世界最強馬の走りでした ~宝塚記念

ドバイシーマクラシックを逃げて3 1/2馬身差で楽勝したイクイノックスは、4月に発表された「ロンジンワールドベストレースホースランキング」でレーティング129を獲得し、現時点での世界最強という評価をされました。
そのイクイノックスが凱旋帰国しての初戦となったのが宝塚記念。昨秋に天皇賞(秋)、有馬記念と強い競馬で連勝して、2022年の年度代表馬に選ばれ、さらにドバイシーマクラシックも勝ってG1 3連勝で世界最強となった馬が、どんなレースを見せてくれるのか、注目のレースとなりました。

昨年の今頃はタイトルホルダーが現役最強と言われていたことを思うと、時の流れと栄枯盛衰の速さに驚かされるのですが、そのタイトルホルダー、そして2021年の年度代表馬エフフォーリアをイクイノックスが破って世代交代を告げたのが、昨年の有馬記念。今見てもその最後の伸び脚に驚かされるのですが、さらに輪をかけて強さを見せたのがドバイシーマクラシックでした。
世界の強豪相手に楽勝したのですから、世界最強の評価も当然でしょう。

力的にはあきらかに抜けていると思われ、イクイノックスは1.3倍の1番人気。2番人気は天皇賞(春)を勝ったジャスティンパレスが8.5倍で続きますが、3番人気以下は2桁の倍率となりました。
とはいえイクイノックスに不安がなかったわけではありません。初の関西遠征で阪神競馬場の2200mというやや特殊なコース設定。イクイノックスの父であるキタサンブラックをはじめ、多くの実力馬が勝てなかったコースでもあります。
初めて背負う58kgの斤量や、前走初めて逃げたことによる影響なども、取りざたされました。しかしどれも重箱の隅をつつくようなもので、杞憂に終わるだろうというのが、大方の見方だったと思います。

個人的にもそう見ていましたが、レースはそう簡単なものではありませんでした。
5番ゲートから五分のスタートを切ったイクイノックスですが、外のジャスティンパレスや4枠の2頭に押し込められて、ポジションを下げてしまいます。1コーナーは後方から2番手という位置。

宝塚記念では時期的に馬場が良くないこともあり、勝つためにはある程度前につける必要があります。実際に過去10年の勝ち馬は、4コーナーの位置取りが最も後ろでも前から6番手。特にこの5年では4頭が4コーナーで1,2番手から勝っています。それを考えると、不可抗力もあったとはいえ、ルメール騎手の選択には疑問がわきました。

そのまま後方2番手で向こう正面にかかりますが、逃げたユニコーンライオンのペースは1000mが58.9と、昨年にはおよばないものの、速めのペース。これはイクイノックスには結果的に朗報ですが、とはいえ先行有利の馬場ではたして大丈夫かと心配になります。
3コーナーから外を回ってポジションを少しあげるも、ほかの馬も追い出しており、さらに4コーナーでは内を行くジャスティンパレスをパスするために大回りをすることに。

かなりの距離ロスがありながらも、イクイノックスは直線で大外からじりじりと伸びてきて、残り200mでは内ラチ沿いのドゥラエレーデやすぐ内のジェラルディーナと並んで先頭。さらに末脚を伸ばしてジェラルディーナ以下を突き放そうとしますが、そこに内から伸びてきたのが、最後方を走っていたスルーセブンシーズ。
一気にイクイノックスに迫りますが、クビ差まで詰めたところでゴール。見事に期待に応えて、G1 4連勝を飾りました。着差は少ないものの、抜かれる危険は感じられず、着差以上の強さを見せました。

近年は狙ったG1のみを最小の負担で勝っていくというローテーションを取る馬が増えてきている印象で、その最たる存在がアーモンドアイであり、コントレイルもその1頭でしょう。そのアーモンドアイのG1のみの連勝記録が、桜花賞からドバイターフまでの5連勝。今回イクイノックスはそれに次ぐ4連勝となりました。
次走はまだわかりませんが、今年は国内専念ということらしいので、おそらく次は連覇を狙う天皇賞(秋)か、今年から賞金が大幅に上がったジャパンCとなるでしょう。そこでアーモンドアイの記録に挑むことになります。
今日のレースを見る限りは、記録更新は十分期待できるのではないでしょうか。

実はもっと強いパフォーマンスで突き放して勝つのではないかと思っていたのですが、クビ差と思いがけない僅差の決着となりました。それは2着スルーセブンシーズの快走によるものでした。
スルーセブンシーズは、道中は最後方を追走。イクイノックスの後ろからではノーチャンスだと誰もが思ったと思います。直線に入って外からジャスティンパレスに寄られていったんは前が詰まるも、内に進路を切り替えると、イクイノックスの上りを上回る34.6の脚で伸び、あわやの場面を作りました。

近年強い牝馬であることや、グランプリレースにやたら強い池添騎手騎乗、関東馬ながらイクイノックス同様に栗東滞在していること、凱旋門賞に予備登録した陣営の強気などが気にはなったものの、G3までの実績や阪神に良績がないことなどから、個人的には軽視してしまったことが悔やまれます。
とはいえ今回のパフォーマンスは決してフロックではなく、力をつけていることは間違いないでしょう。池添騎手も、かつてコンビを組んだドリームジャーニーの娘でもあり、期するところがあったとのことで、かなり悔しかったようです。
ただ今回見せた力が出せれば、いずれ大きいところも取れると思いますので、池添騎手ともども期待したいところです。

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