東スポ杯2歳S観戦記(2025年)

昨年の勝ち馬クロワデュノールが日本ダービーを制するなど、この10年で連対馬から7頭のG1馬を生んでいる出世レース東スポ杯2歳S。今年もG1を勝つような馬がここから出るのか、期待をもって観戦してきました。

過去10年の傾向を見ると、1番人気で勝った5頭は、すべて2歳(ダノンザキッド)あるいは3歳(ワグネリアン、コントレイル、イクイノックス、クロワデュノール)でG1を勝っています。残りのG1勝ち2頭は、4番人気2着のスワーヴリチャードと5番人気2着のタイトルホルダー。
これを見る限り、1番人気で勝つと将来がかなり有望だということがわかります。

今年の1番人気(2.3倍)はエピファネイア産駒のダノンヒストリー。セレクトセールで2億2900万円の値が付いたそうですが、ダノンベルーガやボンドガールの下という良血。6月の東京芝1800m新馬戦で逃げて、1.46.8の好タイムで2 1/2馬身差で勝ち、5か月半ぶりのレースでした。その勝ち方は大物感たっぷりで、名門堀厩舎に鞍上レーン騎手ということもあり、人気になるのは仕方ないでしょう。
調教もそこそこ良かったので期待していたのですが、パドックで見た感想は、正直あまりぱっとしないと感じました。素軽い歩様ではありましたが、トモの踏み込みは今一つで馬体もあまり迫力を感じず、2.3倍は見込まれすぎかなと思えたのです。

ダノンヒストリー 2025年11月24日 東京競馬場

2番人気(4.1倍)はシスキン産駒のライヒスアドラー。9月の中山芝2000m新馬戦で2番手から1番の33.1の上りで突き放し、3 1/2馬身差で勝っての2戦目でした。
パドックの感じは、落ち着いていながらクビを使ってリズミカルな歩様で、トモの踏み込みも深く良く見せました。ただしシスキン産駒はまだ2世代目ということもありますが活躍馬が少なく、テリオスララが昨年の萩S(L)を勝ったのが唯一の特別勝ちというところに不安を感じました。

ライヒスアドラー 2025年11月24日 東京競馬場

3番人気(7.3倍)はキズナ産駒のパントルナイーフ。木村厩舎でルメール騎手騎乗でありながらこの人気は不思議です。その理由としては新馬戦を取りこぼし、2戦目の中山芝1800m未勝利は1.1倍の人気に応えて5番手から1 1/4馬身差で差し切って勝ったものの、上りは34.6とかかり、勝ちタイムも1.49.4と平凡だったこともあるのでしょう。
ただし調教は覇気あふれる動きで好調そうに見え、パドックも落ち着いていながらクビを使って素軽い動きで、トモの踏み込みも力強く、個人的にはかなり高評価でした。

パントルナイーフ 2025年11月24日 東京競馬場

以下4番人気(9.0倍)は中京芝2000m未勝利を3馬身差で勝ったサトノダイヤモンド産駒ローベルクランツ、5番人気(10.5倍)はサウジアラビアRCで最後に追い込んで1 3/4差3着のモーリス産駒ゾロアストロと続きました。

ゾロアストロ 2025年11月24日 東京競馬場

逃げたのは、京都芝1800m新馬戦で話題のエムズビギンを押さえて逃げ切ったコントレイル産駒テルヒコウ(7番人気)。押して先頭に立つと、後続はかなりの縦長で進んだためペースが速いかと思ったのですが、最初の1000mは1.01.0とスローペース。それをローベルクランツ、ライヒスアドラーは3,4番手の好位で、パントルナイーフ、ゾロアストロは中団、大きく出遅れたダノンヒストリーは後方で追走します。
3コーナーから後続が差を詰めて馬群が詰まってきますが、パントルナイーフのルメール騎手はスローを見て取ったのか早めに押し上げてきます。
直線に入っても残り200mまではテルヒコウが先頭で粘るものの、内ラチ沿いからライヒスアドラー、馬場中央からパントルナイーフが伸びてきて、残り100mでテルヒコウを捉えて2頭で先頭争い。さらに大外からゾロアストロが伸びてきて3頭で抜け出します。一足先に先頭に立ったパントルナイーフに、ゾロアストロが並びかけたところがゴール。
写真判定の結果1着パントルナイーフで、アタマ差2着がゾロアストロ、さらに1馬身差3着がライヒスアドラーとなりました。
出遅れたダノンヒストリーは後方から追込みに賭けるも、直線も伸びが見られず1.0秒差7着に終わりました。

先頭に立つパントルナイーフ 2025年11月24日 東京競馬場

勝ちタイムは1.46.0。これはコントレイルのレコードには1.5秒およばないものの、過去10年では3番目に速く、イクイノックスよりも0.2秒速い決着となりました。スローで流れたこともあり上りは速く、時計的には水準以上でした。

過去10年の結果を見ると、1番人気で負けた馬でその後巻き返して活躍した例はなく、残念ながらダノンヒストリーについては期待薄と言えるでしょう。個人的にもパドックを見た感じでは、現状ではクラシックでの活躍は難しいのではと思います。

そして3番人気で勝ったパントルナイーフですが、過去には4番人気で勝ったスマートオーディンが毎日杯、京都新聞杯を勝ってダービーで6着に入った例があるものの、2着馬とはアタマ差ということもあり、抜けた存在とはいえません。過去10年東スポ杯2歳Sをクビ差以下で勝った馬は、活躍できていないというのも事実です。
ただし末脚は2番の32.9を繰り出し、馬体や雰囲気もなかなか良く、厩舎の力もあるので、成長次第では重賞での活躍もあり得るでしょう。

パントルナイーフを労うルメール騎手 2025年11月24日 東京競馬場

個人的には2着のゾロアストロの方が、期待できるかもしれないと思います。
サウジアラビアRCでは直線で反応が悪く後方に置かれたのですが、勝ったエコロアルバに交わされると、それで火が付いたのか末脚を伸ばして3着に入りました。そして東スポ杯2歳Sでも、残り200mまではじわじわとしか伸びなかったのですが、そこから一気に脚を伸ばすと、1番の上り32.7で最後は勝ち馬にアタマ差まで迫ったのです。
どちらもスローペースに泣かされた面があり、ペースが上がれば一気に差し切る可能性もあります。ただ末脚に火が付くのに時間がかかる様子なので、活躍するためにはそのあたりの成長は必要だと思います。

今年の東スポ杯2歳Sはスター誕生を予感させないという意味で、個人的にはやや期待はずれな結果でしたが、そんな懸念を吹き飛ばすような活躍をする馬が、この中から現れるかもしれません。
そんな希望を持ちつつ、暮れの2歳G1から来年のクラシックを、楽しみに待ちたいと思います。

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