世界No.1をさらに印象付ける衝撃的なレースでした ~天皇賞(秋)

4月に「ロンジンワールドベストレースホースランキング」でレーティング129を獲得して世界No.1の評価を得たイクイノックスでしたが、その後凱旋門賞を快勝したエースインパクトにも抜かれることなく1位をキープ。秋の初戦でどんなパフォーマンスを見せるのかが注目されました。

今年の天皇賞(秋)は登録の時点で3歳馬の姿はなく、頭数もわずか13頭とイクイノックスの前に半ば白旗をあげたような状況でした。さらに期待された昨年の2冠牝馬スターズオンアースが取り消し、結局グレード制導入後では最少頭数となる11頭でのレースとなったのです。

そんな中でイクイノックスに対抗できる存在と注目されたのが、昨年の日本ダービーで実際にイクイノックスを破っているドウデュースでした。
ドウデュースは昨年の秋は凱旋門賞に挑戦するも19着に大敗。その後は調子が整わずに下半期は全休。ところが懸念された今年初戦となる京都記念は、3 1/2馬身差で快勝して復活ののろしを上げ、勇躍ドバイターフに挑戦しようと渡航したものの、跛行で取り消しとまさにアップダウンの繰り返し。
ようやく調子を整えて、再びの復活を期して出走してきたのです。

実質8か月半ぶりのレースとなったのですが、調教を見る限りは好調そうで、厩舎サイドや武豊騎手からも強気のコメントが出ていて、2強対決のムードは盛り上がっていました。
ところが午後になって衝撃のニュースが流れます。武豊騎手が5R終了後に下馬する際に、騎乗馬に足をけられて負傷し、9R以降が乗り替わりとなったのです。新たに指名されたのはリーディング上位のベテラン戸崎騎手でしたが、今まで騎乗したことがないということでは、大きなハンデとなったことは間違いないでしょう。

イクイノックスもドウデュースも休み明けだったこともあり、パドックは注目でした。そしてこの2頭は甲乙つけがたいぐらいに良く見えたのです。
イクイノックスはトモの力強さがさらに増した印象で、毛ヅヤも良く、ゆったりと落ち着いた中に適度な気合乗りも見せて、とてもよい状態に見えます。対するドウデュースもリズミカルな歩様で適度な気合乗り。さらにトモの踏み込みも深く、休み明けという感じがしませんでした。

【イクイノックス】トモの筋肉がすばらしく、気合も乗ってとてもよく見えました

結局イクイノックスが1.3倍の1番人気で、ドウデュースが4.3倍の2番人気。3番人気は2桁となる11.4倍で札幌記念圧勝のプログノーシスという、前日発売とほぼ変わらないオッズに落ち着きました。

レースは予想通りジャックドールがハナを切り、2番手がガイアフォース。そしてイクイノックスは好スタートから3番手につけます。ドウデュースはその直後でイクイノックスをマークする形ですが、行きたがるのを抑えているように見えます。
ジャックドールのつくるペースは、1000mが57.7と昨年のパンサラッサの57.4よりは遅いものの、かなりのハイペース。これで果たして最後までもつのかと不安になります。
そのままの状況で直線に向くと、馬なりのイクイノックスに対して、後ろのドウデュースをはじめ各馬の騎手たちは懸命に追いだします。しかし余裕の脚色のイクイノックスは、残り400mでジャックドールを交わすと、先頭に立っていたガイアフォースを残り300m手前で交わし、あとは後ろを離す一方。
残り200mでは3馬身ほど抜けて、早くもセーフティリード。そこからはムチを入れることもなく、ゴール前は流す余裕で、最後は後方から追いこんできたジャスティンパレスに2 1/2馬身差をつける圧勝でした。

【イクイノックス】ガイアフォースを交わすと、突き放していきます

しかもその勝ちタイムは、1.55.2のJRAレコード。それまでのトーセンジョーダンの1.56.1を0.9秒も上回る驚きの時計でした。
ハイペースでジャックドールが逃げたことによりつくられたイクイノックスのレコードタイムですが、それを3番手で追走して、上りは最速のジャスティンパレスに0.5秒劣るものの、メンバー3位となる34.2。逃げたジャックドールが最下位に沈む中、余裕で勝ちきったあたり、すでに従来の常識を超えた強さを手に入れているのではないかと、本当に驚かされます。まさに衝撃の結果と言えるでしょう。

【イクイノックス】天覧競馬ということで、天皇皇后両陛下に馬場で頭を下げた後、喜びを表すルメール騎手
【イクイノックス】レース後に表示されたレコードタイムには驚かされました

これでG1を5連勝。次走はジャパンCの予定ですが、今日の走りを見る限りは、通過点となる可能性が高いでしょう。唯一の懸念は、レコードタイムで走った反動ですが、ルメール騎手の話ではまだ余裕があったとのことなので、あまり心配はいらないように思えます。
イクイノックスが来年も現役を継続するのかはまだわかりませんが、もし走るのであれば、アーモンドアイのG1 9勝というレコードの更新も見えてくるでしょう。どんな走りを見せてくれるのか、とても楽しみではあります。

対するドウデュースは直線で手応えが怪しくなり、1.4秒差7着と国内では初めて着外となる結果に。今回は乗り替わりとなる不運がありましたし、長期休み明けということもあったので、次走以降では巻き返せるのではないでしょうか。また武豊騎手とのコンビで、輝きを取り戻すことを期待したいと思います。

ところで6番人気ながら2着に入ったジャスティンパレスですが、個人的にはひそかに期待していました。それは天皇賞(秋)の歴史の中で、意外と長距離が得意な馬たちが上位に来ていたからです。
たとえば2000年1着、2001年2着となったテイエムオペラオー。2000年に秋の古馬中長距離G1を3連勝するのですが、一番懸念されたのが距離の短い天皇賞(秋)でした。得意の重馬場になったとはいえ、メイショウドトウに2 1/2馬身差をつける強い勝ち方を見せたのです。
他にも1996年2着のマヤノトップガン。2002年2着のナリタトップロード。新しいところでは2020年2着のフィエールマン。またメジロマックイーンも降着になったとはいえ、大差で1位入線しているのです。

理由は定かではないですが、長距離が得意なステイヤータイプの馬は、瞬発力より持続力に優れているため、直線が長く坂のある東京の2000mは、意外とあっているのではないかというのが、個人的な推理です。
もちろんすべての長距離得意な馬にあてはまるわけではないですが、覚えておいて損はないのではというのが、今年のレースを見ての感想でした。

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