有馬記念を見て改めて感じたこと

今年の有馬記念は、正直メンバーはやや寂しいものでしたが、障害王者のオジュウチョウサンの挑戦というトピックスもあり、違う意味で盛り上がった一戦となりました。
そんな有馬記念を見て、改めて感じたことがいくつかあったので、ちょっとまとめてみました。

1. 今年の3歳馬の強さ
下半期の古馬平地G1は7戦ありますが、その中で今年3歳馬が制したのが、マイルCS(ステルヴィオ)、JC(アーモンドアイ)、チャンピオンズC(ルヴァンスレーヴ)、有馬記念(ブラストワンピース)の4戦。これはグレード制が導入された1984年以降では最多となります。
しかもその勝ち方は、それぞれが印象に残るものでした。JCのアーモンドアイの驚異的な世界レコードの激走はもちろん、チャンピオンズCのルヴァンスレーヴの強さも衝撃的でした。

また残る3戦のうち、天皇賞(秋)は3歳馬の参戦がなく、スプリンターズSではただ1頭出走した3歳牝馬のラブカンプーが11番人気ながらクビ差2着に激走、エリザベス女王杯もG1勝ちのない2頭が5,6着に好走。このように3歳馬は勝てないまでも、実績を残していたのです。

そして有馬記念。牡牝の3冠を勝った3歳馬(牡馬はエポカドーロ(皐月賞)、ワグネリアン(ダービー)、フィエールマン(菊花賞)。牝馬はアーモンドアイ(3冠))はいずれも出走せず、唯一出てきたのはG3を2勝しているものの、ダービーは2番人気5着、菊花賞は1番人気4着とG1では人気はあったものの、連対さえできなかったブラストワンピースのみ。
しかし逃げるキセキ(2番人気)を直線で外から交わしたのは、中団から早めに進出してきた、そのブラストワンピース(3番人気)でした。最後は後方からブラストワンピースを追ってきたレイデオロ(1番人気)が猛然と迫ってきたものの、クビ差抑えて初のG1制覇となりました。

天皇賞(秋)を勝ち、中長距離戦線の現役古馬では最も強いと思われるレイデオロに勝ったということは、ブラストワンピースの力は古馬の面々を凌駕すると思われます。しかしそのブラストワンピースでさえ、クラシックでは連対することができなかったという事実を考えると、今年の3歳勢の強さはかなりのレベルだと言えるのではないでしょうか。

2. 有馬記念で復活する馬の条件
毎年有馬記念を最後に引退する馬がいますが、今年は2年前の有馬記念でキタサンブラックを交わして優勝したサトノダイヤモンド、2勝馬ながら菊花賞、有馬記念、JCとG1で2着3回の実績を誇るサウンズオブアースなどがラストランとなりました。
この2頭はすばらしい実績を残しながら、その後低迷。それぞれ6番人気、14番人気と伏兵扱いでした。しかし有馬記念で復活した馬たちの名前を挙げて、ここで復活するかもという予想をいくつか目にしました。

有馬記念での復活と言えば、古くは1990年のオグリキャップや1993年のトウカイテイオー。最近では2014年のジェンティルドンナなどがあげられます。しかし実はそれよりも多くの馬たちが、復活することなくターフを去って行ったのです。ではその違いは何なのでしょう。

個人的には、復活する馬は気持ちで走る部分が強いという印象を受けます。
例えばオグリキャップは、1989年にマイルCSを勝って連闘で臨んだJCで、当時の世界レコードの2着に激走。その影響からか有馬記念は5着に敗れましたが、翌年休み明けの安田記念で武豊騎手を背に鮮やかに復活して優勝。その秋は天皇賞(秋)、JCと大敗したあとに、再び武豊騎手を背に有馬記念で復活。いずれも体力的に厳しい中、勝ちたいという強い気持ちで復活したのではないかと思います。
またトウカイテイオーも骨折で3回も長期休養したものの、そのたびに復活。良血馬であり力があったのは事実ですが、どちらかと言うと気持ちで走る馬という印象でした。それはジェンティルドンナも同様だったと思います。

3. 障害実績馬の平地重賞への挑戦の難しさ
今年の有馬記念で最も話題となったのは、J・G1 5勝を含む障害重賞9連勝から平地に転向し、500万、1000万と勝って、11連勝で挑戦してきたオジュウチョウサンの参戦でしょう。しかし、以前このブログの記事で書いたように、J・G1ですばらしい実績を残した過去の馬たちの成績を見る限り、かなり厳しい挑戦であることは見えていました。
そしてレースでは、逃げるキセキの2番手からレースを進め、直線でも粘りを見せたものの、最後は外から各馬に一気に交わされ、0.8秒差9着に終わりました。

J・G1でのあの力強い勝ち方、そして有馬記念に実績のある父ステイゴールド、母父シンボリクリスエスという血統、さらに中山に向いた先行脚質ということを考えると、もしかして奇跡を起こしてくれるかもとも期待させたのですが、やはり現実は甘くありませんでした。

レースを見て感じたのは、障害と平地のペースの違いと、求められる能力の違いでした。障害はどうしても距離が長く、また飛越の前にスピードを落とすために、平地競走に比べると流れがスローになります。そのため、スピードを持続させる平地競走はかなり厳しいのではないでしょうか。また障害は体力比べになり、最後は力を振り絞ってゴールする感じですが、平地では道中は体力を温存し、最後に末脚比べで相手よりも少しでも前に出ることを目指します。
今日のレースでも直線半ばまでオジュウチョウサンは頑張っていましたが、その末脚の違いは明らかでした。オジュウチョウサンの上りは36.9。これは16頭のうち下から3番目の遅いタイムでした。

しかしこの挑戦はすばらしいものでしたし、一時は単勝2番人気になるなど、多くの人が夢を託したと思います。挑戦しなければ奇跡も起こらないわけで、これに懲りずに今後も挑戦を続けてほしいと思いました。G1は無理でも、G3ぐらいならとも思わせる走りぶりだったのではないでしょうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です