”二重苦”だった4歳牡馬2強の評価は ~大阪杯

G1になって今年で8回目の大阪杯ですが、過去7回を見ていると比較的明確な傾向があることがわかります。それはこんなものです。

・内枠有利
・先行馬有利
・関西馬有利

まず内枠有利ですが、過去7頭の1着馬のうち6頭が9番より内枠で勝っています。これは次の先行馬有利と重なるのですが、要は内枠から好位を取ることが勝利への近道と言えるのでしょう。
例外は2018年に15番から勝ったスワーヴリチャードですが、この時は向こう正面で一気にまくって先頭まで行くという極端なレースをした結果で、それでも勝てるぐらいスワーヴリチャードの力が抜けていたともいえると思います。

次の先行馬有利ですが、過去7頭の1着馬の4コーナーの位置は、最も後ろだった2020年ラッキーライラックでも5番手。ペースが落ち着きやすく直線が短いこともあり、後ろから勝ちきるのは至難の業と言えるでしょう。

最後の関西馬有利ですが、過去7頭の勝ち馬はすべて関西馬。2着まで広げても6頭が関西馬で、昨年初めてスターズオンアースが2着に食い込んだという状況でした。同じ内回りの宝塚記念は関東馬も勝っているので、特殊なコースというわけではないのでしょうが、G2時代の1999年サイレントハンターを最後に24年も関東馬が勝てていないのが現実なのです。

それに加えて今年は、4歳牡馬のレベルを疑問視する声が多く聞かれました。
昨年の有馬記念で4,5番人気となったソールオリエンス、タスティエーラが人気を裏切ったあたりから言われ始めたのですが、今年になって先週までに行われた20の平地重賞(牝馬限定戦除く)で、4歳牡馬はわずかに3勝。そのうち芝では、京都金杯コレペティトールとシルクロードSルガルの2勝で、中長距離ではまったく勝てていないのです。

そういう意味では、大阪杯に出走するソールオリエンス、タスティエーラは、4歳牡馬でかつ関東馬と、二重苦を背負っているような状況でした。通常前年のクラシックで安定して上位争いをした4歳馬が大阪杯に出てくれば、人気の中心になるのは当然でしょう。
しかしタスティエーラは1番人気になったものの、そのオッズは4.4倍。ソールオリエンスは前走中山記念4着が嫌われたのか8.2倍の5番人気という評価になったのです。

個人的にも予想に当たってはかなり悩みました。上記2頭を中心にしないとして、どの馬から入るか。
まず関西馬の5歳馬ということでプラダリアに注目したのですが、成績にムラがあり、さらに直線平坦な京都に良績が集中していて坂のあるコースに実績がないという点がひっかかりました。
次にローシャムパークですが、オールカマーの勝ち方が印象深く、力があることは認めるのですが、関東馬でかつ阪神を走ったことがないこと。さらに鞍上の戸崎騎手も関東を中心に騎乗していることも、中心とするのをためらわせました。

結局消去法でベラジオオペラを中心にしたのですが、まず理由としては4歳馬ではあるものの関西馬で、かつ3歳暮れのG3チャレンジC(阪神芝2000m)で57kgを背負って古馬に勝った実績があったことがあげられました。
もちろん調教の走りも良く、パドックでも落ち着いて外を周回し、調子の良さをうかがわせました。

唯一11番枠を懸念したのですが、横山和騎手は好スタートから積極的に押していって、逃げるスタニングローズの2番手につけます。この時点で枠順の不利はなくなりました。さらに驚いたことは、押していったにも関わらず、スタニングローズの半馬身差外につけると、そこでぴったりと折り合ったのです。押していくと行きたがる馬が多い中、これはちょっと驚かされました。
そのままベラジオオペラが2番手を進む中、1000mを1.00.2というスローペースにタスティエーラは行きたがり、ローシャムパーク、ソールオリエンスは向こう正面で後方から大きくポジションをあげていきます。
ベラジオオペラは直線に入って追い出すと、残り200m手前でスタニングローズを交わして先頭。外からローシャムパーク、内からルージュエヴァイユが差してくるものの、それぞれクビ、さらにハナ差で抑えて、初のG1タイトルを獲得しました。

管理する上村調教師は、サイレンススズカの最初の主戦騎手を務めたり、ナムラコクオーでの活躍などが印象深いのですが、初のG1制覇となりました。

1番人気に推されたタスティエーラは、4コーナー4番手から懸命に前を追うものの、直線で手ごたえが悪くなりずるずると後退。0.7秒差の11着と、有馬記念につづいて掲示板を外す結果になりました。3ヶ月ぶりとはいえ鉄砲実績はあり、調教もパドックも良く見えたので、敗因はつかめません。
ただし向こう正面では行きたがっていたので、久々と初めての阪神コースが合わなかったのでしょうか。とはいえ菊花賞まではかなり安定感があり、有馬記念も不利が大きかったと言われているので、今回の負け方は陣営にもショックが大きいでしょう。
血統的に早熟とは思えないので、今後の巻き返しに期待したいと思います。

5番人気のソールオリエンスは、最初は後方につけるものの、そのままではノーチャンスと見たのか、コンビが復活した横山武騎手は、ローシャムパークのあとを追うように向こう正面で一気にポジションをあげて4番手につけます。そのまま4コーナーはタスティエーラの外を回ります。
直線はじりじりと最後まで脚を伸ばすものの、皐月賞で見せたような爆発力はなく、0.5秒差7着まで。
止まったわけではないのですが、3歳時の活躍を思うと不満の残る結果でした。
こちらも明確な敗因はわかりませんが、向こう正面で同じように動いたローシャムパークが2着になったことを見ても、そこまでの力がなかったように思えます。今回大きく馬体重を減らしており、昨秋以降の成長が感じられないのも気になるところです。

とはいえ、4歳馬のベラジオオペラがG1を勝ったことで、少なくとも4歳牡馬の世代レベルが低いという論調は下火になるでしょう。次は天皇賞(春)を予定しているというドゥレッツァの動向が気になります。金鯱賞は大きく離されたとはいえ、59kgを背負って2着と格好はつけているので、巻き返しを期待したいところです。

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