今年の凱旋門賞は、例年にも増して日本ゆかりの馬と人が多いということで話題でした。
まず日本から参戦したのは、グランプリ3連勝中のクロノジェネシス(牝5歳)。現時点で芝2400mという舞台では、おそらく日本で最強でしょうし、さらに馬場が渋っても問題なく、父が凱旋門賞を勝ったバゴということで、フランスでもそこそこの人気になったようです。
ギリギリまで日本で調整をしてフランスに入るという方法は、環境への慣れという意味ではチャレンジだったと思いますが、映像で見る限りでは落ち着いていて、特に問題はなさそうでした。
そしてもう1頭がディープボンド(牡4歳)。G1勝ちはないものの、今年の阪神大賞典を重馬場で勝って、天皇賞(春)は2着。しかもこちらは余裕をもって渡仏し、前哨戦のフォア賞を鮮やかに逃げ切って1着。フォア賞勝ちと言えば、過去にエルコンドルパサー、オルフェーヴルが勝って凱旋門賞はいずれも2着ということで、こちらも期待値があがりました。
また祖父ディープインパクトが3着(のちに失格)、父キズナが4着と、いずれも好走しながら勝てず、そのリベンジという意味もあったでしょう。
日本馬ではないものの、日本生まれのディープインパクト産駒スノーフォール(牝3歳 アイルランド)も、英オークス、愛オークスをとんでもない着差で勝って一躍凱旋門賞最有力とされ、どんなレースを見せるのか注目されました。
また武豊騎手も、日本人オーナーのブルーム(牡5歳 アイルランド)で9回目の騎乗。自らも夢と語るように、ヨーロッパ最高峰のレースに何度も乗れるということは、すばらしいことだと思います。
ただ今年は相手も強く、しかもかなりの重馬場。日本馬には正直厳しいかなと思ってはいました。
そんな中、クロノジェネシスは外枠からスタートを切ると、マーフィー騎手は他馬と離れて1頭だけ外を走らせます。バルザローナ騎手騎乗のディープボンドは逃げた前走とは一転して後方からの競馬。
クロノジェネシスは徐々に馬群に近づくと、逃げるアダイヤー(牡3歳 イギリス)の2番手の外。その内に武豊騎手のブルーム。個人的に注目していたスミヨン騎手騎乗のタルナワ(牝5歳 アイルランド)は中団内につけます。
そのまま一団でフォルスストレートから直線へ。クロノジェネシスの手応えもよく、一瞬行けるかと思いました。
しかし残り200mで内からタルナワ、外からハリケーンレーン(牡3歳 イギリス)に交わされると一気に失速。次々を抜かれて結局7着に終わりました。
ディープボンドも最後のコーナーで伸びかけるも直線に入ると大きく失速し、大差の最下位に。スノーフォールは6着、ブルームは11着と日本関係の馬はいずれもふるいませんでした。
そして並んで抜け出したタルナワとハリケーンレーンを後方の外から一気に交わして勝ったのが、ドイツからただ1頭参戦していたトルカータータッソ(牡4歳)。重馬場とは思えない伸びを見せて、人気薄ながら見事な優勝でした。
今年のレースを見て感じたのは、やはり底力がないと凱旋門賞は勝てないということ。日本では経験できないような、絡みつくような重たい馬場だそうですが、そこを苦も無く伸びるスタミナと精神力、重馬場への適性というものが求められるのだということを、最後に伸びを見せた上位3頭と、後退していくクロノジェネシスを見て痛感させられました。
クロノジェネシスが有馬記念や宝塚記念で見せた最後の脚は見事なものでしたが、あれでも全然勝負にならないということは、やはり次元が違うのだと思います。
今後も凱旋門賞に挑戦する日本馬は出てくるでしょうが、やはり本気で勝ちを目指すのであれば、ある程度長く向こうに滞在して、馬場に慣れるということが必要なのかもしれません。エルコンドルパサーはヨーロッパにいる間に走り方が変わったと言いますし、それで結果を残しました。
ただフォア賞などの前哨戦を使うとローテーションがきついので、夏にレースを使って、間隔をあけて臨むのがいいように思います。
かつてエルコンドルパサーやナカヤマフェスタ、そして一度は抜け出して勝ったと思ったオルフェーヴルと4度の2着のシーンを見て、そんなに遠くない時期に日本馬が勝てるのではと思っていたのですが、最近は見るたびにどんどん難しさが増しているように感じます。
やはりヨーロッパと日本では、競馬が目指す方向が違うのでしょうか。ただ強い馬であれば、どんな条件でも勝つ可能性はあると思うので、期待して応援し続けたいと思います。