2022年の振り返りとJRA賞予想&ベストレース

今回も年末に当たり2022年を振り返って総括し、JRA賞を個人的に予想するとともに、ベストレースを選んでみたいと思います。

2022年はずいぶんコロナの影響による不自由さからは解放されてきたとはいえ、まだG1当日は自由に競馬場に足を踏み入れることができないなど、若干の制限は残っています。しかしここ2年にくらべれば、かなり平常に戻ってきたなと、感慨を覚える機会は多くありました。
ダービーをはじめ多くの大レースも生で楽しむことができましたし、やはり目の前で歴史に残る瞬間を見届けられるというのは、大切なことだと思います。

そして2022年で話題になったことといえば、重賞、特にG1での1番人気の弱さでしょう。
昨年のホープフルSから始まったG1での1番人気の連敗は、春には止まらず、夏を越して秋に入っても続き、ようやく天皇賞(秋)でイクイノックスが勝ってピリオドを打ちました。その連敗記録は16。その後も1番人気はなかなか勝てず、終わってみれば今年のG1全22レースのうち1番人気が勝ったのは、わずかに4レースのみ。勝率にすると、18.2%の低さです。
しかもそのうち2レースは2歳戦で、3歳限定戦はクラシックを含めて1度も1番人気が勝てませんでした。
その中で1頭だけ気を吐いたのが、3歳馬イクイノックス。春は勝ちきれないレースが続いたものの、秋の古馬G1では2戦とも1番人気に応えて快勝。3歳、古馬通して、唯一G1で1番人気に応えた競走馬となりました。

また海外では、サウジアラビア、ドバイと多くの馬が活躍し、とくにサウジアラビアでは日本馬がG3を4勝したのですが、G1はドバイシーマCのシャフリヤールと、暮れの香港ヴァーズのウインマリリンの2勝のみ。2021年の活躍に比べると、ややさみしい感じもありました。

今年も多くの実力馬が参戦して期待された凱旋門賞では、直前の大雨による馬場悪化もあり、日本馬はタイトルホルダーの11着が最高という惨敗。あまりに馬場環境の異なるレースを、大きな犠牲を払ってでも勝ちに行く意味はあるのかという議論も、巻き起こりました。

それでは、JRA賞について各部門ごとに振り返りながら予想してみます。
まずは確実なところから。

●最優秀2歳牡馬
5年前から2歳牡馬のG1馬が2頭生まれることになり、毎年どちらが選ばれるかが焦点になります。
クラシック直結という意味では、2000mのホープフルSが有力なものの、昨年朝日杯FSを勝って最優秀2歳牡馬に選ばれたドウデュースが今年ダービ馬になり、朝日杯FS組の巻き返しが巻き返しが期待されるところです。
そして今年も、その朝日杯FSを勝ったドルチェモアが選ばれると思います。
ホープフルSを勝ったドゥラエレーデは芝未勝利で14番人気だった伏兵。それに対してドルチェモアは、サウジRCを鋭い末脚で差し切って勝ち2戦2勝の成績から、朝日杯FSでは1番人気。無敗ということからも、クラシックでは大いに期待される1頭になるでしょう。

●最優秀2歳牝馬
ここは毎年阪神JFを勝った馬が選ばれる無風の部門です。
今年勝ったリバティアイランドは、アルテミスSこそスムーズさを欠いて2着に敗れたものの、その強さを見抜いたファンからは1番人気に支持され、見事にそれにこたえて2 1/2馬身差の完勝。今年は文句なしでしょう。

●最優秀3歳牡馬
クラシックを勝ったのは、ジオグリフ(皐月賞)、ドウデュース(ダービー)、アスクビクターモア(菊花賞)の3頭。さらにNHKマイルCを勝ったダノンスコーピオンを入れた4頭とも、ほかのG1レースでは連対なし。
しかし春の2冠でともに2着と惜敗したイクイノックスが、秋になって天皇賞(秋)と有馬記念の古馬G1を連勝し、一躍下半期の主役となりました。ほかにもマイルCSを勝ったセリフォスがいますが、実績的にはダントツでイクイノックスでしょう。

●最優秀3歳牝馬
今年のG1勝ち馬は、スターズオンアース(桜花賞、オークス)、スタニングローズ(秋華賞)の2頭。スターズオンアースは、秋華賞こそ追い込み届かず3着でしたが、桜花賞、オークスの差し切り勝ちは見事で、その安定感からも十分に選ばれる価値はあると思います。

●最優秀4歳以上牡馬
今年国内の芝G1を勝った4歳以上牡馬は、ナランフレグ(高松宮記念)、ポタジェ(大阪杯)、タイトルホルダー(天皇賞(春)、宝塚記念)、ジャンダルム(スプリンターズS)、ヴェラアズール(ジャパンC)の5頭。ほかにドバイシーマCをシャフリヤールが勝っています。
この中でタイトルホルダーは唯一2勝を挙げ、それもともに2番人気と評価された中での勝利。また凱旋門賞でも国内発売では1番人気に支持され、有馬記念で敗れるまでは現役最強の呼び声も高く、4歳以上牡馬の中では実績No.1の評価でよいと思います。

それでは、以下は迷うところを。

●最優秀4歳以上牝馬
ここ2年は牡馬混合のG1を勝つ牝馬が多く、レベルが高くて迷ったのですが、今年はそこまでではない印象でした。海外も含めて芝G1を勝ったのは、ソダシ(ヴィクトリアM)、ソングライン(安田記念)、ジェラルディーナ(エリザベス女王杯)、ウインマリリン(香港ヴァーズ)の4頭。
フェブラリーSとマイルCSで3着に入ったソダシと、オールカマーを勝って有馬記念で3着に入ったジェラルディーナの争いになるのではと思いますが、ソダシがヴィクトリアMの1勝に対して、ジェラルディーナが2勝していることと、有馬記念の好走を評価されて、ジェラルディーナが選ばれるのではないかと思います。

●最優秀短距離馬
マイル以下の古馬G1では、高松宮記念はナランフレグ、ヴィクトリアMはソダシ、安田記念はソングライン、スプリンターズSはジャンダルム、マイルCSはセリフォスが勝ちました。
ここはかなり票が割れると思いますが、個人的には富士Sを勝ち、NHKマイルC、安田記念でともに4着と好走した安定感を買って、セリフォスに1票を投じたいと思います。
なおこの部門は来年からスプリンターとマイラーに分かれるとのこと。たしかにナランフレグがスプリンターG1ではともに3着内に入っているのに安田記念は大敗していることからわかるように、両者はかなり適性が異なる印象で、逆に両方で強いグランアレグリアのような存在が例外的なのだと思います。その意味では分けることは賛成ですが、そうなると中長距離はどうするのかという疑問が出てくるでしょう。

●最優秀ダートホース
JRAのダートG1は、フェブラリーSはカフェファラオ、チャンピオンズCはジュンライトボルトが勝ちました。
この2頭は直接対決もなく比較が難しいのですが、カフェファラオは今年ダートは南部杯とあわせて2走のみで、その両方を勝利。対するジュンライトボルトはダートは4走して3勝2着1回。ただしジュンライトボルトの重賞勝ちはG1 1勝とG3 1勝に対して、カフェファラオはG1 2勝。ジュンライトボルトの安定感と将来性は評価しながら、今年に限ってはカフェファラオではないかと思います。

●最優秀障害馬
ここは中山GJを勝ったオジュウチョウサンと、中山大障害を勝ったニシノデイジーという、古豪というかいまや伝説の存在と、決して若手とは言えないものの見事に再ブレークを果たした2頭の争いになります。
オジュウチョウサンのキャリアを見れば、5度目の最優秀障害馬の称号を贈りたいのはやまやまですが、さすがに秋以降は年齢に勝てないのか、やや精彩を欠いたレースぶりとなってしまいました。それに対してニシノデイジーは見事な走りで初障害重賞勝利をG1で飾り、札幌2歳Sと東スポ杯を連勝した2歳時の輝きを取り戻したように見えました。
ここは後進に道を譲るということで、個人的にはニシノデイジーを押したいと思います。ただしオジュウチョウサンの功績は、いささかも色あせるものではないでしょう。

そして年度代表馬ですが、G1を2勝したタイトルホルダーとイクイノックスの一騎打ちになると思います。
唯一の対決が有馬記念で、そこでは2強のイメージだったのですが、結果は余裕の勝利を飾ったイクイノックスに対して、タイトルホルダーは意外な大敗となる9着。
この結果が記者の印象にも大きく響くでしょうから、イクイノックスがかなりの確率で年度代表馬に選ばれると思います。

続いて2022年のベストレースです。
個人的には、イクイノックスが勝った秋のG1 2戦が強く印象に残りました。とても届くとは思えない位置から差し切った天皇賞(秋)、そしてライバルと目されたタイトルホルダーを早々に圧倒して余裕の勝利を飾った有馬記念。
どちらもすばらしいパフォーマンスでしたが、やはり今年を代表する実力馬たちを置き去りにした有馬記念の走りを、今年のベストレースとしたいと思います。

今年の競馬で意外だったのは、昨年あんなに強いレースを見せてくれたエフフォーリアの不振でした。昨年の有馬記念を見て、2022年はエフフォーリアの年になると思ったのですが、春に大阪杯、宝塚記念と惨敗すると、長期休み明けで臨んだ有馬記念で一応の見せ場は作ったものの、ぎりぎり掲示板という5着でレースを終え、結局今年は3戦してすべて着外という結果になりました。
このエフフォーリアの不振も、一番人気が勝てなかった理由の一つになります。

最近競走馬の競走生活が以前よりも短くなっている印象が強いのですが、それはピークの短さということにも関連しているのかもしれません。エフフォーリアに関連して、エピファネイア産駒早熟説もでていますが、デアリングタクトやアリストテレスの成績を見ていると、ある程度納得してしまいます。
しかし有馬記念で4着に入って驚かされたイズジョーノキセキのような例外もいます。また11歳まで一戦で活躍したオジュウチョウサンのように、年齢に関係なくがんばれる馬もいます。
それは体力的なものよりも、精神的なものの方が大きいのではないかと思います。ずっと一戦でがんばっていると、人間でも精神的に疲れることはあるので、馬にもそんなことがあるのではないかと思ってしまいます。

馬の精神的なケアという研究が行われているのかは知りませんが、今後そんなことも必要なのではないかと考えさせられた1年でした。

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