リスグラシューの完勝とアーモンドアイの大敗 ~有馬記念

今年の有馬記念は11頭のG1馬が出走と、過去最高の豪華メンバーとなりました。そしてそれ以上に特徴的だったのは、1,2番人気が牝馬だったということでしょう。
この2頭の成績を見てみると、かなり対照的だと思います。片やエリート街道を歩んできたアーモンドアイに対して、たたき上げという印象のリスグラシュー。しかしその明暗は、くっきりと分かれてしまいました。

まずは1番人気に推された4歳のアーモンドアイ。新馬2着の後、未勝利、シンザン記念と連勝し、休み明けの桜花賞、さらにオークスも連勝。ぶっつけで臨んだ秋華賞も危なげなく勝ち、あっさりと牝馬3冠を達成します。驚くべきはその後のJCで、東京芝2400mのレコードを1.5秒も更新する世界レコードで圧勝。
今年に入ってもドバイターフを快勝し、安田記念こそ不利で3着に敗れるも天皇賞(秋)を圧勝。香港遠征は熱発で直前回避したものの、ファン投票1位に支持された有馬記念に矛先を変えてきたのです。
ここまでG1は6勝で、全10戦して8・1・1・0とまさにエリート。中山は初めてとはいえ、これまでの成績から1.5倍の圧倒的1番人気に支持されるのは当然のことでした。

対する2番人気の5歳馬リスグラシューは、新馬2着の後、未勝利、アルテミスSと連勝したのはアーモンドアイと重なりますが、阪神JFは2着。さらに牝馬3冠は2,5,2着と好走はするものの、結局2,3歳時はG1を勝つことはできませんでした。
4歳初戦の東京新聞杯は勝ったものの、ヴィクトリアM2着、安田記念8着と春のG1は勝てず。秋のエリザベス女王杯をモレイラ騎手鞍上で勝って、ようやく初G1制覇を飾ります。G1挑戦8戦目での戴冠でした。
暮れの香港ヴァーズで2着になってからは、国内と海外のレースに交互に出走します。そして5歳となった今年、香港帰りの宝塚記念を、新たにコンビを組んだレーン騎手とともに3馬身差の圧勝。さらに10月にはレーン騎手の母国オーストラリアに渡って、コックスプレートを1 1/2馬身差で勝ち、ついに国際G1馬となりました。
こうして成績を見てみると、苦労しながら徐々に強くなってきたことがよくわかり、まさにたたき上げという言葉がぴったり。とはいえ、レコード勝ちなどの派手さはなく、また国内G1勝ちが牝馬相手のエリザベス女王杯と、春シーズン末の宝塚記念だけということもあり、6.7倍とやや差のある2番人気に甘んじることになったのも仕方ないでしょう。

レースは快速の逃げ馬アエロリットが引っ張り、1000mが58.5秒とかなり速い流れ。それをアーモンドアイは後方の外、リスグラシューはそれよりやや前の内で追走します。しかし最初の直線で歓声を受けたアーモンドアイがやや引っ張るように中団まで上がっていき、リスグラシューは結果としてアーモンドアイの後ろの内に位置します。
そのままどんどんアエロリットは後続を離していきますが、2番手以下は離れて落ち着いた流れ。そんな中、向こう正面でもアーモンドアイは掛かっているのを抑えている感じですが前が壁にならず。対するリスグラシューも掛かりぎみですが前に馬がいる分抑えられている感じ。

さすがにペースが早かったので、アエロリットは4コーナー手前でバテて後続につかまります。しかし先行馬も苦しくなり、残り250mぐらいでアーモンドアイがフィエールマンと並んで先頭に立ちます。
そこからアーモンドアイがいつもの伸びを見せるかと思ったのですが、残り200mを切って大きく内によれ、手ごたえが悪くなります。その時点でルメール騎手もあきらめたのか追うのをやめてしまいます。

代わって外から一気の伸びを見せたのがリスグラシュー。アーモンドアイを交わしたサートゥルナーリアを並ぶ間もなく抜き去ると、馬場中央を一気に伸びて、最後はサートゥルナーリアに5馬身差の圧勝でした。
リスグラシューの勝負のポイントは、それまで走っていた内ラチ沿いから、一気に外に出した4コーナーだったと思います。レーン騎手のとっさの判断も、それに応えたリスグラシューの脚もすばらしいのですが、その瞬間に外まで一直線に道が開くという運を味方につけたのが大きかったでしょう。勝つときは、往々にしてすべてがうまくゆくものです。
一方のアーモンドアイは後続に次々と抜かれて、デビュー以来初めて馬券圏外となる9着大敗。リスグラシューには1.8秒もの差をつけられました。

牝馬の有馬記念制覇は、最近では2008年のダイワスカーレットと2014年のジェンティルドンナがありますが、前者は1 3/4馬身差、後者は3/4馬身差と差はわずかで、牝馬としては異例の勝ち方となりました。
近年では2013年にオルフェーヴルが8馬身差で勝っていますが、それに次ぐもので、いかに強い勝ち方だったかがわかります。

個人的には海外遠征帰りということと、牝馬の引退レースということもあり、少し狙いを下げてしまったのですが、その強さにとても驚かされました。これで引退というのがもったいないぐらいですが、強い印象を残して去っていくというのも、いいことだと思います。良い子供を出してくれることに期待しましょう。
またおそらくこれで年度代表馬もかなり現実的になったので、大きな勲章を手に故郷に戻ることになると思います。

しかしアーモンドアイの負け方には、かなりショックを受けました。今までの強いレースぶりとは違って、あまりに急激にスピードダウンしたので、故障したのかと思ったほどです。
ルメール騎手によると、最初の直線でエキサイトしてしまい、それが原因でスタミナが持たなかったようですが、馬場を1周半する中山芝2500mコースの特性が、意外な形で影響してしまったようです。東京の芝2400mもスタート直後に大きな歓声を受けますが、最初だからあまり影響しないのでしょうか。また国枝師によると、前に壁が作れなかったのも響いたようです。

今後アーモンドアイがどうするのかはわかりませんが、現役を続けるのであれば、今回露呈した弱点が大きく影響してくるでしょう。ウオッカのように、東京限定で走るという選択肢もあると思いますが。
個人的にはぜひG1 7勝を超えることにチャレンジしてほしいと思います。

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