オルフェーヴルの意外性は産駒に受け継がれたか ~阪神JF

毎年2歳戦では、その年に初産駒を送り出す新種牡馬が話題になります。今年の2歳牝馬戦で中心となったのは、何といっても新種牡馬オルフェーヴルの2頭の産駒でしょう。

まずは2戦2勝で札幌2歳Sを制したロックディスタウン。新潟芝1800mの新馬戦を好位から3/4差で制すると、札幌2歳Sでは中団から伸びてクビ差で勝利します。3か月ぶりの休み明けが少し懸念されましたが、牡馬相手にクラシックの登竜門でもあるレースに勝ったこともあり、今日の阪神JFでは3.1倍の1番人気に支持されました。
そしてもう1頭が、同じく2戦2勝でアルテミスSを勝ったラッキーライラック。新潟芝1600mの牝馬限定新馬戦を好位から1 1/2差で制すると、アルテミスSでは掛かりぎみに先行しながら直線は力強く抜け出し、3/4差で勝利。2戦とも牝馬相手の勝ちということもあったのか、4.1倍の2番人気。

ともに2戦無敗で重賞を制するという甲乙つけがたい成績で、さぞかし新種牡馬としてのオルフェーヴルの前途は洋々かと思いきや、実はオルフェーヴル産駒の牝馬は先週までに30頭すでに出走していながら、勝ったのは上記の2頭のみ。勝率は6%ながら、勝った馬は無敗で必ず重賞を勝つという、0か100かの評価の難しい種牡馬なのです。
ちなみに牡馬は37頭がデビューして4頭が勝ちあがったものの、いずれも1勝どまりで、まだ牝馬の2頭ほどの活躍は見られません。

ところでオルフェーヴルといえば3冠を達成したものの、3歳春の時点ではそれほど評価は高くありませんでした。
2歳の8月に新潟芝マイルの新馬戦を中団から差し切って勝つと、秋はマイルの芙蓉S、1400mの京王杯2歳Sとマイル前後を使われて2,10着と今一つの成績。明けて3歳になってもシンザン記念2着、きさらぎ賞3着と、やはりマイル前後で勝ちきれない競馬が続きます。そのためスプリングSで重賞初制覇を飾るも、評価はあまり上がらず皐月賞は単勝10.8倍の4番人気と、その後の成績からは考えられないような低評価だったのです。

産駒のイメージは、どうしても親の戦績に引っ張られる傾向にありますが、少なくともオルフェーヴル産駒に早熟な馬が出ると予測した人は少なかったでしょう。でもそれが逆に意外性の馬だったオルフェーヴルらしいと言えるのかもしれません。
3冠はいずれもとても強い勝ち方で制したものの、レース後に池添騎手を振り落とすようなやんちゃな面を見せました。それは4歳時の阪神大賞典での逸走や続く天皇賞(春)での謎の大敗で見せたような、捉えどころのなさにもつながります。さらに凱旋門賞では2年連続2着になり、特に4歳の時は抜け出していったんは勝ったと思わせながら、内にもたれて2着になるという、何とも言えない悔しい想いも味わされました。ジャパンCではジェンティルドンナと壮絶な叩き合いの末に、ハナ差敗れて引き立て役に回ったものの、最後の有馬記念では8馬身差という圧勝で有終の美を飾りました。
オルフェーヴルの戦績を振り返ってみると、強いんだけど時々やらかしてしまう不思議な馬というのが個人的なイメージですし、それが強烈な魅力でもあったと思います。

さて、戦前の評価では甲乙つけがたかった2頭の結果は、ラッキーライラックが中団から抜け出して無傷の3連勝でG1制覇を飾り、オルフェーヴルに早くもG1馬の父という称号を贈るのに成功したのに対し、ロックディスタウンは好位追走から直線は伸びず1.1秒差9着と人気を大きく裏切ってしまいました。
ロックディスタウンは調教を見ても厳しそうな感じで、個人的には間隔が空いたのが響いたのではと思います。

オルフェーヴルの成績を見ると、全21戦 12・6・1・2で連対率86%と驚異的な安定感を誇ったことがわかります。しかし着外2が10着、11着と、負けるときは大敗でした。この気まぐれさも、大きな魅力でした。その意味ではロックディスタウンにもまだ巻き返すチャンスはあると思います。この2頭だけでなく、他のオルフェーヴル産駒からも父を凌駕するような強さと意外性を持つ馬が出てくることを期待したいと思います。

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