2023年の振り返りとJRA賞予想&ベストレース

今回も年末に当たり2023年を振り返って総括し、JRA賞を個人的に予想するとともに、ベストレースを選んでみたいと思います。

2023年は5月からのコロナの5類移行にともない、ほぼ制限がなくなったこともあり、競馬場に賑わいが戻ってきました。2020年2月を最後にさまざまな制約があったので、ほぼ3年ぶりということになります。日常生活を制限なく送れることのありがたさを、あらためて感じることになりました。

そして2023年の競馬界の話題の中心は、やはりイクイノックスの存在だったと思います。ドバイシーマクラシックで驚異的な強さを見せて逃げ切り勝ちを収め、そこでついたレーティングは今年の世界最高となって、結局引退するまで世界最強の称号を譲ることはありませんでした。さらに天皇賞(秋)で見せた1.55.2の驚くべきレコードタイムや、ジャパンCでの次元が違う印象を与えるパフォーマンスは、世界最強の名に恥じないものだったと思います。
またパンサラッサのサウジカップ逃げ切り勝ちや、ウシュバテソーロのドバイワールドカップ制覇など、数は多くなかったものの、海外の大きなレースをきっちりと勝ちきったのは、長年の経験が生きていると感じました。

国内の古馬中長距離路線はイクイノックス一色でしたが、その中で同期のダービー馬ドウデュースが有馬記念で復活勝利をおさめたのは、大きな話題となりました。個人的には、秋2戦の走りやきついローテーションなどから、やや軽視してしまったのですが、復活がキーワードの有馬記念で、同じくケガから復活した武豊騎手が勝つという、絵になるレースにやられたなと思いました。

それでは、JRA賞について部門ごとに振り返りながら予想してみます。
まずは確実なところから。

●最優秀2歳牡馬
過去5年は2歳牡馬のG1馬が2頭生まれて、毎年どちらが選ばれるかが焦点になっていたのですが、今年はホープフルSを牝馬が制することになり、6年ぶりに無風の部門となりました。
ホープフルSをシンエンペラーかゴンバデカーブースが勝っていればかなりの混戦だったのでしょうが、シンエンペラーは2着でゴンバデカーブースは当日取り消し。ここは1番人気に支持された朝日杯FSを、余裕で勝ったジャンタルマンタルで問題ないでしょう。

●最優秀3歳牝馬
今年のG1勝ち馬は、リバティアイランド(桜花賞、オークス、秋華賞)、ブレイディヴェーグ(エリザベス女王杯)の2頭。ブレイディヴェーグのエリザベス女王杯でのパフォーマンスは素晴らしいものでしたし、もしリバティアイランドがエリザベス女王杯に出走していれば、かなり見ごたえのあるレースになったのではと思われます。しかし牝馬3冠の価値はかなり高いですし、ジャパンCでイクイノックスに4馬身離されたとはいえ2着になったことも称賛されます。やはりここはリバティアイランドで決まりでしょう。

●最優秀4歳以上牡馬
今年国内の芝G1を勝った4歳以上牡馬は、ファストフォース(高松宮記念)、ジャックドール(大阪杯)、ジャスティンパレス(天皇賞(春))、イクイノックス(宝塚記念、天皇賞(秋)、ジャパンC)、ドウデュース(有馬記念)の5頭。ほかに海外ではパンサラッサがサウジC、イクイノックスがドバイシーマCを勝っています。
この中で4勝をあげているイクイノックスの実績が抜けており、文句なく、おそらく満票で選ばれるのではないでしょうか。

●最優秀マイラー
前回までの最優秀短距離馬がスプリンターとマイラーの2つに分かれるということで、今回から始まる新しい部門です。従来通り古馬のレースが対象になる前提だと、対象はソングライン(ヴィクトリアM、安田記念)、ナミュール(マイルCS)ということになるでしょう。
ソングラインは秋はBCマイルに挑戦(5着)して、それを最後に引退したのでマイルCSには出ていません。対するナミュールはヴィクトリアM7着、安田記念16着といずれも着外。急遽乗り替わった藤岡康騎手がマイルCSで鮮やかに復活の勝利を飾ったのはすばらしいですが、やはり実績的にソングラインということになるでしょう。

それでは、以下は迷うところを。

●最優秀2歳牝馬
ここは毎年阪神JFを勝った馬が選ばれる無風の部門で、レース後は勝ったアスコリピチェーノで決まりだと思っていました。しかし今年はホープフルSがG1昇格後初めて、牝馬のレガレイラが優勝し、候補が2頭となったのです。
直接対戦はないので比較が難しいのですが、クビ差で2着馬を抑えたアスコリピチェーノに対して、レガレイラは後方から評判の牡馬を3/4馬身差し切っており、2000mという距離を考えてもレガレイラのパフォーマンスの方が価値が高いように思われます。

●最優秀3歳牡馬
クラシックを勝ったのは、ソールオリエンス(皐月賞)、タスティエーラ(ダービー)、ドゥレッツァ(菊花賞)の3頭。さらにNHKマイルCをシャンパンカラーが勝っています。
この中で3冠レース皆勤はソールオリエンスとタスティエーラの2頭で、それぞれ1・2・3着と2・1・2着。有馬記念でもタスティエーラ6着、ソールオリエンス8着とほぼ互角の成績。とはいえ直接対決ではタスティエーラの3勝1敗であり、またダービー馬の称号は大きいので、僅差でタスティエーラとなるのではないでしょうか。

●最優秀4歳以上牝馬
ここ数年は牡馬混合のG1を勝つ牝馬が多く、今年もソングライン(安田記念)、ママコチャ(スプリンターズS)、ナミュール(マイルCS)と牡馬に勝つ牝馬が続出しました。しかし古馬牝馬G1ではヴィクトリアMはソングラインが勝ったものの、エリザベス女王杯は3歳馬のブレイディヴェーグに勝たれてしまいました。
おそらく他部門との兼ね合いになるのではと思いますが、ソングラインが最優秀マイラーに選ばれる前提で、ナミュールが妥当ではと思います。G2の富士Sを勝ち、香港マイルで日本馬最先着の3着は、評価できるのではないでしょうか。

●最優秀スプリンター
スプリントG1では、高松宮記念はファストフォース、スプリンターズSはママコチャが勝ちました。しかし2頭とも他にG3 2着があるだけで重賞勝ちはなし。
ここはかなり票が割れると思いますし、どちらも決め手に欠ける印象です。こういう場合、より最近のレースの方が記憶に残っていることもあり、またファストフォースが12番人気だったのにたいしてママコチャは3番人気。ただママコチャはハナ差勝ちだったのに対して、ファストフォースは1馬身差だったのは気になりますが。
ということで個人的には現役を続けるという将来性込みでママコチャを押したいと思います。

●最優秀ダートホース
JRAのダートG1は、フェブラリーS、チャンピオンズCともにレモンポップが制しました。これだけを見れば、レモンポップで文句なしということになります。ところが今年1度も中央のレースに出走していないにもかかわらずG1を3勝したウシュバテソーロの存在が悩ましいところです。しかもドバイワールドカップを勝つという快挙に加えて、実力馬が勢ぞろいした東京大賞典も快勝。その2,3着がチャンピオンズCの2,3着ということで、馬場や距離が違うとはいえ、2頭は互角ともいえるのです。
しかし同じような状況が2011年にもありました。この年東京競馬場で行われた南部杯も含めて、JRAダートG1を3戦すべて制したトランセンドに対して、スマートファルコンは1度も中央のレースを使わずに帝王賞、JBCクラシック、東京大賞典を含む5戦全勝の快挙。この年の最優秀ダートホースの称号はトランセンドに贈られたので、それに倣えばやはりレモンポップということになるのではないでしょうか。

●最優秀障害馬
ここは中山GJを勝ったイロゴトシと、中山大障害を勝ったマイネルグロンの争いになります。
イロゴトシはレース史上最大着差となる3.1秒差で大勝。しかしそれ以外に重賞勝ちはなく、東京ハイジャンプでは6着に敗れています。そしてその東京ハイジャンプを勝って、中山大障害では前年の勝ち馬ニシノデイジーに10馬身差をつけて1着となったのがマイネルグロン。そのレースぶりは、次世代の障害界のスター誕生をイメージさせるものでした。ということで、おそらくここはマイネルグロンとなるのではないでしょうか。

そして年度代表馬ですが、海外を含むG1を4勝したイクイノックスで文句なしでしょう。帰国初戦の宝塚記念こそクビ差の辛勝でしたが、ドバイシーマクラシック、天皇賞(秋)、ジャパンCで見せたパフォーマンスは、かつて見たことがないような種類のものであり、今後同様な馬が現れることがあるのかと思わされました。世界最強の馬を身近で見ることができたのは、貴重な経験だったと言えるでしょう。

続いて2023年のベストレースです。
個人的には、イクイノックスが勝った各レースが強く印象に残りました。それぞれ展開も位置取りも異なるものの、最終的には勝ちきる、ある意味衝撃的な勝ち方でした。

しかし絵になるという意味では、やはり有馬記念ではないでしょうか。昨年の凱旋門賞で大敗したドウデュースは、帰国初戦こそ勝つものの、ドバイは現地で取り消し。秋は天皇賞(秋)、ジャパンCと勝てず、しかも天皇賞(秋)の日に武豊騎手が騎乗馬に蹴られて乗り替わり。
そんな状況でも2番人気に支持されて臨んだ有馬記念で、後方から3コーナーで一気にまくって4コーナーでは先団につき、スターズオンアースとの競り合いを制しての1着。人馬ともに鮮やかな復活劇を見せてくれました。
多くの人の感動を呼んだという意味でも、今年のベストレースにふさわしいと思います。

今年の有馬記念を見て3歳牡馬の不振が気になったのですが、それは2024年の競馬にダイレクトに影響してきます。古馬の中心であるべき4歳世代の存在感が薄いと、やはり盛り上がりに欠けてしまうきらいがあると思うのです。
とはいえタスティエーラもソールオリエンスも、前が詰まったり不利があったりと、決して力負けではないと思います。また菊花賞馬のドゥレッツァも復活してくるでしょうから、牝馬のリバティアイランドやブレイディヴェーグなどとともに、ぜひ来年は活躍して盛り上げていくことを期待したいと思います。

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