波乱万丈の競走生活を経て ~エリザベス女王杯

レガレイラの馬柱を見ていると、波乱万丈という言葉が当てはまるなと思います。
そもそもの始まりは、牝馬ながらホープフルSに出走し、1番人気に支持されると、差し切って勝ってしまったことでした。ゴール前でよれたシンエンペラーに体をぶつけられながらも、怯むことなく勝ちきったのです。
ルメール騎手の距離が伸びた方が良いという助言を受けて、牝馬なら当然向かうべきマイルの阪神JFではなく、2000mのホープフルSを選んだ結果でした。

この勝利を受けて、3歳春のクラシックでレガレイラは、牝馬路線ではなく牡馬の皐月賞から日本ダービーという路線を歩むことになります。
これは長い距離の方が向くという陣営の判断もありましたが、同厩舎同馬主の同じ3歳牝馬チェルヴィニアとの使い分けという事情もあったと思われます。どちらも主戦がルメール騎手で、さらにこの年のサンデーレーシングの3歳牡馬に、クラシックを狙える馬がいなかったことも、この選択を後押ししました。

個人的にも生で見たホープフルSでのレガレイラのレースが印象に残ったため、2024年春の牡馬クラシックでは、かなりレガレイラの取捨に悩まされることになりました。
皐月賞はレガレイラが3.1倍の1番人気となりましたが、ルメール騎手がドバイで負傷して乗り替わったこともあり、個人的には対抗評価。しかしかなり厚めに買ってしまい、6着という結果に落胆しました。

日本ダービーではルメール騎手が戻ったこともあり、皐月賞馬ジャスティンミラノに次ぐ4.5倍の2番人気。皐月賞では負けながらも1番の上りで勝ち馬に迫ったこともあり、ウオッカの再現も期待できるのではと、レガレイラを本命にしました。
しかしスローにもかかわらず後方に構えたレガレイラは、直線で1番の33.2の上りを使って追い込むものの、勝ったダノンデサイルからは0.7秒差の5着まで。結局春のクラシックでは見せ場は作ったものの、結果を出すことはできなかったのです。

3歳秋には牝馬路線をとるものの、圧倒的1番人気となったローズSは出遅れて追い込み届かず、まさかの5着敗退。
さらに秋華賞はチェルヴィニアに任せて、果敢に古馬に挑戦したエリザベス女王杯でも1.9倍の1番人気になりますが、度重なる不利もあって5着。
ホープフルSを勝った後、3歳になって4戦連続で連対を外すという不振の結果に終わったのです。

ただしそれぞれのレースを見てみると、エリザベス女王杯は不利が大きく、それ以外の4戦は後方から最速の上りで追い込むものの脚を余して敗れるという形で、決して悲観するようなレース内容ではなかったのです。

そしてレガレイラは有馬記念に臨むのですが、さすがに2024年は結果が出ていないことに加えて、中山では不利な追い込み脚質ということもあり、初めて10.9倍の5番人気という低い評価になってしまいました。これはルメール騎手が菊花賞馬のアーバンシックを選び、戸崎騎手に乗り替わったということも理由としてはあったでしょう。個人的にも勝つのは難しいのではと思っていました。

ところがそれまでとは変わって好位を進んだレガレイラは、4コーナーから外のシャフリヤールと馬体を合わせて伸びると、ハナ差でシャフリヤールを下し、3歳牝馬としては64年ぶりの有馬記念制覇という快挙を成し遂げたのです。
1年ぶりの復活となったのですが、ここまででもすでに波乱万丈の競走生活と言えるでしょう。

その後軽度の骨折で半年休養したレガレイラの復帰戦は今年の宝塚記念。連覇を狙うベラジオオペラに次ぐ4.9倍の2番人気に支持されますが、中団から直線はまったく伸びず、勝ったメイショウタバルから1.5秒差の11着と初めての大敗を喫してしまいます。
それでも57kgを背負った秋初戦のオールカマーは、1番の上りで1 1/4馬身差の完勝と再び復活。エリザベス女王杯で昨年の雪辱を晴らそうと挑戦してきました。

有馬記念を勝つという圧倒的な戦績ながら、昨年よりも落ちる2.3倍の1番人気となったのは、いくつかの理由がありました。
まずはレガレイラ自身、G1,G2は中山でしか勝っていないということがありました。それぞれ敗因はあったものの、他場では結果が出ていないという厳然とした事実があったのです。
また戸崎騎手の主要4場での成績を見ると、東京,中山の勝率が14%を超えているのに対して、京都は9%台。連対率も関東では20%台後半なのに対して、京都では19%台と明らかに差があるのです。また京都では1度もG1を勝ったことがないという事実もありました。

そのため当初は、レガレイラの本命視はどうかと、個人的には思っていました。
しかし木村師は最終追い切り後のインタビューで、「スタッフと話し合った設計図通りになった」と自信のコメントを述べており、また昨年の敗戦についても「ジョッキーもその時々で最善は尽くしてくれたが、スムーズにいかないことが、レガレイラに当たってしまったなという状況」と決して力負けではなく、京都が向かないということはないという認識を示したのです。
最終追い切りは逆光によりあまり見えなかったのですが、パドックで見たレガレイラは落ち着いた中にも覇気が感じられ、馬体は柔らかくトモの踏み込みは深く力強く、毛ヅヤもぴかぴかで、とても素晴らしい状態だということが感じられました。
正直言って、16頭の中では抜けて良く見えたこともあり、圧勝もあり得るのではと思いました。

集合の合図がかかったあと、ゲートに入る練習をしたレガレイラは、その甲斐もあって心配されたスタートを無難に切ります。その後、中団やや後方の外につけ、掛かるそぶりもなく淡々と追走。4コーナーで外に出すと、直線はじわじわと差を詰めてきます。
残り200mを切ってパラディレーヌ(4番人気)が抜け出して先頭。個人的にはこの馬を本命にしていたので大騒ぎしたのですが、そこに外から迫ってきたのがレガレイラでした。残り100m過ぎで先頭に立つと、最後はパラディレーヌに1 3/4馬身差をつけて1着。着差以上の完勝でした。
上りは最後方から3着に追い込んだライラックと同じ最速の34.2。牝馬相手では力が違うところを見せました。

実はレガレイラが連勝したのは今回が初めて。波乱の競走生活を経て、ようやく安定期に入った感じがあります。
順調に行けば、おそらく次走は連覇を目指す有馬記念となるでしょう。
連覇した馬といえば、スピードシンボリ、シンボリルドルフ、グラスワンダー、シンボリクリスエスと、いずれも歴史に残る名馬ばかりで、しかもすべて牡馬。もし牝馬で達成すれば、まさに歴史的な快挙となります。
しかし今のレガレイラなら、勝ってもおかしくないオーラを感じます。はたして暮れのグランプリはどんなレースとなるでしょう。とても楽しみです。

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