テンハッピーローズは買えたか? ~ヴィクトリアM

今年のヴィクトリアMは、15頭立て14番人気のテンハッピーローズが勝つという衝撃的な結果で終わりました。
テンハッピーローズはエピファネイア産駒の6歳牝馬で、栗東の高柳大輔厩舎所属。前走までで23戦5勝。おもな勝ち鞍は3走前のリステッド朱鷺S(新潟芝1400m)。重賞は2歳時のアルテミスS3着が最高順位で、今年に入ってからは、京都牝S 7着(2 1/4差)、阪神牝S 6着(2 3/4差)。
津村騎手とは4走前のパラダイスSからコンビを組んで、1・0・1・2という成績でした。

今年はG1馬が2頭と比較的手薄なメンバーとはいえ、10頭が重賞勝ち馬であり、その中で重賞未勝利馬はどうしても見劣りします。また芝1600mの持ちタイムも15頭中14位で、かつ7戦して2着までと勝ちはなく、5勝の内訳は芝1400mで4勝、芝1200mで1勝。
あえてプラスの要素をあげてみれば、東京芝の成績が1・2・2・1と安定していることぐらいでしょうか。
とはいえ正直言って芝1600mのG1では、たとえ牝馬限定戦とはいえ買える要素はほぼないという成績だったと思います。

しかし好スタートから徐々に下げていって、後方の外を追走したテンハッピーローズは、絶好の手応えで直線は馬場の良い外に出すと、残り300mぐらいから一気に加速して内に切れ込みながら各馬を交わしていき、残り200mでは先に抜け出したフィアスプライドの2番手。さらに残り100m手前でフィアスプライドを交わして先頭に立つと、さらに末脚を伸ばし、最後はフィアスプライドに1 1/4馬身差をつける完勝でした。
勝ちタイムは、それまでの持ちタイムを1.6秒も上回る1.31.8で、上りもメンバー3位タイの33.9と堂々たるもの。これまで重賞未勝利だったとは思えないような、すばらしいパフォーマンスを見せてくれました。

【テンハッピーローズ】フィアスプライドを交わして先頭に立ちます

それではその勝因は何で、またどうしたら買うことができたのでしょう。
これはいろいろ考えてみたのですが、まったくわかりません。600m33.8とやや速めのペースに恵まれた面はありますが、それだけで勝てるほど甘くはないでしょう。
レース前の陣営コメントを見てみると、とにかく状態は良いと言っていたのですが、追い切りは特に目立つものではなく、またパドックの様子もあまり目を引きませんでした。人気薄の中では、5着に入ったルージュリナージュは調子良さそうに見えたのですが、残念ながらテンハッピーローズは見抜けませんでした。

【テンハッピーローズ】パドックでもそれほど目を引く感じではありませんでした

完全にお手上げ状態ですが、1つだけ気になることがあります。それはテンハッピーローズがということではなく、ヴィクトリアMというレースの特徴です。一言でいえば、荒れるレースだということ。まあ多くに人がすでにご存じではありますが。
今年も含む19回のうち、実に10回で2桁人気の馬が3着以内に入っているのです。そのうち1着は3回(2007年 コイウタ:12番人気、2014年 ヴィルシーナ:11番人気、2024年 テンハッピーローズ:14番人気)、2着5回、3着3回(2015年は2,3着が2桁人気)。
2年に1回以上の確率で2桁人気が馬券にからんでおり、6年に1回は2桁人気が勝つという状況なのです。ちなみに1着馬の平均人気を出してみると4.95ということで、4,5番人気が勝つのが当たり前と言えます。つまり人気馬を信じてはいけないレースというのが結論と言えるでしょう。

そんな中、今年も継続してしまった不思議な法則がありました。これは毎年のようにヴィクトリアMでは書いているのですが、昨年あげたのは次の3つでした。
(1)前走1着馬は勝てない
(2)2番人気は連対できず3番人気は2着まで
(3)前走2桁着順からも連対あり
このうち(3)は無かったのですが、(1)(2)は見事に継続しました。

(1)の今年の対象はコンクシェルとマスクトディーヴァの2頭。特にマスクトディーヴァは1番人気に支持されましたが3着に終わりました。
そして個人的に特に気になったのは(2)でした。今年は前売りからずっとマスクトディーヴァが2番人気で、ついに不思議な法則が終わるか、マスクトディーヴァが飛ぶかと注目していたのですが、なんと直前に人気が入れ替わり、マスクトディーヴァは1番人気になって、ナミュールが2番人気に。そしてナミュールは出遅れも響いて8着に沈んでしまったのです。3番人気ウンブライルも6着で、法則は継続になりました。

2番人気の不成績はかなり強力で、全19回の2番人気の成績は2・0・1・16。第1回の2006年と、2011年に2番人気が勝っているのですが、その後は2016年に3着が1回あっただけ。今年で8年連続で2番人気は3着以内に入っておらず、連対は実に13年間していないのです。
来年もこれが続くのか、今から興味津々です。

最後に、津村騎手が初G1制覇となりました。実直な2枚目という印象で、個人的には好感を持っていたのですが、なかなかG1には縁がありませんでした。
特に記憶に残っているのは、やはりカレンブーケドールとのコンビでしょうか。カレンブーケドールといえば、G1で3回、G2でも3回2着がありながら、結局重賞未勝利で終わったのですが、そのうちG1 3回、G2 2回が津村騎手とのコンビでした。津村騎手だから勝てないというような心無い声もあったのですが、別の騎手が乗っても勝てなかったので、少なくとも津村騎手だけのせいではなかったでしょう。

津村騎手もまさか今日G1を勝つとは思っていなかったようで、先頭に立ってからゴールまでがとても長かったと言っていました。そして初めてのG1でのウイニングラン。スタンド前に戻ってくると、ラチ沿いに馬を寄せて、みんなに馬を間近で見せながら感謝を示していたのが、とても印象的でした。

今回は超人気薄でノープレッシャーでの騎乗ということもあったでしょうが、今日の騎乗をきっかけに、いずれは人気でG1を勝つような騎手になっていくことを、ぜひ期待したいと思います。

【テンハッピーローズ】ウイニングランではラチ沿いまで来て観衆に馬を見せていました。
【津村明秀騎手】誠実にインタビューに答えるところも好感が持てます

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