アルテミスS観戦記 さすが中内田厩舎

今年14回目となる2歳牝馬G3のアルテミスSですが、近年その重要性が増していると思います。特にラッキーライラックがアルテミスSから阪神JFを連勝した2017年(第6回)以降は、ソダシ(2020年)、サークルオブライフ(2021年)、チェルヴィニア(2023年)と次々にG1馬を輩出。注目のレースとなっています。

今年1番人気(2.2倍)になったのは、5年前の勝ち馬ソダシの半妹で同じ須貝厩舎所属のマルガ。父がクロフネからモーリスに変わったのですが、函館芝1800mの新馬戦は強烈な印象を残しました。武豊騎手鞍上で1.1倍の圧倒的な支持を受けると、淀みのないペースで逃げて、1番の上りで2着に3馬身差をつけてレコード勝ちをおさめたのです。
姉と同じ白毛ということもあり、早くもアイドル的な人気を得ることになりました。残念ながら雨が降り肌寒さを感じるあいにくの天気でしたが、パドックの周りは熱心なファンがいて、動画や写真を撮っている姿が多くみられました。

マルガ

2番人気(3.9倍)はソールオリエンスの半妹で父エピファネイアのフィロステファニ。
中内田厩舎で川田騎手というおなじみのコンビですが、新潟芝1600mの新馬戦はキング騎手鞍上で32.6という究極の上りでクビ差の1着。勝ちタイムが平凡なこともあり、それ自体はそれほど大きなインパクトを残していなかったのですが、その後4,5着馬がすぐに勝ち上がり、かつ5着馬ガリレアはサウジアラビアRCで2着に好走。一躍新馬戦のレベルの高さが話題になり、フィロステファニの評価も上がったのです。

フィロステファニ

さらに3番人気(6.1倍)は新潟2歳S2着のタイセイボーグ、4番人気(8.7倍)は前走OPダリア賞(新潟芝1400m)を勝ったハッピーエンジェル、5番人気(9.7倍)は中山芝1600m未勝利を1.33.9の好タイムで勝ったルーチェフィオーレと続きました。

パドックで個人的に1番良く見えたのは、3番人気のタイセイボーグでした。落ち着いてトモの踏み込みもしっかりしており、雄大な馬体も好印象でした。
続いて良く見えたのが4番人気のハッピーエンジェル。適度な気合乗りでクビを使ってしっかり歩いており、トモも力強く見えました。
結果としてこの2頭は3,4着。狙いは悪くはなかったのですが。

対するマルガですが、馬体はしっかりしており、+14kgの484kgながら素軽い歩様で歩いていて、見た感じは悪くありません。ただしトモの踏み込みはやや甘い感じで、ちょっと集中できていない様子も気になりました。
そして個人的に期待していたフィロステファニですが、トモがフニャフニャとしてやや力強さに欠ける感じで、これで大丈夫だろうかとちょっと心配になりました。またややテンションも高めで、馬場入場後も少しかかり加減で走っていくシーンがあり、思い切って狙いを下げてしまいました。

レースは好スタートを切ったマルガが、白い馬体を躍動させて逃げます。ハッピーエンジェル、フィロステファニが続きますが、競りかけるわけではなく、マルガは楽な手応えで、そのペースは35.2。やや重を考えてもペースは速くなく、さすが武豊騎手という絶妙の逃げに見えました。
3コーナーからはマルガは後続を離し気味で、4コーナーは内をあけて縦一列というめずらしい隊列で回っていきます。
直線に入って残り300mぐらいでマルガが追い出しますが伸び一息。外からハッピーエンジェルとフィロステファニがマルガに並びかけてきます。それでも残り200mまでマルガは先頭を維持していましたが、徐々に手応えが悪くなると、代わって外からフィロステファニが一気に先頭に立って抜け出します。
そのままぐんぐんと加速すると、最後に伸びてきたミツカネベネラ(9番人気)に1 3/4馬身差をつけて、フィロステファニが見事に1着でゴール。
新馬戦からの連勝で、無敗での戴冠となりました。

先頭に立って抜け出したフィロステファニ

個人的にはパドックの様子で狙いを下げて大失敗だったのですが、逆に言うとあの感じでそこまで強い勝ち方をしたということで、今後の成長次第ではかなりの成績が期待できるのではないかと思います。そして、さすが中内田厩舎だと思いました。
中内田厩舎はこれまでG1を8勝していますが、そのうち6勝はマイルで、さらに4勝は2歳マイルG1であげたもの。つまり2歳マイル戦での強さは、折り紙つきだったのです。実際にアルテミスSはリアアメリア(2019年)に続く2勝目で、これは須貝厩舎、矢作厩舎とともに1位タイ。2歳マイル戦での的確な仕上げの腕は、高く評価されるべきだと改めて感じました。

対するマルガですが、期待が大きかった分、ある意味残念な負け方でした。決して無理なペースではなかったと思うのですが、須貝師いわく飛びが大きい馬なので馬場が合わなかったとのことなので、次に良馬場で巻き返してくれることを期待したいと思います。

ここから阪神JFを狙うというローテーションが多いですが、今年はどうなるでしょう。もしフィロステファニが出走するのであれば、優勝争いではかなり有力になると思います。
個人的には、さらなる成長を期待したいところですが。

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