続いて訪れたのが、ブリーダーズスタリオンステーションから車で7分ほどのところにあるヴェルサイユファーム。
ここは馬産の他に功労馬や引退馬の預託を受けて繋養しており、その事業はクラウドファンディングでお金を集めて施設の充実などを行っています。
約束の10時半少し前に行くと、スタッフの方々が明るく挨拶をしてくれます。若い人だけで運営しているそうですが、皆さん明るくしっかりしていて、とても好感を持てます。
少し待っていると、案内をしてもらえるスタッフの方が現れて、軽トラックで3kmほど離れた場所まで先導してくれました。
そこは古い廃業した牧場を買い取ったところで、ここで功労馬の面倒を見ているそうです。
まずは奥の広い放牧地で複数の牝馬をまとめて放牧しているのですが、それらの預託馬や乗用馬に混じって、ブロードアピールがいることを教えてもらいます。
その他に牡馬が4頭いるのですが、まずはタイキシャトルとメイショウドトウの放牧地へ。
2頭が隣同士の放牧地で草を食べています。ここでスタッフから注意事項が。メイショウドトウ以外のタイキシャトル、アドマイヤジャパン、ローズキングダムは気性が荒く噛むことがあるので、そばに近づかないこと。またエサは与えないこと。驚かせたりしないこと。など基本的なお約束を聞いて、ではこれでと帰って行かれました。
そこからは撮影タイム。
まずタイキシャトルです。以前はアロースタッドで会ったのですが、種牡馬を引退してこちらにお世話になっているようです。
見ていると、すぐにこちらに寄ってきました。しかしよく噛まれる人がいるというので、少し離れて撮影します。人懐っこく、わざわざ柵の外に顔を出して草を食べますが、用心に越したことはありません。
前にアロースタッドで見た時も、常に馬房から顔を出してポーズを取り人気者でしたが、今でも人が好きなんだなと感じさせる振る舞いでした。
タイキシャトルと言えば、個人的には大雨の不良の安田記念で快勝したシーンが印象的です。そして遠くフランスでジャックルマロワ賞を勝ち、それらのG1を含む8連勝の快挙もすばらしかったのですが、なぜか最後に負けたスプリンターズSが記憶に残っているのが、不思議でもあります。
次に隣のメイショウドトウへ。こちらは我関せずとずっと草を食べています。以前は会ったことはありませんが、きっとどこかで種牡馬をしていたのでしょう。
しかし産駒のことはあまり聞いたことがないので、活躍馬を出せなかったのかもしれません。調べてみたら産駒数は200頭以上いましたが、最高で準OP勝ちまでのようです。G1馬2頭(メイショウボーラー、ウィンクリューガー)を出しているタイキシャトルとは、ずいぶん差をつけられた感じです。
メイショウドトウといえば、G1でテイエムオペラオーの2着になること5回。生まれた年が悪かったというのは、まさにメイショウドトウのためにある言葉でしょう。そして6回目となる宝塚記念でようやくテイエムオペラオーを下してG1初制覇を飾るのですが、それを最後に勝つことはありませんでした。
次に道を渡ってアドマイヤジャパンの放牧地へ。
遠くで草を食べていましたが、突然こちらに駆けてきて、こちらが驚かされました。しかしすぐにまた何事もなかったかのように草を食べに行ってしまいました。
アドマイヤジャパンも生まれた年が悪かった1頭で、ディープインパクトが無敗の3冠馬になった菊花賞の映像では、直線で抜け出したアドマイヤジャパンを、ディープインパクトがあっという間に抜き去るシーンが必ず映ります。
まさに引き立て役という立場ですが、それでも3着に4馬身差をつける2着は立派です。
ディープインパクトに負けた1頭1頭にもそれぞれのドラマがあったはずで、アドマイヤジャパンが抜け出した瞬間には、横山典騎手も松田博師も一瞬やったと思ったのではないでしょうか。
サンデーサイレンスとビワハイジの息子で、妹にはブエナビスタがいる超良血ですが、残念ながら産駒には恵まれませんでした。でもここで穏やかな暮らしを手に入れられて、今が一番幸せかもしれません。
その次がローズキングダム。さっきまで草を食べていたのですが、行ってみるとのんびりと柵にお尻を押し付けて立ったまま、とても眠そうな顔をしています。
写真を撮っても特に無反応。気性の粗さは垣間見えません。
ローズバドの息子という華麗なるバラ一族の1頭ですが、印象に残っているのは、やはりブエナビスタが降着になって繰り上がり1着の2010年のJC。2馬身ほど差をつけられていたので、ちょっと複雑な思いだったことを覚えています。でもローズキングダムは何も悪くはありませんから。
ここで11時近くになったので、最初に紹介してもらった牝馬の放牧地へ。
先に1人でバイクで来ている男性がいて、その人の傍にいるのが、どうもブロードアピールのようです。黒鹿毛は1頭なので間違いないでしょう。他の馬とは1頭離れて人間の傍にいます。
最初に着いた時も、遠くでこちらを見ていたので、人が好きなのかもしれません。撮影していると近くに寄ってきて、やはり柵の外に顔を出して草を食べようとします。かまって欲しいのかもしれませんね。
あまり時間もないので切り上げて帰ろうとすると、放牧地の中に鹿を発見。どうやって入ってくるのでしょう。そうこうしていると、他の牝馬たちが連れ立って我々がいた場所の近くにある水飲み場に近づいてきます。するとブロードアピールはそっと向こうの方に離れていきました。他の馬たちと交わるのが苦手なのでしょうか。
ブロードアピールといえば、その驚異的な末脚を発揮した追い込みが印象的で、勝手に勝気な印象を持っていたのですが、人懐こくて他馬とは距離を置くような意外な面を見ることができました。
ヴェルサイユファームで会えた馬たち
タイキシャトル、メイショウドトウ、アドマイヤジャパン、ローズキングダム、ブロードアピール
ヴェルサイユファームの記事を準備していると、残念なニュースを耳にしました。タイキシャトルとローズキングダムが放牧中にたてがみを切られる被害にあったとのこと。9/14に見学者が切ったようですが、せっかく好意で見せていただいている関係者の思いを踏みにじるような行為で許せるものではありません。
しばらく見学中止とのことですが、やむをえないでしょう。今後このようなことが二度と起きないよう願っていますし、啓蒙にも努めたいと思います。
上記の情報は、2019年8月25日時点のものです。
見学日程や時間、条件は変更になることがあるので、訪問する際は事前に必ず「競走馬のふるさと案内所」のホームページ( https://uma-furusato.com/ )を確認してください。またそこにある「牧場見学ガイド」を参考に、ルールを守って見学していただけるようお願いします。