異例のキャリアの戴冠は1996年、1999年と似ていました ~ダービー

毎年ダービーを予想するときには、どの馬がダービー馬と呼ばれるにふさわしいかということを考えます。個人的には藤沢和師が言うように、王道を歩んできた馬が強いと思いますし、ダービー馬にふさわしいと思います。
そういう意味では、今年最もそれにふさわしいのは、無敗で皐月賞を3馬身差で制したエフフォーリアだったでしょう。そういう考えの人は多かったと思われ、エフフォーリアは1.7倍の1番人気に支持されました。しかしそのエフフォーリアをゴール前でハナ差差してダービー馬となったのは、4番人気のシャフリヤールでした。

このシャフリヤール、ダービー馬としては異例のローテーションでした。そのため、過去のデータをもとに考えると、実はかなり買いにくい馬だったと思います。それでも4番人気という上位人気になったのは、個人的にはちょっと驚かされました。

そのデータとは下記のようなものです。
・キャリア3戦の馬は過去10年4頭出走してすべて着外
・過去10年の連対馬の前走は、皐月賞、京都新聞杯、青葉賞のみ
・過去10年の連対馬は4月以降に出走しており2000m以上を経験
シャフリヤールはいずれのデータでも連対馬の傾向に合致せず、共同通信杯ではエフフォーリアに2 1/2馬身差で完敗。前走芝1800mの毎日杯(3/27)はレコードで勝ったものの、距離伸びてエフフォーリアに勝ちきるまではどうかと思っていたのです。

しかしレースではエフフォーリアの後方を進み、3~4コーナーではエフフォーリアと並ぶ位置まで進出。4コーナーでは内を突いたエフフォーリアに対して、シャフリヤールは外に出します。直線に入り、前が開いてスムーズに進出したエフフォーリアに対して、シャフリヤールは前がふさがって追い出すのに手間取ってしまいます。
残り300mを切って先頭に立ったエフフォーリアに対して、シャフリヤールは3馬身ほど後方。しかしそこからぐいぐいと伸びると、エフフォーリアの内に進路を取り馬体を合わせに行きます。
最後は追い比べになり、エフフォーリアにシャフリヤールが並んだところがゴール。写真判定の結果、ハナ差シャフリヤールが前に出ていました。

異例のキャリアでダービーを勝った馬といえば思い浮かぶのが、1996年のダービー馬フサイチコンコルド。芝1800mの新馬戦とすみれS(芝2200m)の2戦2勝でダービーに参戦し、7番人気の低評価ながら、ゴール前で1番人気のダンスインザダークをクビ差で差し切って勝ちました。
実はこの年のダービーと今年のダービーは共通点があるのです。
1着馬が異例の少ないキャリアで戴冠したということが1つですが、負かした馬が1番人気だったこと。今年の1番人気エフフォーリアは、22歳の横山武騎手が戦後最年少のダービージョッキーになれるかということが話題になりましたが、1996年の1番人気ダンスインザダークは、デビュー10年目の武豊騎手が初のダービー制覇なるかが話題でした。
しかしともに先に抜け出して勝ったかと思われたところを、後ろから差されて2着に終わったのです。

今年の結果を見て、エフフォーリアの敗因を分析するときに、結果論ではありますが横山武騎手の仕掛けが早かったのではという見方はあるかもしれません。シャフリヤールの前がふさがって、結果として追い出しが遅れたということもあり、差されてしまった以上はそういう分析もあるかもしれませんが、着差を見る限り運が悪かったとしか言えず、勝ち馬をほめるべきだと思います。
ダンスインザダークの時は、1コーナーまでに折り合いを欠いたことを武豊騎手は敗因として挙げていますが、勝ちを意識して早めに追い出してしまうことは、ダービーを勝ちたいという強い気持ちゆえに仕方ないのでしょう。

その2年後1998年に武豊騎手はスペシャルウイークでダービージョッキーとなったのですが、その翌年(1999年)のダービーでも今年と同じようなことがありました。
この年の1番人気は弥生賞1着、皐月賞3着から臨んだ若手の渡辺騎手騎乗のナリタトップロード。2番人気が武豊騎手騎乗のアドマイヤベガで、3番人気が当時若手の和田竜騎手が乗る皐月賞馬テイエムオペラオー。
テイエムオペラオーが中団につけ、その後ろにナリタトップロード、後方にアドマイヤベガという位置で進み、テイエムオペラオーが早めに外から進出。直線に入るとテイエムオペラオーがすぐに追い出し、それを見たナリタトップロードも続きます。テイエムオペラオーを応援していたので「まだ早い!」と叫ぶのですが、もちろん聞こえるはずもなく・・・。
早めに抜け出したテイエムオペラオーをナリタトップロードが交わしたところを、追い出しを遅らせた武豊騎手のアドマイヤベガがまとめて交わして1着。史上初のダービー連覇を飾ったのです。

その時も、ダービーを勝ったことがあるがゆえの余裕だと思ったのですが、今日の福永騎手の騎乗も、ダービーを2勝している経験が生きたともいえるでしょう。福永騎手自身も1998年に2番人気のキングヘイローで大逃げして14着に大敗したり、2013年にエピファネイアで勝ったと思ったところをキズナに差されて2着に敗れたりと、苦い経験を積んできたのです。
横山武騎手の父である横山典騎手が、ダービーで1番人気のメジロライアンに乗りアイネスフウジンに逃げ切られて2着に敗れたのが同じ22歳の時。その父が初めてダービーを勝ったのが19年後の2009年(ロジユニヴァース)。武豊騎手もダービーを勝ったのはデビュー12年後で、やはりそう簡単には勝てないレースなのです。

横山武騎手は圧倒的1番人気の馬に乗りながらも、表情からはあまり緊張を感じられず、皐月賞を勝った時にも感じたのですが、精神的にはかなり図太い印象です。今の調子でいけば、遠からずダービー制覇のチャンスも再び訪れるでしょう。その時に、今日の経験が生きることを祈りたいと思います。

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