサートゥルナーリアが4着に敗れ、人気薄のロジャーバローズが勝ったのですから。
そして鞍上の浜中騎手はこれがダービー初制覇。デビュー13年目で、菊花賞(2009年 スリーロールズ)やNHKマイルC(2014年 ミッキーアイル)、オークス(2015年 ミッキークイーン)、天皇賞(秋)(2015年 ラブリーデイ)などのG1勝ちはあったものの、6回目の挑戦での勝利は感慨深いものがあったでしょう。
その後夏休みに入ったロジャーバローズですが、陣営からは秋は凱旋門賞を目指すという発表があります。
2006年にディープインパクトが3位入線で失格になったあたりから、日本馬の悲願と言われるようになり、2010年ごろからは毎年のように日本から参戦するようになって、2012年、13年とオルフェーヴルが連続2着に入って大いに盛り上がります。その後は厚い壁に跳ね返されることが多かったのですが、挑戦は続いていたのです。
ロジャーバローズは先行できて2400mでも粘れるスタミナがあるので、好走の可能性はあるという判断だったのでしょう。
しかし調整を進めていた2019年8月上旬に屈腱炎が判明。すぐに引退と種牡馬入りが決まったのです。突然の出来事で驚きましたが、再び走れるようになるまではかなりの時間がかかることが予想され、また復帰したとしても同じパフォーマンスを見せられるかわかりません。ダービー馬という名前を背負っている以上、仕方がないのでしょう。血統的には良血であり、種牡馬としても期待されていたため、早めの判断がされたのだと思います。
実は同じ8月に久しぶりに馬産地巡りをすることになり、8月22日に静内にあるアロースタッドを訪れました。ビッグアーサー、ナカヤマフェスタ、ワンアンドオンリー、ディーマジェスティ、トランセンドなど多くのビッグネーム種牡馬に会うことができたのです。
そんな中1つだけ馬名がなくて扉が閉まっている馬房があり、そこは空いているのかと思っていたのですが、途中でスタッフが扉を開けると、中から馬が顔を出します。
見学者が集まってきて写真を撮る中、誰だかわからずとりあえず写真を撮り、中央の通路側に回って見ると、扉に真新しい銘板がついていて、そこにロジャーバローズと書かれていたのです。後で見たニュースによると、この日の朝にアロースタッドに着いたとのことで、初日のお披露目に立ち会うことができたのです。
まだ3歳ということで、ほかの種牡馬に比べると圧倒的に若々しく、意外と元気いっぱいな様子でした。
その後、ロジャーバローズは2年ごとに浦河にあるイーストスタッドと行き来するシャトル種牡馬となっていました。
今後の活躍が期待された中での早すぎる訃報は、残念で仕方ありません。5月から体調を崩していたらしいので、今年の種付けがどれぐらいできたのかはわかりませんが、今年の3歳から5世代の仔がいるはずです。その中から、自身の能力を受け継いだ活躍馬が出て、その血統を残していくことを願いたいと思います。