2強の勝敗を分けた理由とは ~有馬記念

今年の有馬記念は、3歳牡牝クラシックの勝者4頭の名はなかったものの、古馬中長距離G1の勝ち馬をはじめとするG1馬7頭が顔をそろえ、1年を締めくくるグランプリにふさわしいレースとなりました。
その中で人気を集めたのは3歳代表のイクイノックスと、古馬代表のタイトルホルダーでした。

イクイノックスは東スポ杯を圧勝して2歳最強の評価を得ながら、成長を待って異例の5か月の休み明けで春のクラシックに臨みます。皐月賞とダービーこそ2着に敗れたものの、天皇賞(秋)を勝ちきってG1初制覇。ジャパンCはパスして、わずか5戦のキャリアで有馬記念に挑んできました。
対するタイトルホルダーは昨年の菊花賞でG1初制覇。今年は天皇賞(春)を7馬身差で圧勝すると、宝塚記念も2馬身差で勝って、一躍現役最強馬の称号を得ます。渡仏して日本馬代表として臨んだ凱旋門賞こそ不良馬場に苦しんで11着と大敗したものの、日本に帰ればまたあの強さを見せてくれるのではという期待がありました。

個人的にも勝つのはこの2頭のどちらかだろうと思っていました。勝負は、逃げるタイトルホルダーをイクイノックスが差し切れるかどうかで決まるだろうと予想したのです。
直線が短い中山では、逃げ先行馬が有利というのは周知のことであり、さらに先行馬が少ない今年のメンバーでは、ペースが上がらないと思われます。そうなると展開的にはタイトルホルダーにかなり有利となりそうです。また春の2戦からも、マイペースで逃げた時のタイトルホルダーの強さは印象的で、凱旋門賞大敗の影響は気になりましたが、やはりタイトルホルダーが勝つ確率が高いのかと最初は思っていました。
対するイクイノックスは、鋭い末脚で天皇賞(秋)では大逃げのパンサラッサを捉えたものの、直線の長い東京だからできたとも言えます。実際に中山の皐月賞では先行して早めに抜け出したところをジオグリフに差され、ダービーでは先に抜け出したドウデュースを捉えられず、いずれも2着に敗れているのです。

しかし最終的にはイクイノックスを本命にすることにしました。
その大きな理由としては、やはり3歳馬は55kgの軽量で戦えるということがあります。実際に過去10年で3歳馬は4勝2着2回と、4,5歳馬(各7頭が連対)と遜色ない数が連対しており、さらに連対率では4,5歳馬を大きく上回っているのです。
また昨年のエフフォーリアが全く同じローテーションと成績(ダービー2着から天皇賞(秋)1着)で有馬記念を勝っていることも、大きな後押しとなりました。

とはいえ、自信をもってイクイノックスが勝つとまでは言い切れなかったのも事実です。
もやもやしたままパドックをチェックしたのですが、そこで気になったのがタイトルホルダーの様子でした。G1の時は前走のパドックの映像が出て比較ができるのですが、タイトルホルダーは宝塚記念のパドックの様子が流れました。そうすると、明らかに宝塚記念の方がよく見えるのです。トモの送りや前脚の出も宝塚記念の方がスムーズで、今回の方がややこじんまりと見えます。
対するイクイノックスは、適度な気合乗りでトモの送りもスムーズで力強く、天皇賞(秋)と同様に好調そうに見えました。

レースではタイトルホルダーは好スタートを切ったものの、横山和騎手が懸命に押してハナを取りに行きます。そこまで強く押す姿は記憶になかったので少し違和感を覚えましたが、3コーナー過ぎには落ち着き、その後はいつものタイトルホルダーに。1000mは1.01.2と落ち着いた流れで進めます。
対するイクイノックスは中団後方の外を折り合って追走。そのまま2週目の3コーナーまで行くと、そこから外を通って一気に進出開始。4コーナーでは4,5頭分外ながら早くも先頭のタイトルホルダーに並びかけます。
そこからイクイノックスが前に出ると、先行していたタイトルホルダーやディープボンド、ブレークアップなどは失速。唯一後方から早めに追ってきたボルドグフーシュが追いすがりますが、3馬身ほど後方。イクイノックスのルメール騎手は1発だけムチを入れますが、余裕の脚色で突き放すと2 1/2馬身差で圧勝のゴールとなりました。

ペースとしては決して速くなく、勝ち時計も平均的でしたが、先行馬が軒並み失速し、2,3着は追い込み脚質の馬が入ったので、展開としては先行勢には厳しいものだったのでしょう。とはいえタイトルホルダーの9着は実力を考えると負けすぎで、やはり凱旋門賞の疲れがあったものと思われます。
過去にセントライト記念で13着と大敗したことはありますが、次走の菊花賞では勝ちきっており、来年はぜひ体調を整えて、また強いタイトルホルダーを見せてもらいたいと思います。

そしてイクイノックスはこれで名実ともに現役最強馬の評価を得たと思います。おそらく年度代表馬の称号も手に入れるでしょう。
ただし常に一所懸命に走るので1回走るとダメージが大きく、間隔をあけざるを得ないという弱点もあります。おそらく来年も狙ったレースを間隔をあけて取りに行くというローテーションを組むでしょう。アーモンドアイに似たタイプの名馬と言えますが、それだけに出るレースでのパフォーマンスには期待できると思います。
来年の活躍がとても楽しみな馬が、また1頭誕生しました。

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