”マジックマン”の面目躍如でした ~桜花賞

近年の桜花賞は、トライアルではなく間隔をあけた馬が勝つ傾向が強くなっています。
最後にトライアル経由で勝ったのが2017年のレーヌミノル(フィリーズR)で、その後は昨年までの6年間で阪神JFからが2頭、あとはシンザン記念、朝日杯FS、エルフィンS、クイーンCが各1頭と、いずれも前走は2月以前の馬が勝っています。

それを受けての今年の桜花賞ですが、やはり4番人気まではトライアルを使っていない馬たちが並びました。
1番人気は阪神JFを3戦無敗で制したアスコリピチェーノ。新潟2歳Sも勝っており、ダイワメジャー産駒でマイルはぴったりのイメージ。関東の黒岩厩舎所属ですが栗東に長く滞在しており、きっちり調教を行いながらも馬体の成長が期待できる12kg増。さらに追い切りもパドックの様子も素晴らしく、1番人気にふさわしい状態だと個人的にも思いました。
2番人気は、その阪神JFでアスコリピチェーノにクビ差まで迫ったステレンボッシュ。こちらも同じ関東の国枝厩舎所属で、やはり栗東に滞在。阪神JFを見てもアスコリピチェーノと力量は同等ですが、馬体重が-4kgと休み明けにも関わらず減っており、また追い切りもパドックも、アスコリピチェーノにはおよばない印象を持ちました。
あとは3番人気がクイーンCを差し切って勝ったクイーンズウォーク、4番人気がアルテミスSを勝ったチェルヴィニアとなりました。

予想に当たってアスコリピチェーノとステレンボッシュのどちらを上にするかは悩みましたが、決め手は阪神JFのゴール前でした。先に抜け出したアスコリピチェーノに対して、ステレンボッシュは後ろから差し切る勢いで伸びてきたのですが、内からステレンボッシュが並びかけた時に、アスコリピチェーノは再度伸びて抜かせなかったのです。
その勝負根性があれば、今回もアスコリピチェーノが先着する可能性が高いのではと思いました。

レースでは2頭ともスタートが今一つだったこともあり中団につけます。北村宏騎手騎乗のアスコリピチェーノの方が前で、それをマークするようにモレイラ騎手のステレンボッシュは直後のすぐ内側。
そのまま2頭は並んで4コーナーを回ります。直線に向くときに、北村宏騎手はステレンボッシュを内に閉じ込めようとしたのか馬体を合わせに行きますが、モレイラ騎手は外に出したかったのかアスコリピチェーノと接触。勢いでアスコリピチェーノは外にはじかれてしまいます。
ここで2馬身ほど前に出たステレンボッシュに対して、アスコリピチェーノの北村宏騎手は懸命に追いますが、いったん開いた差はなかなか詰まりません。
2頭は同じ脚色で前を追い、残り100mを切ってステレンボッシュが先頭。アスコリピチェーノも懸命に差を詰めますが、3/4馬身差まで迫ったところがゴール。ステレンボッシュが阪神JFの雪辱を果たして、桜の女王の称号を手に入れました。

ステレンボッシュの勝因は、阪神JFとは反対に直線でアスコリピチェーノよりも前にいたことでしょう。阪神JFの時ステレンボッシュはルメール騎手が乗っていたのですが、そのレース映像を見て、おそらくモレイラ騎手は、アスコリピチェーノに勝つためには直線で前にいる必要があることを理解していたと思います。そのため早めに動いたのでしょう。
逆に北村宏騎手としては、4コーナー過ぎに2馬身ほど前に出られたのが誤算だったと思います。おそらく並べば負けない自信があったでしょうから。その意味では、接触した場面が最大のポイントでした。

モレイラ騎手といえば、マジックマンの愛称で知られるように、肝心なところでまさにマジックのように勝ちきるのが印象的です。
馬の背中と並行に姿勢を低くした騎乗フォームといい、馬を意のままに操って、まさにピンポイントで抜け出す鮮やかさといい、毎回すばらしいなと思わされてきました。最近では昨年のJBCクラシックでのキングズソードや、東スポ杯のシュトラウスの騎乗が強く印象に残っています。
いずれも他の騎手に乗り替わったその後の成績がぱっとせず、余計にモレイラ騎手の騎乗技術のすばらしさを強調しているように思えます。

そんなモレイラ騎手ですが、昨年からは香港から母国ブラジルに拠点を移してオーストラリアなどで騎乗しているものの、以前のような成績を残せておらず、このままでは来年のJRA短期免許取得要件を満たせないという記事を読みました。そのためには、今年JRAのG1を2勝以上する必要があるというのです。それもあって、今年はG1が多くあるこの時期に来日したとのこと。
今回の短期免許は6/5までなので、安田記念までG1にすべて騎乗すればあと7回チャンスがあるということになります。

的確なレースの読みと、馬を操る技術に裏打ちされたモレイラ騎手の騎乗ぶりは、見ていてわくわくさせられるものがあり、個人的には来年以降も短期免許をとって参戦してほしい騎手の1人です。そのためにも、ぜひあと1つどこかでG1を勝ってもらいたいと思います。

そして桜花賞の結果を受けてのオークスの展望ですが、最有力となるのは距離伸びても問題なさそうなステレンボッシュでしょう。エピファネイア×ルーラーシップという血統からは、オークスでこそという印象です。オークス次第では、同じ国枝厩舎の偉大なる先輩アパパネやアーモンドアイに続く牝馬3冠も見えてくるかもしれません。
逆にダイワメジャー産駒のアスコリピチェーノは距離との戦いになるでしょう。
さらに1番の上りで僅差3着に追いこんできたキズナ産駒のライトバック、それに続く上りタイムで4着のスワーヴリチャード産駒スウィープフィートも有力になると思います。また今日の忘れな草賞を鮮やかに勝ったタガノエルピーダも朝日杯3着の実績があり、出てくれば無視できない存在になるでしょう。

逆に心配なのは、人気で負けたクイーンズウォークとチェルヴィニアの2頭です。
クイーンズウォークは中団の内につけていて、直線は一瞬伸びそうな気配もあったのですが、最後は伸びずに8着に終わりました。チェルヴィニアはやや掛かり気味に中団の外を進み、4コーナーは外から先団に取り付くも、早々に手ごたえが悪くなって後退し13着に終わりました。
どちらも久々だったとはいえ力はある馬であり、見せ場のないレースぶりは意外でした。とはいえ桜花賞で大敗しながらオークスで巻き返した馬も多いので、今後の動向に注意したいと思います。

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