やはり血統は軽視できない? ~天皇賞(春)

今年の天皇賞(春)の主役は、連覇を狙うタイトルホルダーでした。
昨年は7馬身差という衝撃的な着差で完勝し、続く宝塚記念も2馬身差で圧勝。この時点では現役最強馬の声もありました。
ところが勢いをかって参戦した凱旋門賞は、重馬場得意ということもあって人気になったものの、さすがに本場の不良馬場には太刀打ちできずに惨敗。続く有馬記念も人気に応えられず9着に敗れ、上半期の高評価から急落して2022年を終えたのです。
しかし終わったかと思われた今年初戦の日経賞では、8馬身差快勝と鮮やかな復活劇を見せ、天皇賞(春)では1.7倍の堂々の1番人気に支持されました。

確かに昨年はクビ差辛勝の日経賞から天皇賞(春)勝ったので、それに比べれば今年は敵なしと思ってしまうのは無理ないところでしょう。個人的にも、かなり固いのではないかと当初は思っていました。
しかし巷の予想を見ると、意外にもタイトルホルダー絶対でもない論調が多いのが気になったのです。

そのおもな根拠は、舞台が3年ぶりに京都競馬場に戻ってきたことでした。4,5歳馬たちは、ほとんど京都の馬場を経験していなかったのです。タイトルホルダーはG1を3勝していますが、菊花賞も天皇賞(春)も阪神コース。
そして京都時代の天皇賞(春)は、サンデーサイレンス系が強さを見せていたのです。その代表が、2019年2020年と連覇したフィエールマン。

それまでディープインパクト産駒は長距離が不得意と言われ、実際に旧8大競争で唯一ディープインパクト産駒が勝てていなかったのが天皇賞(春)でした。ところが2018年の菊花賞を勝って、長距離が得意というディープインパクト産駒としてはめずらしい特性を見せたフィエールマンは、着差は少なかったものの天皇賞(春)を連覇。

さらに過去10年を見ると、京都開催での勝ち馬は、ステイゴールド産駒のフェノーメノ、ゴールドシップ、レインボーライン、そしてディープインパクトの全兄であるブラックタイド産駒のキタサンブラックと、見事なまでにサンデーサイレンスの直系の種牡馬の産駒が並びます。

それに対して阪神の天皇賞(春)は、2021年こそディープインパクト産駒のワールドプレミアが勝ったものの、昨年はドゥラメンテ産駒のタイトルホルダー。
もちろん父母にサンデーサイレンス産駒のアドマイヤグルーヴがいるので、サンデーサイレンスの血は入っているのですが、それまでの父系にサンデーサイレンスが入っている馬たちとは異なっており、ここが血統論者の突っ込みどころになっていたのです。

それでもそんな重箱の隅をつつくような主張を大きく覆す快勝を見せてくれるのではとも思っていたのですが、結果は意外なものとなりました。
ハナを主張したアフリカンゴールドを行かせて、タイトルホルダーは2番手を追走。そのアフリカンゴールドがつくるペースは59.7。このペースは、過去10年では2017年の58.3、2013年の59.4に次ぐものですが、この2年はともに良馬場だったので、やや重としては速いペースと言えるでしょう。

ところが1週目の1コーナー手前でアフリカンゴールドは手ごたえが悪くなり先頭をタイトルホルダーに譲ります(アフリカンゴールドは向こう正面で競争中止。心房細動と発表されました)。定位置のハナに立ったタイトルホルダーは快調に逃げますが、2週目3コーナーでアイアンバローズに交わされるとずるずると後退。4コーナー手前で横山和騎手が手綱を引いて止めようとした段階で、故障したのだとわかりました。そのまま4コーナーで競争中止。発表では右前肢跛行とのことですが、大事でないことを祈りたいと思います。

そして勝ったのは、中団から外に出して伸びてきた2番人気の4歳馬ジャスティンパレス。
昨年春のクラシックはともに9着に終わったものの、秋になって神戸新聞杯を快勝。菊花賞は1/2馬身及ばず3着に敗れたものの、前走阪神大賞典を1 3/4馬身差で勝って、ルメール騎手騎乗で天皇賞(春)に臨んでいました。
このジャスティンパレスがディープインパクト産駒。そして2着は3年連続の2着となったキズナ産駒のディープボンド。やはり2頭ともサンデーサイレンスの直系となりました。

個人的に、血統はあくまで参考程度という印象なのですが、時には必然なのではと思うような結果になることもあります。そこが競馬の難しいところでもあり、おもしろいところでもあるのでしょう。
はたしてこの傾向は、来年も続くのか。予想の時には、ぜひ思い出したいと思います。

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