ドゥラメンテのすごさとドゥレッツァへの期待 ~菊花賞

今年の菊花賞は、皐月賞馬とダービー馬がそろって出走するのが23年ぶり(春2冠を同一馬が制した年を除く)ということが話題になりました。23年前の2000年といえば、エアシャカールとアグネスフライトが春2冠を分け合った年。それ以来ということで、感慨深いものがあります。
その大きな原因の一つは、やはり長距離レースの価値低下や、海外競馬に遠征しやすくなったということがあるでしょう。

まず前者ですが、これは世界的な流れで、イギリスのセントレジャーにあたる牡馬3冠目のレースは、距離が短縮されたり、古馬に開放されたりと、体系が変わっている国も多いと聞きます。日本の菊花賞はなんとか3000mで実施されていますが、春2冠を勝った馬の出走はかなり少なくなっています。
後者については、特に凱旋門賞への注目が上り、また関係者の経験値も上がって遠征しやすくなったこと、JRAが出走馬に協力金を支給していることなども影響しているでしょう。

この10年で見ても、3冠馬となったコントレイルを除くと、皐月賞馬は2016~2018年に3頭が菊花賞に出走しているものの、ダービー馬はわずかに2014年のワンアンドオンリー1頭だけ。故障した馬もいますが、多くは凱旋門賞や天皇賞(秋)、ジャパンCに向かっており、菊花賞はハナから選択肢にない感じで、長距離戦が好きな身としては、寂しい思いをしてきました。

しかし今年は春2冠を分け合ったソールオリエンスとタスティエーラが出走してきたのです。
その要因としては、世界No.1ホースのイクイノックスやドウデュースなどが天皇賞(秋)からジャパンCへの出走を予定しており、かなりレベルが高いため、距離が長くても3歳馬相手の方が戦いやすいという計算もあるのではないかと言われています。
また去年の凱旋門賞で、タイトルホルダーやドウデュースなどが惨敗した影響もあるでしょう。

その菊花賞で人気になったのは、やはり春の2冠を制した2頭でした。
1番人気は皐月賞を勝ってダービーはクビ差2着だったソールオリエンス(2.7倍)。秋初戦のセントライト記念は2着に敗れましたが、外枠から4コーナーで大外に振られた影響もあり、最後は伸びてきていて悲観する内容ではなかったと思います。
2番人気はダービー馬のタスティエーラ(4.7倍)。ダービー以来のぶっつけと、ダービーとの2冠馬は長い歴史の中でタケホープ1頭しかいないという事実も影響しての、やや差のある2番手評価ではないでしょうか。
以下、神戸新聞杯を勝ったサトノグランツ(5.0倍)が続きますが、優勝したのは4番人気のドゥレッツァ(7.3倍)でした。

ドゥレッツァは昨年11月の東京芝2000m未勝利をクビ差で勝つと、年明けのセントポーリア賞に登録。ところが右前脚の跛行で取り消しとなってしまいます。その後、4/2の山吹賞を1馬身差で勝つものの、残念ながら春のクラシックには間に合いませんでした。
6月の東京で2勝Cを勝つと、前走は8/19に新潟芝2200m3勝Cの日本海Sに出走。ここを中団から突き抜けて1/2馬身差で勝利。見事に未勝利から3連勝を飾ります。

古馬相手に2連勝は価値があるものの、あくまで条件戦であり、それをどこまで評価するべきかは、なかなか難しいものがあります。また前走条件戦からの馬は菊花賞で2,3着にはたびたび来ているものの、1着となると2009年のスリーロールス(前走は1000万下 野分特別1着)までさかのぼることになります。
しかも春の2冠を制した馬が2頭とも出てきているので、ドゥレッツァを中心にするには、かなりの勇気が必要でしょう。

レースでは、ルメール騎手はドゥレッツァを積極的に前に行かせて、なんと1周目の3コーナーでは逃げると思われたパクスオトマニカを交わしてハナに立ちます。阪神では3年前のタイトルホルダーが逃げ切っていますが、京都では1998年のセイウンスカイが逃げ切ったのが最後。個人的には、この時点でドゥレッツァの勝ちはないだろうと思いました。
しかし2コーナーでパクスオトマニカを前に行かせると、向こう正面では抑えて2周目3コーナーは3番手。ところがそこから再加速すると、2周目4コーナーはリビアングラスに次ぐ2番手で回り、残り250mで先頭に立つとあとは離す一方。2番手にタスティエーラ、最後は3番手にソールオリエンスがあがるも、タスティエーラに3 1/2馬身差、さらにソールオリエンスには1 1/2差をつけての完勝でした。
ドゥレッツァのスタミナと鞍上の指示に従う素直さや自在性、それにルメール騎手のペースを読み切った采配には、ただただ脱帽でした。

そして感じたのは、ドゥラメンテの種牡馬としての優秀さです。
最近はイクイノックスやソールオリエンスなどを出したキタサンブラックに注目が集まっていますが、ドゥラメンテ産駒は先週の3冠牝馬リバティアイランドに続いて2週連続のG1制覇。ほかにもNHKマイルCを勝ったシャンパンカラーや、この秋の活躍が期待されるタイトルホルダー、スターズオンアースなど、マイルから長距離まで幅広く活躍する、多才な馬たちがそろっています。
返す返すも早世したことが惜しまれる種牡馬だと思います。

最も強い馬が勝つと言われる菊花賞を、すばらしい勝ち方で制したドゥレッツァ。同じ父を持つ2年前の菊花賞馬タイトルホルダーは、その後天皇賞(春)、宝塚記念も制して、一時は現役最強馬ともいわれました。
そのタイトルホルダーよりも自在性があり安定感もあるドゥレッツァは、4連勝とまだ底を見せていないこともあり、さらに上を行く成績を残す可能性も十分にあると思います。

次は特に問題なければ、有馬記念あたりが目標になるのでしょうか。おそらくイクイノックスは出ないでしょうから、ルメール騎手が確保できる可能性も高いでしょう。
今後の活躍がとても楽しみになる、今日の菊花賞のレースぶりでした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です