先週の阪神JFは重賞勝ち馬が1頭もいないことが話題になりましたが、朝日杯FSは4頭の重賞勝ち馬と1頭の重賞2着馬がそろい、その5頭が5番人気までを占めることになりました。オッズを見てもその5頭が単勝1桁で、6番人気は20倍を超えるということで、実質的に5頭立てともいえる状況に。
そして結果もその5頭が5着以内を占めるという固い決着となりました。
1,2番人気はデイリー杯2歳Sで1,2着となったアドマイヤクワッズ(3.1倍)とカヴァレリッツォ(3.6倍)。2頭の着差はアタマ差でしたが、3着は5馬身離れ、また勝ちタイムは京都芝1600mの2歳レコードとハイレベルなもの。
順当ならこの2頭で仕方ないのではとも思いましたが、どちらを中心にするかは難しいものがありました。個人的にはアドマイヤクワッズの方が調教が良くみえたのですが、力的には互角と思われました。
3番人気はサウジアラビアRCを最後方から差し切って勝ったエコロアルバ(4.9倍)。その内容は素晴らしいものでしたが、懸念されたのは初の関西圏への輸送と、切れが特長ゆえの重馬場への適性でした。
馬体減りもなくパドックでも落ち着いて調子が良さそうだったので、輸送の影響はないと思いましたが、馬場適性は走ってみないとわからないというのが正直なところでした。
4番人気は新潟2歳Sを先行して4馬身差で圧勝したリアライズシリウス(4.9倍)。新馬はやや重で圧勝しており、馬場適性は問題ないと思われましたが、4か月の休み明けが気になりました。
過去10年で前走が9月以前だった馬は、2着1回があるだけと、ほぼ馬券になっていないのです。
5番人気は京王杯2歳Sで2番手から抜け出し3馬身差で快勝したダイヤモンドノット(8.3倍)。マイルの経験がないのは気になりましたが、京王杯2歳Sの勝ち馬は過去10年で2着2回3着1回と、勝てないまでも馬券にはなっているので、好走は可能と思われました。
レースで逃げたのは、ルメール騎手騎乗のダイヤモンドノットでした。逃げるのはカクウチかリアライズシリウスあたりと思っていたので少し驚きましたが、前走2番手から抜け出す強い勝ち方と、馬場状態から判断したのでしょう。
津村騎手のリアライズシリウスが外の好位、松山騎手のエコロアルバが中団の内でC.デムーロ騎手のカヴァレリッツォがその外、坂井騎手のアドマイヤクワッズが後方の外という位置取りになります。
600mが34.6と、ダイヤモンドノットはやや重としては平均ペースでの逃げとなりますが、後方はやや離れた縦長の隊列となり、プレッシャーのかからない絶好の展開となります。
そして3コーナーから動いたのがアドマイヤクワッズとエコロアルバ。2頭とも外を回す選択をしたのですが、外に行った松山騎手のエコロアルバの、さらに外に坂井騎手はアドマイヤクワッズを誘導します。
対するC.デムーロ騎手カヴァレリッツォの選択は内。馬群の中を突きますが、直線に入って前の馬たちが外目に持ち出すのを見て、最内にカヴァレリッツォを誘導します。
残り200mで3馬身ほど抜け出したダイヤモンドノットのルメール騎手は、してやったりという思いだったでしょう。2番手はカヴァレリッツォが上がってきましたが差は大きく、外を回したエコロアルバは大外の5番手で、アドマイヤクワッズはさらに2馬身ほど後方。
そこからカヴァレリッツォ、エコロアルバ、アドマイヤクワッズがダイヤモンドノットとの差を詰めてきますが、やや重ということもありじりじりとしか詰まりません。
それでも力強く脚を伸ばしたカヴァレリッツォがゴール直前でダイヤモンドノットを交わすと、そのまま1着でゴール。2着はダイヤモンドノットが粘り、最後に外から伸びたアドマイヤクワッズがエコロアルバを交わして3着に入り、エコロアルバが4着。
やや離れた5着はリアライズシリウスとなりました。
上り最速はカヴァレリッツォの34.3。内が空くという幸運もありましたが、勇気をもって内を選択したC.デムーロ騎手のお手柄ともいえるでしょう。
それを見て思い出したのが、以前ペリエ騎手が日本で騎乗していた時に、日本の騎手は4コーナーから直線で必ず内をあけるので、内を突けば勝つ可能性が上がるという意味のことを言っていたことでした。ヨーロッパの騎手は内を厳しく閉めるそうですが、日本では外に出すことが多いのです。
0.1秒を争う競馬では、コースロスをしないことが最重要でもあり、ペリエ騎手が感じていたことをC.デムーロ騎手も体感で知っていたのではないでしょうか。
その意味では坂井騎手、松山騎手の選択は疑問が残るものでした。坂井騎手のアドマイヤクワッズは2番の上り34.6、松山騎手のエコロアルバは3番の上り34.7で追い込んでおり、内を選択していれば上りタイムの短縮は可能で、カヴァレリッツォと接戦に持ち込めた可能性もあったのです。
ただし2頭ともまだこれからの馬。パドックではともに2歳離れした堂々とした様子で歩いており、将来性は高いと感じました。鞍上ともども成長を期待したいと思います。
そして勝ったカヴァレリッツォですが、父サートゥルナーリアに初のG1制覇をプレゼントしました。
同じ2歳にはファンタジーSを勝ったフェスティバルヒルや、京都2歳Sを勝って来週のホープフルSでも有力な1頭であるジャスティンビスタなどもいます。来年のクラシックでは旋風を巻き起こすかもしれません。
また鞍上のC.デムーロ騎手は、過去10年で朝日杯FSは2着3回と涙を呑んできたのですが、ようやく勝つことができました。
対するルメール騎手はまたも朝日杯FSを勝てず。かつて武豊騎手が勝てずに話題になったものですが、なぜか名手が勝てないG1なのかもしれません。
とはいえあらためて騎手の判断が勝負を大きく左右するということを実感させられたレースでもあり、今後も一流の騎乗を期待したいと思います。