1頭だけ次元が違う強さでした ~オークス

桜花賞のアーモンドアイの勝ち方はかなり衝撃的でしたが、距離が1.5倍に伸びるオークスでのレースぶりが想像できないというのが、当時の正直な感想でした。2番目の馬とは上りタイムが1秒違う圧倒的なあの末脚は、マイルでこそという感じでしたし、オークスでの活躍に疑問を抱く一番の理由は、やはりアーモンドアイが短距離を得意としたロードカナロア産駒だということが大きいでしょう。
ロードカナロア自身はマイルまでしか走っていませんし、最も印象的だったのは芝1200mで見せたパフォーマンスでした。それを象徴するように、産駒の芝での平均勝ち距離は約1470mと、明らかにスプリンターが多いことがわかります。

そのため、アーモンドアイの不安点としては、距離をあげるものが多かった印象です。しかし個人的には、あまり心配していませんでした。
その理由として、まずこの時期の3歳牝馬には、距離適性よりも調子の方がオークスの成績には大きく影響するということがあります。毎年桜花賞で好走した馬は、オークスでも好走することが多いですし、その後1400m~1600mで活躍することになるローブデコルテが、2007年のオークスを勝っているのが、ある意味象徴的な事実だと思います。
また後ろから行く馬は最後の上り勝負となり、先行馬よりも距離の壁を感じにくい印象もあります。

予想に当たっては、アーモンドアイのルメール騎手は、末脚を活かす騎乗をするだろうと考えていました。シンザン記念も桜花賞も後方から追い込む形で勝っていますし、その方が先行して正攻法の競馬をするよりも、距離不安を軽減できるのではと思ったからです。

しかしレースが始まると、ルメール騎手はアーモンドアイを外から積極的に前の方に押していきます。そして1コーナーを回ったところでは、ラッキーライラックをマークするように6番手につけます。
これはもしかして掛かったのかと一瞬不安になりましたが、よく見るとしっかりと折り合っており、逆にラッキーライラックの方が、やや行きたがっているように見えます。
1000mは59.6とハイペースですが、これは大きく逃げるサヤカチャンのペースで、8馬身ほど離れた2番手はそれより1秒以上遅くオークスの平均ペースぐらい。そのまま縦一列で進み、あまり体勢が変わらないまま4コーナーを回ります。

直線に入ると先行していたリリーノーブルが抜け出し、それをラッキーライラックが懸命に追いますが、外から追い出したアーモンドアイはラッキーライラックを交わすと、リリーノーブルも並ぶ間もなく抜き去ります。
リリーノーブル、ラッキーライラックも追いすがりますが、最後は脚色が一緒になり、アーモンドアイがリリーノーブルに2馬身差をつけて快勝。そのリリーノーブルから1 3/4馬身遅れてラッキーライラックは3着まで。

アーモンドアイの上りは、またもやメンバー1番の33.2。2番のリリーノーブル、ラッキーライラック、レッドサクヤが33.9なので、その差は0.7秒。好位からこの上りを使われたら、後ろの馬はもちろん、前の馬もかないません。まさに1頭だけ次元が違うと言っても過言ではない走りでした。

勝ちタイムは、2012年にジェンティルドンナがマークしたレコードタイム2.23.6に、0.2秒差に迫る2.23.8。海外含むG1 7勝で、JC2勝に最後は有馬記念を勝った名牝ジェンティルドンナと変わらない勝ちタイムをマークしたアーモンドアイは、すでに活躍を約束されていると言っても過言ではないでしょう。
このまま順調に行けば、すでに勝負付けが済んでいる秋華賞での牝馬3冠はほぼ確実でしょうし、牡馬相手のG1でも活躍が期待できます。

まずはゆっくりと休んで、秋以降の戦いに備えてもらい、またすばらしいパフォーマンスを見せてほしいと思います。

アーモンドアイ
【アーモンドアイ】パドックでは落ち着いて集中して、しっかり歩いていました。
アーモンドアイ
【アーモンドアイ】返し馬での弾むような走りは、好調の証だったと思います。

そして、いよいよダービーウイークの始まりです。牝馬とは異なり、牡馬のクラシック路線はかなりの混戦。オルフェーヴル産駒のエポカドーロが、ロードカナロア産駒でルメール騎手騎乗のステルヴィオを破って、ラッキーライラックの敵を討ち2冠を達成するのか。はたまたオークスで上位3頭に入れなかったディープインパクト産駒で、ダービー馬候補と呼ばれ続けたダノンプレミアムやワグネリアンなどが巻き返すのか。いろいろ興味深い戦いとなりそうです。

ところで、1999年に皐月賞を勝ち、また2000年には古馬中長距離G1をすべて制するなど、G1 7勝をあげたテイエムオペラオーが5/17に亡くなりました。
クラシックでのナリタトップロード、アドマイヤベガとの死闘や、古馬になってからのメイショウドトウとの名勝負などがとても印象深かったのですが、個人的にはパドックでのある意味サラブレッドの理想のような歩く姿が、強く記憶に残っています。強い馬の姿とはこういうものかと、そのあとの馬の姿を見るスタンダードになりました。
ご冥福をお祈りします。

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