届くか届かないかは天地ほどの違い ~オークス

今日のオークスは、桜花賞3着で単勝2番人気に支持されたヌーヴォレコルトが、中団から抜け出してハープスターの追撃をクビ差抑えて、初重賞制覇をクラシックの舞台で実現しました。

2着に敗れたハープスターは、桜花賞までで5戦4勝。唯一の敗戦は阪神JFで道中やや詰まり、レッドリヴェールをハナ差とらえなかっただけで、そのレッドリヴェールがダービー参戦で不在となったため、事実上の1強と見なされ、単勝1.3倍の圧倒的な1番人気に支持されていました。
ただしその脚質は最後方からの追い込みという極端なもの。桜花賞も4コーナー最後方から極限の上り32.9で追い込み、レッドリヴェールにクビ差の辛勝でした。

ここ2週のG1(NHKマイルC、ヴィクトリアマイル)がいずれも逃げ切り勝ちで終わったように、今の東京芝は先行有利の状況と言われており、それはハープスターの川田騎手もよくわかっていたと思います。そこで、はたしてハープスターはどんな戦法をとるのかが焦点でした。
ハープスターの良さを発揮するためには、今まで通り最後方から追い込むのがよいのですが、それでは届かない危険があります。とはいえ中途半端に前に行くと、馬がとまどったり気分を損ねたりして、末脚が不発に終わる危険もあります。

レースでは、ハープスターはスタートしてすぐに抑えたものの、最後方までは下げずに後ろから4番手ぐらいで向こう正面に入ります。しかし3コーナーで他馬が動き出しても反応せず、4コーナーは後ろから2番手で回り、すぐに外に出して追撃を開始。
ところが、前を行くニシノアカツキが外にはじかれると、それに驚いたように一瞬外によれ、そこから1頭だけ離れた外を猛然と追い込みます。

対するヌーヴォレコルトは桜花賞でハープスターに1馬身差の3着。チューリップ賞では2 1/2馬身差の完敗でしたから、ずいぶん差を詰めました。とはいえ、上りは約1秒も遅く、それもあって今日は2番人気とはいえ9.8倍とかなり離れた評価でした。
ヌーヴォレコルトの岩田騎手とすれば、ハープスターよりも早めにスパートして、ゴールまで抜かせないという戦法しかなく、実際にそのような形となりました。中団でレースを進めると、馬場の真ん中をじりじりと進出し、残り200mで満を持して抜け出すと、猛然とゴールを目指します。

先に抜け出したヌーヴォレコルトに外から猛然とハープスターが襲いかかりますが、その末脚の差は桜花賞ほどはありません。ハープスターはじりじり伸びるものの、結局ゴールまで交わすことはできませんでした。

追い込みで勝った騎手のインタビューでは、ここで追い出せば勝てると確信を持っているわけではなく、結果として交わすことができたという話をよく聞きます。どんな優れた騎手でも、ゴールからの距離を逆算して追い出すのではなく、あくまでも感覚で追い出すのでしょう。
その結果としてハナ差でも交わせば賞賛され、交わせなければ非難を受けるということなのだと思います。

たとえば2009年のオークスで、ブエナビスタはハナ差とはいえ勝ったので、安藤勝騎手は賞賛を一身に受けましたが、あれが負けていたら後ろから行き過ぎたとか、いろいろ批判を受けたと思います。
おそらく今回の川田騎手も、いろいろ言われるでしょう。もう少し前に行った方がよかったとか、最初から不利を受けないような大外に出した方がよかったとか、あるいは思い切って最後方から行った方がよかったのではとか・・・。
ただし、正解は誰にもわかりませんし、結果として交わせなかったために、いろいろ言われてしまうのだと思います。そういう意味では、届くか届かないかはある意味運ですが、その結果は天と地ほども違い、つくづく騎手とは因果な商売だなとも思います。

ハープスターの今後のローテーションはまだわかりませんが、決定的な負けというわけではなく、悲観するような内容でもないと思いますので、秋には元気にまた大きなところを目指してほしいと思います。

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