前哨戦について再び ~菊花賞

菊花賞で前哨戦というと、個人的には苦い思い出があります。それは2015年。キタサンブラックを、トライアルにセントライト記念を使っているということと、母父サクラバクシンオーということで、バッサリと切ってしまったのです。そして予想に反して勝たれてしまい、大きなショックを受けました。
その後の活躍を見れば、単純にその能力に気づけなかったということなのですが、思い込みはいけないということを身をもって感じたのです。

しかしその後も、菊花賞においてセントライト記念組はどうしても軽視してしまいます。特にセントライト記念上位に入った関東馬は、菊花賞ではほぼ用無しということが続きました。
その認識を考え直さなければと感じたのは、昨年の菊花賞でした。セントライト記念2着から臨んだ関東馬サトノフラッグが3着に入ったのです。弥生賞勝ちという実績から無視はできないと思ったものの、かなり軽視していたので、正直驚きました。

しかしその経験が、今年生きたともいえるのです。
今年の菊花賞は、皐月賞馬もダービー馬も不在で、18頭中重賞勝ち馬は7頭(G2勝ち5頭で、複数勝っているのはステラヴェローチェのみ)と、正直レベルは高くなく、かなりの混戦模様。近年の長距離戦軽視の影響が、まともに出ていると思えるメンバー構成でした。こうなると過去の傾向どおりには決まらない可能性が高くなるのではと思いました。

さらに京都競馬場の改修工事によって、レースの行われるコースが変わるという問題もあります。今年それを感じたのは、主要なトライアルである神戸新聞杯の扱いでした。
昨年に続いて中京芝2200mで行われた神戸新聞杯は、不良ということもあり、例年だと勝つはずのダービー馬シャフリヤールが4着に敗れる波乱。秋華賞でも中京で行われたローズSからは2年連続連対できず、菊花賞においても例年ほど神戸新聞杯組を中心視できないのではと思ったのです。

予想に当たって有力と思われたのは、神戸新聞杯で連対したステラヴェローチェとレッドジェネシス。そして長期休養明けながらセントライト記念で3着に入ったオーソクレースでした。
ステラヴェローチェは朝日杯FS2着、皐月賞、ダービーともに3着とこのメンバーでは実績、安定感ともにNo.1。さらに神戸新聞杯も勝っており、絶対的な中心と思える存在です。しかし重賞2勝がともに不良馬場で、良では勝ちきれないところが気になります。
レッドジェネシスは京都新聞杯を勝ち、神戸新聞杯もステラヴェローチェに差されたものの追いすがって1/2馬身差2着。ダービーは大敗したものの、ステイヤーを思わせる馬体と長距離での良績は、菊花賞でこそと思わせます。

それに対してオーソクレースはホープフルS2着のあと長期休養があり、9か月ぶりのセントライト記念で2差3着と好走したものの、キャリアがないのが逆に気になります。さらに好走歴の少ない前走セントライト記念の関東馬。ルメール騎手騎乗で人気になるのも、馬券的にはマイナスと思われました。
そしてもう1頭気になったのが、弥生賞を勝ち、皐月賞では2着だったタイトルホルダーでした。ダービーでは6着に敗れた上に、1番人気だったセントライト記念では13着に大敗。当初は来るはずないと考えていたのですが、昨年のサトノフラッグ同様に実績的には上位で、血統的にも菊花賞5着の牝馬メロディーレーンの半弟ということで思い直して候補に入れました。さらにパドックでは気配の良さが目立ち、これならと思わせたのです。

事前予想では神戸新聞杯組のレッドジェネシスを中心に考えていたのですが、馬券を買う段になってタイトルホルダーとオーソクレースを絡めた馬券も追加。ともに関東馬でかつ前走セントライト記念でありながら、躊躇なく買うことができました。

レースではスタート直後にタイトルホルダーの横山武騎手が押して先頭に立ちます。これにはさすがに驚かされ、これまでの距離実績を考えても、さすがに無謀だと思ったのですが、本人はおそらく自信があったのでしょう。1000mを1分ちょうどというペースで飛ばしていきます。
そのまま折り合って先頭をキープすると、4コーナーでも他の先行馬の騎手の手が動くのに対して、タイトルホルダーは馬なりで直線へ。追い出すと後続を一気に突き放します。そして後ろを離したまま5馬身差の圧勝。
上りも後方から差してきた最速のステラヴェローチェ、アサマノイタズラの34.7に対して、逃げながら0.4秒差の35.1。スタミナを生かした完勝でした。

そして感心したのは、横山武騎手の騎乗。春はエフフォーリアとのコンビで皐月賞を勝ってG1初制覇。ところが勝ったかと思ったダービーでは数cm差されて痛恨の2着。あまりにも悔しい負け方でした。
さらに弥生賞以来再びコンビを組んだタイトルホルダーと臨んだセントライト記念は、1番人気に支持されながら不利を受けたり前が詰まったりして13着大敗。インタビューでは反省の弁を述べるしかありませんでした。

そんな悔しさが、菊花賞での何が何でも逃げるという戦術になったのでしょう。初の3000mという距離を考えると、逃げるというのはかなりのリスクだと思うのですが、最初から決めていたような騎乗でした。そしてレース後の大きなガッツポーズは、ここまでの悔しさの何分の1かを晴らした気持ちから出たものだったのかもしれません。
ダービーで負けたという事実は変えられませんが、その悔しさは今日のレースも含めて、今後の糧になるのは間違いないでしょう。ぜひ名手と呼ばれるような騎手の一人になってほしいと思います。

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